超早期がんの低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療用微細内視鏡機器装置及びその医療技術の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200912013A
報告書区分
総括
研究課題名
超早期がんの低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療用微細内視鏡機器装置及びその医療技術の開発に関する研究
課題番号
H19-ナノ・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小林 寿光(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 執印 太郎(高知大学 医学部)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 分子細胞生物学研究部)
  • 佐野 浩(HOYA株式会社 PENTAXライフケア事業部)
  • 玉川 克紀(株式会社玉川製作所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
31,877,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超早期で微小ながんの確定診断に経皮的針穿刺生検を行えば希とはいえ重篤な合併症の可能性があり、標準的な手術では過剰侵襲の可能性もある。血管等の管腔を介した診断・治療は低侵襲であるが、現状では操作性に限界がある。そこでこれらの病変を低侵襲で効果的、正確で安全に診断・治療する、微細内視鏡機器装置及びその医療技術を開発する。
研究方法
 昨年度に確認された主な問題点は、微細内視鏡の画像ファイバーの折損と画素不足であったが、これまで容易に施行できる内視鏡検査がなかった尿管-腎盂系の検査として、臨床的意義は高いと考えられた。画像ファイバーの折損は、磁気誘導のための先端磁性体キャップに起因して発生する。尿管鏡とすれば外径0.8mm以下の必然性はなく、またカテーテルで誘導すれば磁気誘導は必要ない。そこで早期臨床導入用に、磁気誘導機構を省き外径を1.54mmとした新規尿管鏡を開発する。磁気誘導には、磁気誘導ガイドワイア及びカテーテルを作製し、これに挿入する微細内視鏡を開発して画質と耐久性の向上を図る。また、これらに関連する機器装置及び技術を開発する。
結果と考察
 新たな尿管鏡は、画像ファイバー本数及び被覆を3倍として、また観察範囲も拡大し、既存の内視鏡構造も取り入れ耐久性を向上した。基礎実験で、昨年度の微細内視鏡より対象の輪郭が明瞭で、画像ファイバーの折損も少ないことを確認した。動物実験ではカテーテルへの挿抜や単独で尿管への挿抜が容易であった。画像は微細内視鏡より明瞭で、良好な視野も確認された。また臨床的にあり得ない操作でも破断など示さず、画像ファイバーの折損はあったが内腔は確認できた。この結果から臨床試験計画を作成し、倫理審査委員会の承認を得て臨床試験を開始した。これまでに十分期待できる結果を得ており、今後も研究を継続する予定である。
 微細内視鏡の外径は0.8mmを保持し、画像及び照明用ファイバー本数を2.3倍とし、観察範囲の拡大も行い製作した。基礎実験で、対象が明瞭でファイバーの折損も少ないことが確認された。動物実験での磁気誘導カテーテルやガイドワイアによる誘導も、新たに開発された機器装置と併せ良好であった。今後も他の要素技術開発と併せ研究を継続する予定である。
結論
 微細内視鏡開発は、尿管-腎盂領域の新たな臨床的内視鏡検査に繋がり、磁気誘導も要素技術となる開発がされた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912013B
報告書区分
総合
研究課題名
超早期がんの低侵襲で効果的、正確で安全な診断・治療用微細内視鏡機器装置及びその医療技術の開発に関する研究
課題番号
H19-ナノ・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小林 寿光(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター検診研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 執印 太郎(高知大学 医学部)
  • 馬目 佳信(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 分子細胞生物学研究部)
  • 佐野 浩(HOYA株式会社 PENTAXライフケア事業部)
  • 玉川 克紀(株式会社玉川製作所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 超早期で微小ながんの確定診断に経皮的針生検を行えば希に重篤な合併症が発生し、標準的な手術では過剰侵襲の可能性もある。血管等の管腔を介した診断・治療は低侵襲であるが、現状では操作性に限界がある。そこでこれらの病変を低侵襲で効果的、正確で安全に診断・治療する、微細内視鏡機器装置及びその医療技術を開発する。
研究方法
 微細化のためには、内視鏡先端の屈曲機構を省略して超伝導電磁石による磁気誘導を導入し、X線透視装置との磁気干渉には磁気遮蔽装置を開発する。基礎実験から開始して、誘導の意義が大きい尿管-腎盂系を対象として動物実験系を構築し、臨床応用を考慮した開発を行う。
結果と考察
 微細内視鏡は先端の磁気誘導キャップ径を0.8mmとして開発し、X線透視用超伝導磁気誘導装置と磁気遮蔽装置を開発した。基礎実験に続き動物実験では、3次元腫瘍塊を腎盂内に固定し、尿管から腎盂までX線透視下に微細内視鏡を誘導した。磁気遮蔽装置の効果は認められたが、急峻な屈曲に必要な高磁界領域では限界があった。また微細内視鏡によって尿管内や3次元腫瘍塊の観察が可能であった。この結果から、誘導用磁力、磁気遮蔽装置の性能、内視鏡画質などを向上した機器装置を開発した。基礎的な検証に続く動物実験では、画像ファイバー数の限界から来る画質と、微細内視鏡の磁気誘導キャップの装着に基づく画像ファイバーの折損が問題であった。しかしこれまで容易に施行できる内視鏡検査のなかった尿管-腎盂系では、高い臨床的意義があると考えられた。そこで早期臨床導入を目的とした外径1.54mmの新たな尿管鏡を、カテーテルでの誘導を前提に磁気誘導を省き、既存の内視鏡構造も導入することで画質と耐久性を向上して作製した。基礎実験及び動物実験において、高い画質と耐久性、及び臨床的意義が確認された。そこで臨床試験計画を作成し、倫理審査委員会の承認の下に臨床試験を開始したが、これまでに良好な結果を得ている。磁気誘導微細内視鏡に関しては画質と耐久性の向上を目的に、磁気誘導ガイドワイアと磁気誘導カテーテルの併用を前提として開発した。基礎実験や動物実験等において検証を行い、適切な結果が確認された。今後もこの成果を基に、研究を継続していく予定である。
結論
 微細内視鏡開発は尿管-腎盂領域の新たな臨床的内視鏡検査に繋がり、磁気誘導も医療用要素技術として開発された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
磁気は対象に非接触で確実な動力を与えることができ、重力やクーロン力等に比較すれば誘導力として医療に導入し易い技術と考えられる。これを単なるカテーテルの誘導補助ではなく微細内視鏡の誘導とすることで、これまで難しかった細い管腔などでの新たな診断・治療技術の開発にも繋がりうると考えられる。臨床の現場に配慮してX線透視装置の使用を前提に磁気遮蔽装置を開発し、また小型超伝導電磁石装置のシステムも簡易化し、医療における新たな誘導要素技術の開発として意義が高いと考えられる。
臨床的観点からの成果
これまで容易に施行できる内視鏡検査がなかった尿管-腎盂における、臨床的意義の大きな内視鏡検査の開発と考えられる。現在臨床試験を行っているが、侵襲が殆ど無く検査が施行可能であるために、将来は外来で局所麻酔下に行うなど、尿管鏡検査の標準検査化も期待される。微細化のためにファイバースコープとしているが、対象とする領域が狭いので画質は十分と考えられ、内視鏡システムも簡易である。この点でも、新たな内視鏡検査として標準化が大きく期待されると考えられる。
ガイドライン等の開発
医療における磁気の直接的な利用はMRIの例があり、安全管理などのガイドラインを含め広く経験されている。しかし磁気誘導に関しては経験が殆ど無く、従ってどのような基準で機器装置を製作し、安全に使用したらよいかに関しては不明瞭である。この点で、臨床使用上の安全に配慮した磁気誘導装置の構造の開発や、漏れ磁場対策、実際の実験での使用を行い開発を行ってきた今回の開発成果は、磁気誘導が臨床の現場に導入される場合のガイドラインの参考となり得ると考えられる。
その他行政的観点からの成果
膀胱癌などの移行上皮癌は、最近、高齢化とともに増加している疾患であり、多発し、再発や播種するが、腎盂尿管にその原因となる原発病変があることがある。このような領域で癌が発生した場合には、たとえ早期であっても進展を恐れ、広範な領域の切除となってしまい、このことは病気腎の移植などの問題にも関与している。このような背景においても尿管-腎盂を含めて十分な診断を行うことで、切除範囲を縮小し、再発を容易な検査で早期発見できる可能性があるなど、臨床的また社会的にも意義のある開発であると考えられる。
その他のインパクト
内視鏡を使用することで、体内の深部の臓器の表面が体表と同様の状態となり、これまでできなかったような領域で蛍光診断なども可能となる。光を使用した場合には組織の透過性が問題となるが、分岐によって深部に入り込むことで波長の短い光も利用可能となる。また、直接その局所に行う治療技術への発展も期待される。ところでヘリウムを使用しない小型超伝導電磁石の開発は、環境及び資源に配慮していると共に、ヘリウムが戦略物質であるため意義があると考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akiyama N,Ohno Y, Manome Y,et al.
Enhancing activity of N-glycosylation for constitutive proteins secretions in non-polarized cells.
Biochem Biophys Res Commun. , 381 , 612-618  (2009)
原著論文2
Kouki Fujioka,Masaki Hiruoka,Yoshinobu Manome,et al.
Luminescent passive-oxidized silicon quantum dots as biological staining labels and their cytotoxicity effects at high concentration.
Nanotechnology ,  (19) , 1-7  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-