神経変性タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化のイメージングに基く効率的な医薬品評価系の開発

文献情報

文献番号
200912001A
報告書区分
総括
研究課題名
神経変性タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化のイメージングに基く効率的な医薬品評価系の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
諸根 信弘(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 健治(北海道大学 電子科学 研究所)
  • 和田 圭司(国立精神・神経セン ター 神経研究所)
  • 中村 俊(東京農工大学 共生科学技術研究院)
  • 内野 茂夫(国立精神・神経セン ター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
36,054,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患(プリオン病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、アルツハイマー病)の病態極初期にみられる「病因タンパク質のプロトフィブリル化の生成・解離の仕組み」について、昨年度までに構築してきた超微細画像技術(ナノテクノロジー)に加えて、新たに導入した画像処理計算技術を基盤とする複合的な可視化技術により解明することを、最終年度の研究目的とした。
研究方法
以下の方法論に基づく研究開発を実施した。
・画像処理プログラムによるタンパク質の細胞内局所構造解析法
・タウパチーにおける細胞レベルでのオリゴマー可視化法
・神経変性疾患病因関連蛋白質の細胞内構造・機能解析法
・神経回路網構築時のシナプスの構造活性相関解析法
・光照射による生体機能操作法
結果と考察
研究計画3年目の平成21年度は、これまでの研究アプローチによる成果を発展させ、「効率的な医薬品評価系」に密接に連携させるために、新しい画像解析アルゴリズム(拡張型数理形態学)に基づく画像処理理論を開発した。これにより、神経変性疾患の病態評価や医薬品評価において、これまでにないハイスループット化が将来的に期待できる。実際、画像の類似度に基づくクラスタリング法や、タンパク質の結晶構造情報を用いる解析法から構成される「テンプレートマッチング法」について、細胞内環境のタンパク質1分子レベルで高い精度で適用できることを世界に先駆けて示すことに成功した。

さらに、神経変性疾患等々の詳しい病態解明に繋がる、新しい可視化検出技術の開発にも成功した。
・新しい蛍光偏光分光法及びホモフレット法によるタウタンパク質のオリゴマー検出
・表面プラズモン共鳴法によるポリグルタミンタンパク質の凝集阻害スクリーニング系の樹立
・パーキンソン病原因遺伝子UCHL1の酵素活性に影響を及ぼしうる化合物のスクリーニング
・自閉症責任遺伝子をコードするシナプス機能分子Shank3の脳組織神経回路網内解析
・単量体KillerRedタンパク質の波長変異体開発
・高性能FRETプローブの作製法の確立
・化学発光を原理とする機能プローブの開発
結論
以上のように、私たちの最終研究目標である医薬品評価系の創出に繋がる、神経変性疾患等に関わる病因タンパク質の動態解析、可視化顕微鏡技術及び画像処理計算アルゴリズムの開発を遂行することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200912001B
報告書区分
総合
研究課題名
神経変性タンパク質の細胞局所場に於ける動態・フィブリル化のイメージングに基く効率的な医薬品評価系の開発
課題番号
H19-ナノ・一般-001
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
諸根 信弘(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)
研究分担者(所属機関)
  • 永井 健治(北海道大学 電子科学 研究所)
  • 和田 圭司(国立精神・神経セン ター 神経研究所)
  • 中村 俊(東京農工大学 共生科学技術研究院)
  • 内野 茂夫(国立精神・神経セン ター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(ナノメディシン研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経変性疾患(プリオン病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、アルツハイマー病)の病態極初期にみられる「病因タンパク質のプロトフィブリル化の生成・解離の仕組み」を、超微細画像技術(ナノテクノロジー)を基盤とする複合的な可視化解析技術により解明することを本研究課題の目的とした。平成19?21年度に、以下の研究アプローチ等々を通して、効率的な医薬品評価系の開発を実施した。
研究方法
主に以下の方法に対して、研究開発を実施した。
・画像処理プログラムによるタンパク質の細胞内局所構造解析法
・タウパチーにおける細胞レベルでのオリゴマー可視化法
・神経変性疾患病因関連蛋白質の細胞内構造・機能解析法
・神経回路網構築時のシナプスの構造活性相関解析法
・光照射による生体機能操作法
結果と考察
主な研究成果をまとめると、パーキンソン病(UCHL1)、ポリグルタミン病(ポリグルタミンタンパク質)、アルツハイマー病(タウタンパク質)の病因タンパク質の新規動態解析や凝集阻害・酵素活性阻害のスクリーニング系の樹立に加えて、フィブリル化タンパク質の細胞内3次元構造解析法、フォトニック結晶を組込んだ蛍光偏光解消顕微鏡法や光活性化・光変換タンパク質を用いた細胞内分子拡散定量法などの蛍光イメージング法を開発した。その発展系として、新しい画像解析アルゴリズム(拡張型数理形態学)に基づく画像処理理論を導入して、プロトフィブリル化した病因タンパク質の構造や細胞内局在を高分解能かつ定量的に計測するシステムを構築した。
結論
以上のように、私たちの超微細画像技術基盤と連携できる統合的な解析システムの開発により、神経変性疾患の病態評価や医薬品評価において、これまでにないハイスループット化が将来的に期待できる。実際、画像の類似度に基づくクラスタリング法や、タンパク質の結晶構造情報を用いる解析法から構成される「テンプレートマッチング法」について、細胞内環境のタンパク質1分子レベルで高い精度で適用できることを世界に先駆けて示すことに成功した。併せて、この画像処理技術と連携できる、神経変性疾患等に関わる病因タンパク質の動態解析及び可視化顕微鏡の技術開発を遂行した。今後、神経変性疾患の治療や創薬への橋渡し的な技術基盤を提供してゆきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200912001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病)の病因タンパク質のプロトフィブリル化を可視化構造解析できる基盤技術を開発した。研究成果の一部は、Nature Method等々の雑誌に掲載され、国内外から大きな反響を頂いた。
臨床的観点からの成果
本研究で開発された基盤技術(タンパク質動態解析法、阻害剤スクリーニング法、3次元組織細胞構造解析法、顕微画像処理法、蛍光偏光解消顕微鏡法及び光不活化法等々)により、神経変性疾患の治療や創薬に繋がる効率的な医薬品評価システムが提供されることが、今後期待できる。
ガイドライン等の開発
関係する特記事項はありません。
その他行政的観点からの成果
関係する特記事項はありません。
その他のインパクト
神経変性疾患病因タンパク質のプロトフィブリル化を高時空間分解能で機能構造解析できる本開発課題は、わが国当該領域でこれまでにない研究戦略として発展している。

発表件数

原著論文(和文)
17件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
109件
学会発表(国際学会等)
46件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Namba T. et al.
PEDF up-regulation induced by memantine, an NMDA receptor antagonist, is involved in the increased proliferation hippocampal progenitor cells
Neuroscience , 167 (2) , 372-383  (2010)
原著論文2
Kotera I. et al.
Reversible dimerization of Aequorea victoria fluorescent proteins increases the dynamic range of FRET-based indicators
ACS Chem Biol , 5 , 215-222  (2010)
原著論文3
Saito K. et al.
Auto-luminescent genetically-encoded ratiometric indicator for real-time Ca2+ imaging at the single cell level
PLoS One , 5 , 9935-9935  (2010)
原著論文4
Tomosugi W. et al.
An ultramarine fluorescent protein with increased photostability and pH insensitivity
Nature Methods , 6 , 351-353  (2009)
原著論文5
Yasuda T. et al.
Effects of UCH-L1 on alpha-synuclein over-expression mouse model of Parkinson's disease
J Neurochem , 108 , 932-944  (2009)
原著論文6
Goto, A. et al.
Proteomic and histochemical analysis of proteins involved in the dying-back-type of axonal degeneration in the gracile axonal dystrophy (gad) mouse
Neurochem. Int , 54 , 330-338  (2009)
原著論文7
Kabuta, T. et al.
Familial amyotrophic lateral sclerosis-linked mutant SOD1 aberrantly interacts with tubulin
Biochem Biophys Res Commun , 387 , 121-126  (2009)
原著論文8
Kumanogoh H. et al.
Balanced expression of various TrkB receptor isoforms from the Ntrk2 gene locus in the mouse nervous system
Mol Cell Neurosci , 39 , 465-477  (2008)
原著論文9
Matsuda T, Miyawaki A, Nagai T.
Direct measurement of protein dynamics inside cells using a rationally designed photoconvertible protein
Nature Methods , 5 , 339-345  (2008)
原著論文10
Kabuta T. et al.
Aberrant molecular properties shared by familial Parkinson's disease-aasociated mutant UCH-L1 and carbonyl-modified UCH-L1
Hum Mol Genet , 17 , 1482-1496  (2008)
原著論文11
Saito K. et al.
A mercury arc lamp-based multi-color confocal real time imaging system for cellular structure and function
Cell Struct Funct , 33 , 133-141  (2008)
原著論文12
Kotera I, Nagai T.
A high-throughput and single-tube recombination of crude PCR products using a DNA polymerase inhibitor and type IIS restriction enzyme
J. Biotechnol , 137 , 1-7  (2008)
原著論文13
Moritake S. et al.
Functionalized nano-magnetic particles for an in vivo delivery system
J Nanosci Nanotechnol , 7 (3) , 937-944  (2007)
原著論文14
Ohashi H. et al.
Alpha 1-adrenoceptor agonists protect against stress-induced death of neural progenitor cells
Eur J Pharmacol , 573 , 20-28  (2007)
原著論文15
Tanabe K. et al.
Melanocortin receptor 4 is induced in nerve-injured motor and sensory neurons of mouse
J Neurochem , 101 , 1145-1152  (2007)
原著論文16
Hirayama, K. et al.
Identification of novel chemical inhibitors for ubiquitin C-terminal hydrolase-L3 by virtual screening
Bioorgan. Med. Chem , 15 , 6810-6818  (2007)
原著論文17
Setsuie R. et al.
Dopaminergic neuronal loss in transgenic mice expressing the Parkinson’s disease-associated UCH-L1 I93M mutant
Neurochem Int , 50 , 119-129  (2007)
原著論文18
Yao I. et al.
SCRAPPER-dependent ubiquitination of active zone protein RIM1 regulates synaptic vesicle release
Cell , 130 (5) , 943-957  (2007)
原著論文19
Nakata H, Nakamura S.
Brain-Derived Neurotrophic Factor regulates AMPA Receptor Trafficking to Postsynaptic Densities via IP3R and TRPC Calcium Signaling
FEBS Lett , 581 , 2047-2054  (2007)
原著論文20
Ohira K. et al.
Truncated TrkB-T1 regulates the morphology of neocortical layer I astrocytes in adult rat brain slices
Eur J. Neurosci , 25 , 406-416  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-