メラノジェネシス標的NPrCAP・ナノ微粒子による次世代型メラノーマ化学温熱免疫(CTI)治療法の開発

文献情報

文献番号
200912030A
報告書区分
総括
研究課題名
メラノジェネシス標的NPrCAP・ナノ微粒子による次世代型メラノーマ化学温熱免疫(CTI)治療法の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神保 孝一(札幌医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 本多 裕之(名古屋大学大学院工学研究科)
  • 伊藤 祥輔(藤田保健衛生大学医療科学部)
  • 若松 一雅(藤田保健衛生大学医療科学部)
  • 山下 利春(札幌医科大学医学部)
  • 井藤 彰(九州大学大学院工学研究院)
  • 小野 一郎(札幌医科大学医学部)
  • 田村 保明(札幌医科大学医学部)
  • 米田 明弘(札幌医科大学医学部)
  • 村瀬 勝俊(名糖産業株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
44,228,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人メラノーマは白人メラノーマと異なり早期から皮膚・血行転移を起こしやすく、これ等転移性癌を持った患者に対し現時点では全ての治療法が無効である。従来の治療概念に無い新しい戦略に基づく新規治療法の開発は急務である。
我々はメラノーマに特異な分化形質であるメラノジェネシスを分子標的とした新規メラノーマ治療法を開発する。
研究方法
メラノジェネシスを分子標的とした新規DDSとして我々が開発したNPrCAP(N-propionyl cysteaminylphenol)とデキストラン被覆マグネタイト・ナノ微粒子(DNM)結合体 (NPrCAP/PEG/DNM)とした新規薬剤開発に着手し、プロトタイプ薬剤の開発し、製剤の安定性・抗腫瘍効果の解明とCTI療法分子標的・免疫機構を解析する。抗腫瘍効果の機序として①腫瘍抗原の解析、②腫瘍浸潤リンパ球の解析、③肺転移等の深部メラノーマに対するNPrCAPの癌免疫賦活への有用性、④MHCクラスI発現と治療感受性の検討を行う。
結果と考察
我々は、医・工・化学連携によりナノ微粒子薬剤開発と磁場発生機器・治療施設の改良と化学・温熱・免疫「CTI(chemo-thermo-immuno)」療法の開発を行っている。腫瘍局所内投与に基づくCTI療法(第Ⅰ世代)を、学内倫理委員会の許可を受け、臨床試験(第I,II相)を開始した。現在まで4症例がエントリーされ、うち2例(ステージIII,IV)は反応し全身皮膚・リンパ節転移巣が完全・部分消失し日常生活に復帰出来た。
今年度より、従来の医・工・化学の連携に加え、産が研究分担者として加わり、次世代型メラノーマ療法を確立する為、必要な選択的腫瘍内拡散性と全身投与が可能な新規薬剤を開発し、本薬剤を用いた次世代型CTI療法の分子標的・免疫作用機序の解明し、臨床試験に向けたGMP製剤プロトタイプの開発に成功した。
結論
我々の研究はCTI療法がペプチド等の腫瘍特異抗原を外から投与するのではなく、化学・温熱療法を行い、患者自身の生体内に腫瘍特異抗原・ペプチドを産生させ、患者自身の有している樹状細胞により腫瘍特異的細胞傷害性T細胞 (CTL) の誘導を活性化させ、遠隔転移腫瘍の撲滅を図る。この方法は現在行われているペプチドを用いた免疫療法とは全く概念を異にしているものである。我々の予備的臨床試験は症例数が限定されているが本方法の有用性を実証している。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-