種々のγ線放出核を用いた早期疾患診断プローブ開発とコンプトンカメラによる複数核種同時イメージング

文献情報

文献番号
200912018A
報告書区分
総括
研究課題名
種々のγ線放出核を用いた早期疾患診断プローブ開発とコンプトンカメラによる複数核種同時イメージング
課題番号
H19-ナノ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 秀一(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 洋祐(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター 細胞機能イメージング研究チーム)
  • 高橋 忠幸(独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)
  • 本村 信治(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究ユニット)
  • 金山 洋介(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究ユニット)
  • 羽場 宏光(独立行政法人理化学研究所 仁科加速器研究センター 森田超重元素研究室)
  • 北村 陽二(金沢大学学際科学実験センター)
  • 御舩 正樹(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 三戸 美生(株式会社アクロラド 営業部)
  • 鈴木 孝宏(キャンベラジャパン株式会社 技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
45,098,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、複数分子同時イメージング装置(GREI)用新核医学核種合成と新プローブ創薬を行い、このプローブを用いた生体分子動態の非侵襲的可視化を行う。
研究方法
・新核医学核種探索と新プローブ創薬1)核種製造技術確立とGREI用新核医学核種探索2)新プローブ探索と合成3)新プローブによるGREI撮像 4)GREIの臨床実用化のための基礎医学研究とPETなどのモダリティとの比較
・装置開発と検証1)GREIによる複数分子同時イメージング実現と改良2)Si/CdTe素子によるGREI開発とイメージングの実現、改良
結果と考察
・新核医学核種探索と新プローブ創薬1)DOTA-オクトレオチドとの反応で、Zn-65の標識化の条件を確立。Mn-54およびFe-59は、高比放射能、高純度化が必要であることが判明。2)プローブ候補因子探索のバイオインフォマティクス手法を提案。膵臓でのSr輸送に関わる遺伝子発現と糖尿病状態との関連を示唆。3)Zn-65、Mn-54およびSr-85の同時GREI撮像成功。肥満・糖尿病モデルマウス膵臓周辺および心臓周辺においてのみ変化するSr代謝イメージングを撮像、新発見。4)分子発現様式の異なる4つの腫瘍細胞株を同時に移植したマウスに、プローブ化した各抗体を投与して撮像を行った結果、各分子の発現様式を捉えた画像取得に成功。複数分子腫瘍イメージングの実現に期待。
・装置開発と検証1)Si(Li)検出器をGREI素子として検討。低エネルギーガンマ線イメージングの実現化へ。アレイ型GREI(複数検出器実装GREI)の有効性を実証。撮像視野の拡大と高精度3次元断層撮像実現へ。2)検出器最適化ソフトウェア開発。サブミリレベルの空間分解能の実現化へ。
結論
GREI用ガンマ線放出核種の標識化条件の検討、分子発現様式の異なる腫瘍を識別したイメージング分子プローブの開発など、複数分子同時イメージング実現に向けた新規プローブ開発が加速度的に進捗。新しい候補因子探索法として、バイオインフォマティクスを利用した手法を提案、膵臓でのSr輸送に関わる遺伝子発現と糖尿病状態との関連が示唆。また、GREIによる広視野・高精度3次元断層撮像の実現化が視野に。

公開日・更新日

公開日
2011-11-04
更新日
-

文献情報

文献番号
200912018B
報告書区分
総合
研究課題名
種々のγ線放出核を用いた早期疾患診断プローブ開発とコンプトンカメラによる複数核種同時イメージング
課題番号
H19-ナノ・一般-018
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
榎本 秀一(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 洋祐(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター 細胞機能イメージング研究チーム)
  • 高橋 忠幸(独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部)
  • 本村 信治(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究ユニット)
  • 金山 洋介(独立行政法人理化学研究所 神戸研究所 分子イメージング科学研究センター メタロミクスイメージング研究ユニット)
  • 羽場 宏光(独立行政法人理化学研究所 仁科加速器研究センター 森田超重元素研究室)
  • 北村 陽二(金沢大学学際科学実験センター)
  • 御舩 正樹(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 三戸 美生(株式会社アクロラド 営業部)
  • 鈴木 孝宏(キャンベラジャパン株式会社 技術部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、複数分子同時イメージング装置(GREI)用新核医学核種合成と新プローブ創薬を行い、このプローブを用いた生体分子動態の非侵襲的可視化を行う。
研究方法
・新核医学核種探索と新プローブの創薬1)核種製造技術確立と多核種同時イメージング用新核医学核種探索2)新プローブ探索と合成(糖尿病バイオマーカー探索とプローブ化)3)新プローブによるGREIの撮像4)実用化のための基礎医学研究と他モダリティとの比較
・装置開発と検証1)GREIによる複数分子同時イメージング実現と改良2)GREI素子にSi/CdTeを利用した複数分子同時イメージング実現と改良
結果と考察
・新核医学核種探索と新プローブ創薬1)理研大型加速器(仁科加速器研究センター)と小型サイクロトロン(分子イメージング科学研究センター)による有用新規核医学核種製造システムを構築。2)新規統計学手法によるバイオマーカー探索を確立、糖尿病診断候補遺伝子を同定。腎集積を低減した膵β細胞標的プローブを合成に成功。がんと炎症特異的集積プローブを合成、異なる放射性核種で標識した化合物を投与、リアルタイム代謝イメージングに成功。3)新プローブによる、がん細胞移植マウスを用いたGREIによる腫瘍イメージングに成功。4)新規分子プローブを用いたPETとGREIのイメージングの比較が実現。
・装置開発と検証1)GREIによる小動物撮像での問題を抽出・分析、NEDO事業研究開発で問題を解決。最適撮像条件を確立。GREIの素子にSi/Geを利用、アレイ型GREI、Si/CdTe素子GREIによる撮像性能の向上に成功。
結論
新核医学核種製造法の樹立と効率的製法確立。新プローブ合成、供給を実現。新プローブ創薬は、ペプチドや抗体のプローブ化、糖尿病やがん複数分子イメージングを実現化。バイオマーカー探索における新規統計学手法を構築、糖尿病診断候補遺伝子を同定。新プローブにより、PET、GREIの正確な比較を実現、これにより、プローブ探索、装置開発の効率化を実現。臨床用GREI開発のための改良実施、撮像条件を確立。GREIの素子にSi/Ge、Si/CdTeを利用、撮像性能向上に成功。アレイ型Ge(複数検出器)を実現。臨床用実用機が視野に。今後、臨床へのトランスレーショナル研究を推進予定。

公開日・更新日

公開日
2011-11-04
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912018C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、新規核医学核種製造システムと標識化条件を確立し、新プローブ合成を達成した。ペプチドや抗体分子の新プローブ創薬を行い、腎集積を低減した膵β細胞標的プローブや、がんと炎症特異的集積プローブ診断薬の合成に成功した。また、バイオマーカー探索における新規統計学手法を構築、糖尿病診断候補遺伝子を同定した。さらに、臨床実用化のための複数分子同時イメージング装置の撮像条件を確立し、複数分子同時イメージングの基盤技術確立を達成した。
臨床的観点からの成果
本研究により、複数分子同時イメージングによる新規画像診断(コメント 診断は臨床である)への実現の目処がついた。近年、糖尿病はがんを発症する一要因として位置づけられ、これら生活習慣病の予防ががん発症の予防に資する。複数分子同時イメージングは、単一疾患のみならず、その早期診断と同時並行に他の複合疾患発症過程も診断することが可能で、臨床現場での利用価値は高いものになると予測される。今後の臨床機開発により、複合疾病診断システム構築が現実的な視野に入る。
ガイドライン等の開発
複数分子同時イメージングは、異なる新核医学核種で標識した複数の分子プローブを同時投与するため、従来の核医学診断と異なる。このため、複数分子同時イメージングに適したガイドラインを整備する必要がある。複数分子同時イメージング装置臨床機完成に合わせたガイドライン整備が必須となる。本研究による複数核種の同時投与による患者被ばく量や散乱による作業者被ばくなどの詳細なシミュレーションの成果が、今後に検討に有益となるであろう。
その他行政的観点からの成果
本研究により、複数分子同時イメージングの有用性・革新性の実証されたが、この事により、臨床診断学、基礎医学および生命科学の応用研究が活性化され、複数因子の分子病態発生機序解明や複数因子同時解析診断法の開発、新規薬剤開発、マイクロドーズ臨床試験の効率化が飛躍的に進展し、がん・糖尿病などの超早期診断実現にも寄与するであろう。また当該装置による再生・移植医療の成功率の定量的評価、モニタリングなどが効率的かつ正確に行うことが可能になり、これらによって、医療費の削減や国民のQOLが向上することが期待される。
その他のインパクト
半導体コンプトンカメラを用いた核医学画像診断技術による複数分子同時イメージングの提案は我々の独創的技術であり、国内外においても他に例のないオンリーワンの研究成果として注目されている。この成果は数多くの報道メディアで取り上げられ、様々な国内外の学会における招待講演数、民間企業の講演依頼も増加の一途をたどり、この中には一般市民や高校生、大学生を対象にした市民講演会も多い。このことは、研究者以外の国民にも本研究への関心が高まっていることを意味し、一層の情報発信と研究進捗の必要性を痛感している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
41件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
157件
学会発表(国際学会等)
63件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
1.コンプトン撮像カメラ、特許4486623 2. 半導体放射線計測装置、特願2008-278727 3.ガンマ線検出装置、PCT/JP2007/65593(PCT出願)他
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
4件
シンポジウム「最先端計測技術のトレンド2009」開催、平成21年度岡山大学公開講座、岡山大&理研ジョイントセミナー開催、日本薬学会130年会・高校生シンポジウム

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
本村信治, 榎本秀一
複数分子同時イメージングの医療応用実現に向けて:医療用コンプトンカメラの開発最前線
メディカルバイオ , 6 , 47-52  (2009)
原著論文2
金山洋介, 本村信治, 榎本秀一
半導体コンプトンカメラによる複数分子同時イメージング法の開発
ぶんせき , 9 , 496-502  (2009)
原著論文3
Motomura.S, Fukuchi.T, Kanayama.Y, et al.
Three-dimensional tomographic imaging by semiconductor Compton camera GREI for multiple molecular simultaneous imaging
2009 IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record , 3330-3332  (2009)
原著論文4
Yamato, M., Kataoka, Y., Mizuma, et al.
Positron emission tomography and macro- and micro-autoradiographic studies combined with immunohistochemistry on rat intestinal ulceration and healing processes
J. Nucl. Med. , 50 , 1-8  (2009)
原著論文5
Cui, Y., Takashima, T., Takashima-Hirano, M., et al.
[11C]PK11195 PET for the in vivo evaluation of neuroinflammation in the rat brain after cortical spreading depression
J. Nucl. Med. , 50 , 1904-1911  (2009)
原著論文6
S. Watanabe, S. Ishikawa, H. Aono, et al.
High energy resolution hard X-ray and gamma-ray imagers using CdTe diode devices
IEEE Transactions on Nuclear Science , 56 (3) , 777-782  (2009)
原著論文7
Haba H, Akiyama K, Tsukada K,
Chloride Complexation of Zr and Hf in HCl Investigated by Extended X-ray Absorption Fine Structure Spectroscopy: Toward Characterization of Chloride Complexation of Element 104, Rutherfordium (Rf)
Bulletin of the Chemical Society of Japan , 82 (6) , 698-703  (2009)
原著論文8
S. Watanabe, R. Sato, T. Takahashi, et al.
SUZAKU OBSERVATIONS OF EXTREME MEV BLAZAR SWIFT J0746.3+2548
The Astrophysical Journal , 694 , 294-301  (2009)
原著論文9
S. Motomura, Y. Kanayama, H. Haba, et al.
Development of multi-elemental molecular imaging on semiconductor Compton telescope as a tool for metallomics research
Pure and Applied Chemistry , 80 , 2657-2666  (2008)
原著論文10
S. Motomura, Y. Kanayama, H. Haba, Y. et al.
Multiple molecular simultaneous imaging in a live mouse using semiconductor Compton camera
J. Anal. Atom. Spectrom. , 23 , 1089-1092  (2008)
原著論文11
榎本 秀一, 羽場 宏光
マルチトレーサーの開発と利用
Isotope News , 8 , 9-15  (2008)
原著論文12
榎本 秀一
複数分子の同時イメージングを実現した世界初の診断装置を開発
メディカルバイオ , 11 , 14-15  (2008)
原著論文13
Cui, Y., Kataoka, Y., Inui, T.,
Upregulated neuronal COX-2 expression after cortical spreading depression is involved in non-REM sleep induction in rats
J. Neurosci. Res. , 86 (4) , 929-936  (2008)
原著論文14
H. Haba, H. Kikunaga, D. Kaji, et al.
Performance of the Gas-jet Transport System Coupled to the RIKEN Gas-filled Recoil Ion Separator GARIS for the 238U(22Ne,5n)255No Reaction
Journal of Nuclear and Radiochemical Sciences , 9 (1) , 27-31  (2008)
原著論文15
渡辺恭良、鈴木正昭、尾上浩隆 他
分子イメージング研究による創薬・疾患診断の革新
最新医学 , 63 (1) , 116-138  (2008)
原著論文16
渡辺恭良、鈴木正昭、尾上浩隆 他
分子イメージング研究による創薬・疾患診断の革新
日本医師会雑誌 , 136 (12) , 2469-2474  (2008)
原著論文17
Motomura S, Enomoto S, Haba H, et al.
Gamma-ray Compton imaging of multitracer in biological samples using strip germanium telescope
IEEE Trans. Nucl. Sci. , 54 (3) , 710-717  (2007)
原著論文18
Watanabe S., Takeda S., Ishikawa S., et al.
New CdTe pixel gamma-ray detector with Development of semiconductor imaging detectors for a Si/CdTe Compton camera
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, Section A , 579 , 871-877  (2007)
原著論文19
H. Haba, D. Kaji, H. Kikunaga, et al.
Development of Gas-jet Transport System Coupled to the RIKEN Gas-filled Recoil Ion Separator GARIS for Superheavy Element Chemistry
J. Nucl. Radiochem. Sci. , 8 (2) , 55-58  (2007)
原著論文20
玉城充、三戸美生、首藤 靖浩、他
CdTeを用いたX線画像検出器モジュールの開発
日本放射線技術会 画像通信 , 30 (2) , 34-39  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-