びまん性肺疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211025A
報告書区分
総括
研究課題名
びまん性肺疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1033
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
須田 隆文(国立大学法人浜松医科大学 医学部 内科学第二講座)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 弘文(札幌医科大学 医学部)
  • 今野 哲(北海道大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野)
  • 宮下 光令(東北大学 大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野)
  • 坂東 政司(自治医科大学 内科学講座 呼吸器内科学部門)
  • 岸 一馬(東邦大学 医学部)
  • 慶長 直人(公益財団法人 結核予防会 結核研究所 生体防御部)
  • 針谷 正祥(東京女子医科大学 医学部)
  • 宮崎 泰成(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小倉 高志(神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器内科)
  • 吾妻 安良太(日本医科大学 医学部)
  • 橋本 直純(藤田医科大学 医学部)
  • 近藤 康博(公立陶生病院呼吸器・アレルギー疾患内科)
  • 伊達 洋至(一般社団法人日本外科学会)
  • 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター, 臨床研究センター)
  • 寺崎 文生(大阪医科大学 内科学3 )
  • 服部 登(広島大学大学院 医歯薬保健学研究院)
  • 西岡 安彦(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 福岡 順也(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
16,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定難病である特発性間質性肺炎 (IIP),サルコイドーシス,肺胞蛋白症 (PAP),閉塞性細気管支炎 (BO) および類縁希少疾患(若年性・遺伝性間質性肺炎,肺胞微石症,肺骨化症など)を含むびまん性肺疾患 (ILD) を対象に,診断基準,重症度分類,診療ガイドラインの策定・改訂,全国レジストリを活用した多分野による診療体制の構築,関連学会や患者会と連携した普及・啓発活動の推進などを目的として調査研究を実施する.そしてその結果を,難病患者の実態把握、診断・治療の標準化,難病患者のQOL向上につなげることを目的とする.さらに,難病診療におけるCOVID-19パンデミックの影響についてビッグデータを用いて解析する.
研究方法
本研究では,①IIP分科会,②サルコイドーシス分科会,③難治性気道疾患分科会,④希少びまん性肺疾患分科会の4つの分科会に分けて研究を行った.さらに,レジストリ研究については,AMED研究,医師主導研究であるPROMISE研究と連携して実施した.COVID-19研究については, NDB(National Database)オープンデータ(厚労省)を利用して行った.
結果と考察
① IIP分科会:
• 「特発性肺線維症の治療ガイドライン 2023[第二版]」の改訂作業を終え,パブリックコメントを経て,出版した.
• IIPの診断基準と重症度分類の改訂案を策定し,厚労省に提出した.現在,厚労省(指定難病検討委員会)との審議を終え,承認を得た.
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を終えた(4,770例).
• NDBを用いて2013〜2019年のIIP(患者数約25万人)とIPF(患者数約6万人)を抽出し,有病率と発症率の経時的変化を明らかにし,両者とも大幅に上昇していることを明らかにした.
• びまん性肺疾患診断における病理診断の標準化,クライオ生検の診断指針の作成などに取り組んだ.さらに,びまん性肺疾患の病理診断を補助するAI診断システムの開発に成功した.
• 間質性肺炎合併肺癌患者の安全性と有効性の全国調査を行い,薬剤性肺障害の危険因子として,IPF診断,SP-D高値などを明らかにした.
• 全国から間質性肺炎の急性増悪症例1,264例を収集し,画像パターンや牽引性気管支拡張所見等が予後不良因子であることを示した.
• AMED研究班などと共同で,前向きレジストリPROMISE/IBiS研究を実施し,IIPs 1,154例(目標症例数1,000例)の登録を完了した.また,同時に登録症例の血清レポジトリも構築した.
• 上葉優位型肺線維症(PPFE)の全国レジストリを構築し,症例登録を行った(215例の登録済み).
• WEBを利用したリモート患者会を実施した(参加者351名).
• 間質性肺炎の終末期緩和医療の実態を明らかにするために,間質性肺疾患患者の遺族を対象として,「間質性肺炎患者の終末期における望ましい死の達成度(QODD)の全国遺族アンケート調査」を実施した.

② サルコイドーシス分科会:
• 臨床個人調査票を用いた疫学研究を実施した(患者数33,618人).
• サルコイドーシス友の会と連携して,会報にサルコイドーシスに関する情報を掲載し,啓蒙活動を行うとともに,患者会を開催した.
• 心臓サルコイドーシスの指定難病の診断基準の改訂案を作成し,厚労省に申請し,承認を得た.
• 心臓サルコイドーシスの全国レジストリ(JACS)とAMED研究MYSTICSに協力し,症例登録を開始した.

③ 難治性気道疾患分科会:
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を終えた(91例).
• 原発性線毛機能不全症(PCD)のPCDの効率的なスクリーニング法を開発し,51例の新規患者を見出した.
• PCDを新規指定難病として申請し,指定難病検討会で承認された.

④ 希少びまん性肺疾患分科会:
• PAPの診療ガイドラインの作成した.
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を実施し,論文化した.(患者数110人).
• 特発性肺骨化症の全国調査の結果をまとめ,論文化した.
結論
対象指定難病の中で,IIPとサルコイドーシスの診断基準,重症度分類の改訂をし,IIPとPAPに関してはガイドラインの改訂,作成を終えた.また,臨床個人調査票やNDBなどのビッグデータを用いた研究により,我が国の指定難病のアップデートされた疾患疫学を創出することができた.さらにレジストリ研究も,AMED研究や医師主導研究と連携して効率的に症例登録が進んでおり,今後の結果の解析が待たれる.加えて,COVID-19が指定難病の診療に与える影響もビッグデータで明らかにすることができ,今後の診療に大きな貢献が果たせると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2024-04-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211025B
報告書区分
総合
研究課題名
びまん性肺疾患に関する調査研究
課題番号
20FC1033
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
須田 隆文(国立大学法人浜松医科大学 医学部 内科学第二講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
指定難病である特発性間質性肺炎 (IIP),サルコイドーシス,肺胞蛋白症 (PAP),閉塞性細気管支炎 (BO) および類縁希少疾患(若年性・遺伝性間質性肺炎,肺胞微石症,肺骨化症など)を含むびまん性肺疾患 (ILD) を対象に,診断基準,重症度分類,診療ガイドラインの策定・改訂,全国レジストリを活用した多分野による診療体制の構築,関連学会や患者会と連携した普及・啓発活動の推進などを目的として調査研究を実施する.そしてその結果を,難病患者の実態把握、診断・治療の標準化,難病患者のQOL向上につなげることを目的とする.さらに,難病診療におけるCOVID-19パンデミックの影響についてビッグデータを用いて解析する.
研究方法
本研究では,①IIP分科会,②サルコイドーシス分科会,③難治性気道疾患分科会,④希少びまん性肺疾患分科会の4つの分科会に分けて研究を行った.さらに,レジストリ研究については,AMED研究,医師主導研究であるPROMISE研究と連携して実施した.COVID-19研究については, NDB(National Database)オープンデータ(厚労省)を利用して行った.
結果と考察
① IIP分科会:
•「特発性間質性肺炎 診療の手引き2022 」と「特発性肺線維症の治療ガイドライン 2023[第二版]」の改訂作業を終え,パブリックコメントを経て,出版した.
• IIPの診断基準と重症度分類の改訂案を策定し,指定難病検討委員会との審議を終え,承認を得た.
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を終えた.
• NDBを用いて2013〜2019年のIIP(患者数約25万人)とIPF(患者数約6万人)を抽出し,有病率と発症率が大幅に上昇していることを明らかにした.
• 間質性肺炎合併肺癌患者の安全性と有効性の全国調査を行い,薬剤性肺障害の危険因子として,IPF診断などを明らかにした.
• 全国から間質性肺炎の急性増悪症例1,264例を収集し,画像パターン等が予後不良因子であることを示した.
• AMED研究班などと共同で,前向きレジストリPROMISE/IBiS研究を実施し,IIPs 1,154例(目標症例数1,000例)の登録を完了した.また,同時に登録症例の血清レポジトリも構築した.
• 上葉優位型肺線維症(PPFE)の全国レジストリを構築し,症例登録を行った(215例の登録済み).
• WEBを利用したリモート患者会を実施した.
• 全国の呼吸器学会専門医を対象として,「間質性肺炎患者の緩和ケアに関するアンケート調査」ならびに「特発性肺線維症(IPF)患者の呼吸困難に対するケアと終末期意思決定に関するアンケート調査」を行ない,その結果を英文論文(2報)として発表した.さらに,間質性肺疾患患者の遺族を対象として,「間質性肺炎患者の終末期における望ましい死の達成度の全国遺族アンケート調査」を実施した.
• NDBを利用し,2020〜2021年のCOVID-19患者を抽出し,特発性間質性肺炎が死亡に関する独立した危険因子であること明らかにした.
• COVID感染ならびにそのワクチン接種がいずれも急性増悪の誘引となることを報告した.

② サルコイドーシス分科会:
• 臨床個人調査票を用いた疫学研究を実施した(患者数33,618人).
• サルコイドーシス友の会と連携して,啓蒙活動を行うとともに,患者会を開催した.
• 心臓サルコイドーシスの指定難病の診断基準の改訂案を作成し,承認を得た.
• 心臓サルコイドーシスの全国レジストリ(JACS)とAMED研究MYSTICSに協力し,症例登録を開始した.
• NDBを用いて,サルコイドーシス患者のCOVID感染症の実態を明らかにした.

③ 難治性気道疾患分科会:
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を終えた.
• 原発性線毛機能不全症(PCD)のPCDの効率的なスクリーニング法を開発し,51例の新規患者を見出し,新規遺伝子異常も発見した.
• PCDを新規指定難病として申請し,指定難病検討会で承認された.

④ 希少びまん性肺疾患分科会:
• PAPの診療ガイドラインの作成した.
• 臨床個人調査票を用いた疫学調査を実施し,論文化した.
結論
臨床個人調査票やNDBなどのビッグデータを用いた研究により,我が国の対象指定難病のアップデートされた疾患疫学を創出することができた.対象指定難病の中で,IIPとサルコイドーシスの診断基準,重症度分類の改訂をし,IIPとPAPに関してはガイドラインの改訂,作成を終えた.また,さらにレジストリ研究も,AMED研究や医師主導研究と連携して効率的に症例登録が進んでおり,今後の結果の解析が待たれる.加えて,COVID-19が指定難病の診療に与える影響もビッグデータで明らかにすることができ,今後の診療に大きな貢献が果たせると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211025C

成果

専門的・学術的観点からの成果
AMED研究班などと共同で,IBiS前向きレジストリを構築し,IIPs 1,154例の登録を完了した.また,同時に登録症例の血清レポジトリも構築し,この血清を網羅的プロテオミクスで解析した.この研究で診断に有用な新規バイオマーカ−候補蛋白を見出し,今後の実用化が期待されている.また,線毛機能不全症候群の効率的な診断法を確立し,鼻腔一酸化窒素濃度測定、線毛構造の電子顕微鏡観察、遺伝子解析を組み合わせたスクリーニング法を開発し,その有用性を明らかにした.これらは今後の実臨床での実装を目指している.
臨床的観点からの成果
間質性肺疾患終末期の緩和医療の実態を明らかにするため,全国の呼吸器学会専門医を対象とした間質性肺炎患者の緩和ケアに関するアンケート調査,呼吸困難に対するケアと終末期意思決定に関するアンケート調査,間質性肺疾患患者の遺族を対象として,終末期における望ましい死の達成度の全国遺族アンケート調査を実施した.その結果,我が国における間質性肺疾患終末期の緩和医療が十分提供されていない実態が明らかとなり,今後,この緩和医療の保険収載を目指して介入試験等を予定している.
ガイドライン等の開発
関連学会と共同で,「特発性間質性肺炎 診療の手引き2022 」,「特発性肺線維症の治療ガイドライン 2023[第二版]」,「肺胞蛋白症診療ガイドライン 2022」を作成し,出版した.
その他行政的観点からの成果
現在の指定難病の特発性間質性肺炎の診断基準が,アップデートされた国際的な分類と整合性が乏しいことなどから,日本呼吸器学会の承認を得て,新たなIIP診断基準を策定し,改訂案として厚労省に申請し,指定難病検討委員会の承認を得た.さらに,QOLや予後とより相関する新重症度分類を作成し,指定難病検討委員会で承認された.また,組織診断なしで心臓限局性サルコイドーシスが診断できる診断基準の改訂案を作成し,指定難病検討委員会に承認された.
その他のインパクト
特発性間質性肺炎およびサルコイドーシスの患者・家族を対象として,WEBによる患者会・勉強会を開催し,多くの参加者があった.WEB開催はインターネット等の使い方に慣れていない高齢者の参加にはハードルとなる可能性があるが,在宅酸素療法中などの来場が困難な全国の患者が家族と一緒に参加できるなどの大きなメリットが確認でき,これからの患者会の一つの方向性と考えられた.また,サルコイドーシス友の会と連携して,会報(3 回/年)に毎回,サルコイドーシスに関する情報を掲載し,啓蒙活動を行なった.

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
22件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
4件
ガイドライン作成3件
その他成果(普及・啓発活動)
3件
講演3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishioka Y, Toyoda Y, Egashira R, et al
Nationwide retrospective observational study of idiopathic dendriform pulmonary ossification: clinical features with a progressive phenotype
BMJ Open Respir Res , 9 (1) , e001337-e001337  (2022)
0.1136/bmjresp-2022-001337
原著論文2
Miyashita K, Hozumi H, Inoue Y, et al
Nationwide survey of adult patients with pulmonary alveolar proteinosis using the National Database of designated intractable diseases of Japan
Respir Investig , 61 (3) , 364-370  (2023)
10.1016/j.resinv.2023.02.011
原著論文3
Fujisawa T, Akiyama N, Morita T, et al
Palliative care for interstitial lung disease: A nationwide survey of pulmonary specialists
Respirology  (2023)
10.1111/resp.14493
原著論文4
Akiyama N, Fujisawa T, Morita T, et al
End-of-life care for idiopathic pulmonary fibrosis patients with acute exacerbation
Respir Res , 23 (1) , 294-  (2022)
10.1186/s12931-022-02204-5

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202211025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
21,600,000円
(2)補助金確定額
21,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,857,743円
人件費・謝金 2,282,241円
旅費 1,178,172円
その他 5,297,877円
間接経費 4,984,000円
合計 21,600,033円

備考

備考
自己資金33円

公開日・更新日

公開日
2024-01-18
更新日
-