細胞性免疫誘導型リポソームワクチンの創製に関する研究

文献情報

文献番号
200912033A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞性免疫誘導型リポソームワクチンの創製に関する研究
課題番号
H21-ナノ・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
内田 哲也(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 喜田 宏(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 高田 礼人(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 梶野 喜一(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 赤塚 俊隆(埼玉医科大学 微生物学教室)
  • 松井 政則(埼玉医科大学 微生物学教室)
  • 石井 健(大阪大学 微生物病研究所)
  • 種市 麻衣子(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 垣内 史堂(東邦大学 医学部免疫学)
  • 横山 晶一(日油株式会社 DDS事業部DDS研究所)
  • 野崎 周英(化学及血清療法研究所 試作研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
35,382,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は我々がこれまでに開発した、細胞性免疫を誘導することの出来るリポソームワクチンを用いて、表面抗原を変異させて抗体による免疫応答から逃れるタイプのウイルスに対するワクチンを創製することを目的とする。
研究方法
(1)ペプチド-リポソーム結合条件の最適化、アジュバントの検索、インフルエンザウイルスタンパク質の抗原性・機能解析およびエピトープの探索等を行った。(2)C型肝炎ワクチンに用いるHCV由来CTLエピトープの改変、およびHCV感染によって誘導される免疫抑制を解除する方策につき検討を行った。(3)エボラウイルス由来CTLエピトープを検索してエボラワクチンの候補となりうるリポソーム結合ペプチドを作製し、各々につき抗原特異的CTLの誘導効果を検討した。(4)ヒト型CpGODNのKタイプおよびDタイプにつきラージスケールでの作製を試みた。 (5) 抗原提供細胞がリポソーム結合抗原を貪食・消化し、抗原エピトープをT細胞に呈示する過程について、種々の阻害剤を用いて解析を行った。
結果と考察
(1)抗原ペプチドのリポソームへの結合効率を最適化する量比が得られた。(2) HCV core領域由来のCTLエピトープの一部につきアミノ酸置換を行った結果、免疫増強効果および免疫寛容の成立した宿主におけるCTL誘導が確認された。(3)高効率に抗原特異的CD8陽性T細胞を誘導するCTLエピトープが得られ、エボラワクチンとしての可能性が期待された。(4) Kタイプのヒト型CpGODNにつき、安定してGMP準拠のロットが回収出来た。 (5)我々が開発したリポソーム結合抗原は通常とは異なる経路で抗原提供細胞の細胞質に送達され、消化を受けることを示唆する結果が得られた。
 高効率にペプチドをリポソーム表面に結合させることの出来る量比が求められた。きわめて微量の抗原によって顕著にCTLが誘導されることが確かめられ、リポソーム結合抗原の免疫効率の高さが示唆された。また、インフルエンザワクチンと同様のコンセプトによりエボラワクチンの創製が期待出来るワクチン候補物質が得られた。C型肝炎ワクチンに関し、治療型ワクチンへの応用が期待されるワクチン抗原、抗体結合リポソームの処方が得られた。

結論
CTL誘導型インフルエンザワクチンの実用化に向け、抗原(ペプチド)-リポソーム結合条件の検討、臨床応用可能なアジュバントの開発、インフルエンザワクチンの作用機序の解析等が行われた。同様のコンセプトによりエボラワクチンの候補物質が作製され、C型肝炎ワクチンについても、治療用としての応用可能性が期待されるワクチン処方が開発された。。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-