ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発

文献情報

文献番号
200912011A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
南野 哲男(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 知浩(静岡県立大学 薬学研究科)
  • 目加田 英輔(大阪大学 微生物研究所)
  • 黒田 俊一(大阪大学 産業研究所)
  • 北風 政史(国立循環器病センター(研究所))
  • 浅沼 博司(近畿大学 救急診療科)
  • 高島 成二(大阪大学 医学(系)研究科)
  • 朝野 仁裕(大阪大学 医学(系)研究科)
  • 堀 正二(大阪府立成人病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、1)心臓保護薬剤アデノシンや致死的不整脈に対する薬剤アミオダロンのリポソーム化による障害心筋への選択的集積増強、心臓保護作用増強・副作用軽減効果を見出し、2) バイオナノカプセル(BNC)を用いた心筋梗塞部位を標的とした新しいデリバリーシステム(DDS)の開発、3)HB-EGFを標的とした婦人科系がん・心不全に対するDDSの開発をおこなった。 
研究方法
麻酔下ラット心筋梗塞モデルを用いて、蛍光標識リポソームやRI標識リポソームを用いた検討をおこない、虚血再灌流部位への特異的集積を確認した。同時、血行動態・心筋梗塞サイズ・致死的不整脈の評価をおこなった。さらに、HB-EGFの病的心臓での発現・心筋細胞内への取り込み評価をおこなった。
結果と考察
リポソーム化により、アデノシンの血圧低下や脈拍数低下が軽減され、心筋梗塞サイズ縮小効果や致死的不整脈軽減作用が増強されることをラットならびに大型動物(イヌ)にて確認した。また、慢性期心臓リモデリング抑制効果ならびに長期生存率改善効果も認めた。さらに、致死的不整脈に対する薬剤アミオダロンのリポソーム化にも成功し、ラット心筋虚血・再灌流時モデルにおいて、再灌流時リポソーム化アンカロン投与より、心室頻拍・心室細動発症を抑制した。
 さらに、本研究にて、膜結合型HB-EGFが婦人科系がんのみならず不全心・梗塞後心臓にてその発現が増加していることを見出した。そこで、私たちが開発した抗HB-EGF抗体を用いて、抗HB-EGF抗体修飾リポソーム(抗HB-EGF抗体結合リポソーム)を作成し、HB-EGFを発現する細胞に特異的に、効率よく目的物質を導入することができることを見出した。さらに、従来は心筋細胞への物質の導入が困難であったが、HB-EGFを高発現させた心筋細胞では、抗HB-EGF抗体修飾リポソームによる効率の良い細胞内取り込みが生じることを見出した。ヒト乳がん細胞移植マウスでは、ドキソルビシン封入HB-EGF結合リポソームはその腫瘍体積を縮小させた。
結論
以上より、リポソームを用いた心筋梗塞治療法の開発が期待でき、企業内でのFeasibility試験の実施予定である。また、HB-EGF結合リポソームが心不全や婦人科系がんなどのHB-EGF高発現疾患に対する革新的な薬物送達技術になりうることが期待できる(国際特許出願済)。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912011B
報告書区分
総合
研究課題名
ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
南野 哲男(大阪大学大学院 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井 知浩(静岡県立大学 薬学研究科)
  • 目加田 英輔(大阪大学 微生物研究所)
  • 黒田 俊一(大阪大学 産業研究所)
  • 北風 政史(国立循環器病センター)
  • 浅沼 博司(近畿大学 救急診療科)
  • 高島 成二(大阪大学 医学(系)研究科(研究院))
  • 朝野 仁裕(大阪大学 医学(系)研究科(研究院))
  • 堀 正二(大阪府立成人病センター)
  • 朝倉 正紀(国立循環器病センター)
  • 蜂須 麗(北海道システムサイエンス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、1)心臓保護薬剤アデノシンや抗不整脈薬アミオダロンのリポソーム化による障害心筋への選択的集積増強、心臓保護作用増強(心筋梗塞サイズ縮小・致死的不整脈減少)ならびに副作用軽減効果(血圧低下など)、2) バイオナノカプセル(BNC)を用いた心筋梗塞部位を標的とした新しいデリバリーシステム(DDS)の開発、3)HB-EGFを標的とした心不全・梗塞後心不全・婦人科系がんに対する新規DDSの開発をおこなった。
研究方法
ラット・イヌ心筋梗塞モデルを用いて、蛍光標識リポソームやRI標識リポソームを用いた検討をおこない、虚血再灌流部位への特異的集積を確認した。同時、血行動態・心筋梗塞サイズ・致死的不整脈の評価をおこなった。さらに、HB-EGFの病的心臓での発現・心筋細胞内への取り込み評価をおこなった。
結果と考察
最初に、電子顕微鏡にて心筋梗塞部位を詳細に検討した結果、血管内皮構造の破綻を認め、がん組織と同様に、ナノサイズリポソームの同部位への集積が期待された。さらに、リポソーム化により、アデノシンの血圧低下や脈拍数低下が軽減され、心筋梗塞サイズ縮小効果や致死的不整脈軽減作用が増強されることをラットならびに大型動物(イヌ)にて確認した。また、慢性期心臓リモデリング抑制効果ならびに長期生存率改善効果も認めた。現在、共同研究企業にて、Feasibility試験を行なう準備を行なっている。致死的不整脈に対する薬剤アミオダロンのリポソーム化にも成功し、ラット心筋虚血・再灌流時モデルにおいて、再灌流時リポソーム化アンカロン投与より、心室頻拍・心室細動発症を抑制した。
 さらに、膜結合型HB-EGFが不全心・梗塞後心臓にて発現が増加していることを見出した。そこで、抗HB-EGF抗体修飾リポソームを用いると、HB-EGFを発現する心筋細胞に特異的に、効率よく目的物質を導入することができることを見出した。HB-EGF高発現ベロ細胞では、siRNAを封入したHB-EGF結合リポソームにより標的遺伝子がノックダウンされた。ヒト乳がん細胞移植マウスでは、ドキソルビシン封入HB-EGF結合リポソームはその腫瘍体積を縮小させた。
結論
リポソームを用いることにより心筋梗塞急性期における心筋障害を抑制することが可能であることを示し、画期的新薬の創出に貢献することが示された。また、HB-EGF結合リポソームがHB-EGF高発現疾患に対する革新的な薬物送達技術になることが期待できる(国際特許出願済)。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、心臓保護薬剤アデノシンや抗不整脈薬アミオダロンのリポソーム化による障害心筋への選択的集積増強、心臓保護作用増強(心筋梗塞サイズ縮小・致死的不整脈減少)ならびに副作用軽減効果(血圧低下軽減作用など)を示した。また、ヘパリン結合性EGF様増殖因子を標的とした心不全・梗塞後心不全・婦人科系がんに対する新規DDSの開発をおこなった。本研究は、心筋梗塞がリポソーム治療のよい適用になりうることをしめした。さらに、心不全に対する薬物送達システムの開発の可能性を示し、画期的な成果を示した。
臨床的観点からの成果
アデノシンは虚血再灌流障害に対して心筋保護作用を有することが知られているが、血管拡張作用・徐脈作用のため、臨床応用が進んでいない。本研究では、アデノシンのリポソーム化による心筋保護作用増強ならびに副作用軽減を示し、企業内feasibility試験を準備中である。また、HB-EGF結合リポソームは通常のドキソルビシン封入リポソームより強い腫瘍抑制効果を認めた。以上のことから、いずれのリポソーム製剤も前臨床試験の準備中である。
ガイドライン等の開発
本研究は基礎研究であるため、ガイドラインの開発への貢献は認められない。
その他行政的観点からの成果
本研究は基礎研究であるため、行政的な観点への貢献は認められない。
その他のインパクト
日本経済新聞(2008年4月4日)で<心筋梗塞の新薬剤>として、<ナノサイズリポソームを用いた急性心筋梗塞治療法の開発>に関する報道がなされた。基礎実験の成果ではあるが、一般市民に理解しやすく紹介され、大きな反響をよんだ。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takahama H, Minamino T, Asanuma H, et al.
Prolonged targeting of ischemic/reperfused myocardium by liposomal adenosine augments cardioprotection in rats.
J Am Coll Cardiol , 53 (8) , 709-717  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2015-06-16