性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究

文献情報

文献番号
202210003A
報告書区分
総括
研究課題名
性差にもとづく更年期障害の解明と両立支援開発の研究
課題番号
22FB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
安井 敏之(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀江 重郎(順天堂大学大学院 医学研究科 泌尿器外科学)
  • 岩佐 武(徳島大学 大学院医歯薬学研究部)
  • 藤野 善久(産業医科大学 医学部)
  • 井手 久満(獨協医科大学 医学部)
  • 甲賀 かをり(東京大学医学部附属病院)
  • 熊野 宏昭(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 立石 清一郎(産業医科大学 産業生態科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 女性の健康の包括的支援政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
女性は周閉経期になると急激な性ホルモンの変動が見られ、ほてりやのぼせ、寝汗、不安感、易疲労感などを始めとする様々な更年期症状を生じる。男性も中高年になると性ホルモンが減少し、女性の更年期症状ににたLOH(late onset hypogonadism)症候群がみられる。更年期症状は働く男女にとって就労に影響し、仕事の継続が困難になるケースも存在し、QOLを損なう可能性がある。したがって、職場において更年期症状についての啓蒙活動を行うとともに、労働環境の改善に向けた検討が必要であるが、日本において更年期症状と就労との関係について調査された研究は少ない。本研究では、性ホルモンの変化に伴う男女の更年期症状に関して、国内外のエビデンスを収集・整理するとともに、日本における症状と就労との関係を調査し、有症状者が病院やクリニックを受診する経緯についても調査する。これらの関係や経緯は男女によって異なる可能性があり、性差に着目した両立支援を目指す。
研究方法
①更年期症状と就労の関係について文献レビュー
更年期症状、職業、プレゼンティーズム、アブセンティーズムなどをキーワードとして国内外の論文を検索し、文献レビューを行った。
② 外来受診患者に対するペーシャントジャーニー調査
レビューの結果をもとに、有症状者が外来受診に至った経緯及び満足度、及び有症状者が外来受診をせずどのように経緯を取っているかについて質問紙の調査項目を考える。倫理審査委員会提出する書類の作成を準備する。
③ 就労者疫学調査
40〜59歳の4,000人の就労女性を対象とした疫学調査によって、更年期症状とプレゼンティーズムとの間の関係を明らかにした。
④ レセプトによる外来受診率調査
レセプトによって、男女の更年期症状についての外来受診率調査を行い、更年期症状を訴えて受診した患者の割合を算出した。
結果と考察
①更年期症状と就労の関係について文献レビュー
女性においては、仕事によるストレスと更年期症状が関係するといった報告が多いが、逆に有職者では軽い報告もみられた。日本では、看護師に焦点をおいた研究から管理職と非管理職とではストレスレベルが異なり、更年期症状の強さも異なることが報告されている。また、職場の過ごしやすさやサポートといった良好な職場環境は更年期症状を軽減するといった結果も報告されている。男性においても仕事と更年期症状との関連が報告されている。男女とも更年期症状を我慢することが多く、どのように対応したらいいのかがわからないといった割合が多くみられる。これらの結果の多くは海外の研究によるものが多く、日本における報告は少ない。また、これらの研究は横断研究によるものであり、前向き研究でないため両者の因果関係は明らかではない。更年期症状には、生活環境や性格など様々な因子がその発症に関係していることから、就労の要因だけにするには研究の難しさがある。
② 外来受診患者に対するペーシャントジャーニー調査
文献レビューの結果をもとに、有症状者が外来受診に至った経緯や満足度、有症状者が外来を受診していない状況についての質問紙調査の項目について作成中である。倫理審査委員会に提出するための書類を準備中である。
③ 就労者疫学調査
40〜59歳の4,000人の就労女性を対象とした検討から、単変量解析では更年期症状についてプレゼンティーズムとの間に関連がみられ、症状の程度が強い女性ほどプレゼンティーズムが多くみられた。多変量解析では精神神経症状の程度が強いほどプレゼンティーズムとの間に有意な関連がみられ、精神神経症状を調整モデルに投入すると、ほてりやのぼせなどの身体症状や性機能症状との間には有意な関連が見られなくなった。プレゼンティーズムについて、ほてりやのぼせなどの身体症状や性機能症状との関連よりも精神神経症状との関連が強かったことは海外における結果と異なる。本邦では海外の女性に比較してほてりやのぼせなどの割合が少なく、その程度も弱いことが影響しているかもしれない。
④ レセプトによる外来受診率調査
14団体の2020年度から2021年度までのレセプトデータから、更年期障害の受診者割合は、女性では50〜54歳(6.6%)、男性では55〜59歳(0.13%)でもっとも高かった。新規受診率は、女性50〜54歳、男性55〜59歳でもっとも高かった。男性更年期症状、女性更年期症状を有する男女の病院受診率は想像以上に低く、症状があっても受診に結びついていない。なお、レセプトの要因を詳細に検討する必要がある。
結論
日本における仕事と更年期症状の関係についての研究を推進する必要がある。更年期症状を有する男女の病院受診率が低いことについては、受診にいたる過程についての調査によって明らかにすることができるかもしれない。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202210003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,000,000円
(2)補助金確定額
7,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,038,402円
人件費・謝金 0円
旅費 768,000円
その他 2,578,598円
間接経費 1,615,000円
合計 7,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-10-05
更新日
-