胎児手術の技術的限界を克服しうる子宮内手術システムの開発:超高精度3D/4D超音波誘導下での超高感度胎児内視鏡手術

文献情報

文献番号
200912016A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児手術の技術的限界を克服しうる子宮内手術システムの開発:超高精度3D/4D超音波誘導下での超高感度胎児内視鏡手術
課題番号
H19-ナノ・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(国立成育医療センター 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 河合 輝男(NHKエンジニアリングサービス・先端開発研究部)
  • 小林 祐二(浜松ホトニクス株式会社・電子管事業部第5製造部)
  • 望月 剛(アロカ株式会社・研究所)
  • 土肥 健純(東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
胎児期の治療は,近年特に欧米で大きな展開をみせている.胎児の診断技術はわが国でも,画像診断法の発展により大きく進歩しているものの,これを有効な胎児治療に結びつけるためには,今後とも新しい手技・機器の開発が必須である.そこで,本研究の目的は,より安全,効率的な母体・胎児への低侵襲手術システム・機器を開発することにある.
研究方法
1)胎児内視鏡へのHARP方式超高感度・高精細撮像素子の導入, 2)子宮内胎児観察,胎児手術誘導のための超高精度3D/4D超音波診断装置,および, 3)超高精度3D/4D超音波撮像データの3次元画像立体表示システムを開発する.
結果と考察
1) LEDを使った小型照明装置開発し,「熱の無い照明」であることが改めて確認できた.また, 本内視鏡の実用化にはカメラのカラー化が必須であるため,モノクロカメラ1台による赤,緑,青の時分割方式のカラー化につき検討を行った.この方式による実用化についてはいまだ課題は残るものの,内視鏡への適用が十分可能であることが確認された.

2) 単位時間当たりの超音波ビーム形成本数を,市販の装置の倍にすることにより,高分解能の,または高フレームレートの画像を得る装置を開発した.これは2方向に異なる周波数の超音波を送信し,各方向からのエコー信号にて左右各4本の超音波ビームを同時に形成する“2方向同時送信,8方向同時受信方式”の装置である.さらに,この方式を実装した大規模IC(FPGA)の開発を実施し,市販の超音波診断装置内に組み入れることにより,世界で初めての超音波診断装置の試作に成功した.

3) 本システムとUSBケーブルで接続した超高精度3D/4D超音波診断装置2)から,ワークステーションに3D超音波データを取得しつつ,超高解像度の大画面液晶ディスプレイ上にIntegral Videography(IV)立体画像を表示することが可能となった.最も解像度の高いモードでは,超音波診断装置での表示と同じ最大3fpsの更新速度を達成しえた.また,子宮内胎児のファントムおよび妊娠20週前後の胎児の臨床データ表示では,児の高精細立体表示も可能であった.
結論
本プロジェクトの最終年度である本年度は,各要素技術の開発とその検証が完了した.今後は,実用化に向けてのさらなるシステム統合,及び有用性評価と臨床への導入を進める.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912016B
報告書区分
総合
研究課題名
胎児手術の技術的限界を克服しうる子宮内手術システムの開発:超高精度3D/4D超音波誘導下での超高感度胎児内視鏡手術
課題番号
H19-ナノ・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
千葉 敏雄(国立成育医療センター 臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 河合 輝男(NHKエンジニアリングサービス・先端開発研究部)
  • 小林 祐二(浜松ホトニクス株式会社・電子管事業部第5製造部)
  • 望月 剛(アロカ株式会社・研究所)
  • 土肥 健純(東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,認識が広まりつつある胎児治療の成績向上のため,より安全,効率的な母体・胎児への低侵襲手術システム・機器を開発することにある.
研究方法
1)胎児内視鏡へのHARP方式超高感度・高精細撮像素子の導入, 2)子宮内胎児観察,胎児手術誘導のための超高精度3D/4D超音波診断装置,および, 3)超高精度3D/4D超音波撮像データの3次元画像立体表示システムを開発する.
結果と考察
1)厚さ13mmのFEA-HARPの試作を完了し,目標性能を満たしていることを確認した.カメラは内視鏡に接続する部分の小型化に取り組み直径10cm長さ10cmの円筒形カメラヘッドを試作した.また,内視鏡の細径化に加え照明の小型化,フィールドシーケンシャル方式によるモノクロカメラによるカラー画像取得の原理検証実験にも成功し早期実用化への期待を高めることができた.

2)単位時間当たりの超音波ビーム形成本数を市販の装置より2倍にすることにより,高分解能,高フレームレートの画像を得る手法を考案した.これは2方向に異なる周波数の超音波を送信し,各方向からのエコー信号から,各4本の超音波ビームを同時に形成する"2方向同時送信,8方向同時受信方式"である.さらにこの方式を実装した大規模ICの開発を実施し,市販の超音波診断装置内に実装することで現行装置の超音波ビーム密度を維持しながら2倍のフレームレートで3次元画像を実時間で表示する超音波診断装置を試作した.

3)本システムとUSBケーブルで接続した超高精度3D/4D超音波診断装置から,ワークステーションに3D超音波データを取得しつつ,超高解像度の大画面液晶ディスプレイ上にIntegral Videography(IV)立体画像を表示することが可能となった.最も解像度の高いモードでは,超音波診断装置での表示と同じ最大3fpsの更新速度を達成しえた.また,子宮内胎児のファントムおよび妊娠20週前後の胎児の臨床データ表示では,胎児の高精細立体表示も可能であった.
結論
本研究では各要素技術の開発とその検証が完了し,さらに当初目標を超えた成果が得られた.本成果は治療対象としたTTTSのみならず,そのほかの胎児疾患,さらには他の広範な外科分野にも十分応用可能であり,今後の医療機器産業の振興に大きく貢献するためにも,継続的な発展を加えていく.

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胎児の生理的子宮内環境を乱すことなく,低侵襲性の治療を行うことが可能となり,母体・胎児の治療成績,予後の改善が期待される.また,治療可能な胎児疾患の適応拡大(胎児心臓,胎児腫瘍(胸部・腹部),胎児脊髄髄膜瘤(二分脊椎症)に対する内視鏡手術など)による胎児治療全体の飛躍的な進展,さらには,胎児に限ることなく広範な疾患領域での低侵襲手術が一層可能となる.
臨床的観点からの成果
今回提案する“胎児手術における超高精度3D/4D超音波誘導下の超高感度胎児内視鏡手術システム”の開発計画の実現により,現在の胎児治療が抱える様々な課題を克服可能と期待される.本研究がもたらす医療的な効果は,妊娠母体・胎児への安全,効率的な手術が可能となり,胎児の生命予後・QOLの改善に繋がることと言える.
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
本研究の実現により,全体的な手術成績と予後の改善に繋がり,医療経費の削減も大いに期待される(医療経済的効果).また,胎児時期での治療という観点から,妊娠母体の選択肢増加となり,少子化対策上の効果も期待される(厚生行政上の効果).さらに,産業経済上の効果として,国内医療機器産業の振興も考えられる.
その他のインパクト
本研究プロジェクトの成果は,新聞,テレビ等のマスコミで取り上げられた.
2008年7月13日,NHK「三つのたまご」でHARP内視鏡の紹介,
2009年9月3日,日経産業新聞,内視鏡,特殊光源不要に,
2010年3月1日,日本経済新聞,3D映像使い胎児・がん治療,
2010年5月22日,サイエンスzeroでFEA-HARP内視鏡の紹介.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-