循環器病に対する複合リハビリテーションを含むリハビリテーションの現状と課題の明確化のための研究

文献情報

文献番号
202209050A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器病に対する複合リハビリテーションを含むリハビリテーションの現状と課題の明確化のための研究
課題番号
22FA1021
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤本 茂(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
研究分担者(所属機関)
  • 牧田 茂(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 角田 亘(国際医療福祉大学 医学部)
  • 安 隆則(琉球大学大学院医学研究科)
  • 福本 義弘(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 高橋 哲也(順天堂大学 保健医療学部)
  • 古川 裕(地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科)
  • 大山 直紀(川崎医科大学 脳卒中医学教室)
  • 平野 照之(杏林大学 医学部)
  • 竹川 英宏(獨協医科大学 医学部)
  • 阿志賀 大和(国際医療福祉大学 成田保健医療学部言語聴覚学科)
  • 和田 邦泰(熊本市民病院 脳神経内科)
  • 小幡 裕明(新潟大学 循環器内科)
  • 原 毅(国際医療福祉大学 保健医療学部)
  • 五味 幸寛(国際医療福祉大学 成田保健医療学部作業療法学科)
  • 宮脇 郁子(神戸大学大学院保健学研究科 看護学領域)
  • 益子 貴史(自治医科大学 医学部内科学講座神経内科学部門)
  • 横山 美帆(順天堂大学 医学部循環器内科)
  • 梅木 陽子(福岡女子大学 国際文理学部)
  • 井澤 英夫(藤田医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし

研究報告書(概要版)

研究目的
脳卒中および心臓病の患者は様々な合併症を有することも少なくなく,それらがリハビリテーションの実施の阻害因子になることもありうる.しかしながら,合併症の正確な頻度やリハビリテーションに及ぼす影響,複合リハビリテーションの実施率や有効性について悉皆性のあるデータはない.本研究班の目的は,脳卒中および心臓病に対する複合リハビリテーションの今後取り組むべき課題を明らかにし,解決策を提案することである.
研究方法
1. 脳卒中,心臓病でリハビリテーションの対象となる患者が,嚥下機能障害や廃用症候群など,複数の合併症を有する頻度に関する研究
試験デザイン:多施設横断前向き観察研究
対象患者:急性期病院に新しく入院した心臓病患者と脳卒中患者,それぞれ500例.
研究内容:嚥下障害,認知機能障害などの高次脳機能障害,呼吸器疾患・腎疾患,廃用症候群などの合併率を前向きに調査する.
2.複数の合併症を有する患者に対する,複合リハビリテーションの実施率の調査
試験デザイン:アンケート調査
対象:日本脳卒中学会認定一次脳卒中センター,日本心臓リハビリテーション学会に所属している会員の医療機関で心臓リハビリテーション施設基準を取得している施設.
研究内容:年間の脳卒中および心臓病患者の症例数,それぞれのリハビリテーション項目の実施の可否および年間の実数,リハビリテーションが十分にできない場合のその要因 ,回復期リハビリテーション病院への転院を妨げる因子,転院先の回復期リハビリテーション施設の問題点,について調査する.
3.複合リハビリテーションの有効性の検証
3-1:後ろ向き観察研究
対象患者:新潟南病院に過去3年間に入院した心臓病患者600例.
研究内容:各合併症の有無を確認し,入院時と退院時の身体機能,ADLレベル,QOLレベル,などを比較して複合リハビリテーションの効果を検証する.
3-2:多施設横断前向き観察研究
対象患者:複合リハビリテーションを施行される心臓病,脳卒中患者それぞれ100例.
研究内容:回復期リハビリテーション病院の入院時と退院時の時点での身体機能,ADLレベルを評価することで,複合リハビリテーションの効果と安全性を検証する.
結果と考察
研究1
合併症として頻度が多かったのが,心臓病では筋・骨関節疾患(84.9%),生活習慣病(78.9%),低栄養(アルブミン<3.5)(62.8%),慢性腎臓病 (60.8%)であった.
脳卒中では生活習慣病 (85%),高次脳機能障害(49%),慢性腎臓病(44%),心臓疾患(35%),嚥下障害(35%),心房細動(25%)であった.
実際に算定していない複合疾患リハビリテーションの適応は,心臓病では運動器,廃用症候群,呼吸器,がん,脳卒中では廃用症候群,心疾患,摂食嚥下療法が多かった.
研究2
 心臓病では,心臓病・大動脈・末梢動脈疾患専従や専任看護師,脳卒中病棟専従や専任看護師がほぼいないこと,言語聴覚士が少ないこと,がん患者リハビリテーションと認知症患者リハビリテーションに対応ができていないこと,外来リハビリテーション体制が整っていないこと,が示された.
脳卒中では,脳卒中リハビリテーション認定看護師など,脳卒中,心疾患の資格を有する看護師がほぼいないこと,言語聴覚士が少ないこと,がん患者リハビリテーションと認知症患者リハビリテーションに対応ができていないこと,外来リハビリテーション体制が整っていないこと,が示された.また両者ともに,様々な疾患管理が可能な施設が少ないことが妨げになっていることも推察された.
研究3
 複合リハビリテーションの現状を後ろ向きに調査した結果,91%が心大血管疾患以外の身体リハビリ適用疾患を有し,54%が摂食嚥下リハビリを要した.生存退院や退院時のADL自立度には摂食嚥下リハビリの要否が大きく関わることが分かった.さらに,これらの患者のADL改善には,長い入院期間とリハビリ実施が必要となり,回復期機能を持つ病床の積極的な活用が効果的であることが示唆された.

考察
 心臓病と脳卒中いずれも,生活習慣病,慢性腎臓病の合併が多く,心臓病では低栄養,脳卒中では高次機能障害や嚥下障害の合併が少なくなかった.一方でいずれも急性期のリハビリテーションにおいて,がん患者リハビリテーションと認知症患者リハビリテーションに十分に対応ができておらず,複合的な併存疾患がリハビリテーションの妨げになっていることがわかった.複合的リハビリテーションの必要性が高く,回復期リハビリテーションにおいて時間をかけて複合リハビリテーションに取り組むことが,患者のADL改善に必要であることが示唆された.
結論
複合リハビリテーションの必要性,課題,有効性が示された.前向き研究の登録症例数を増やし,最終解析を行うとともに,複合リハビリテーションに関する提言をまとめる.

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209050Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,585,000円
差引額 [(1)-(2)]
415,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,175,926円
人件費・謝金 0円
旅費 1,205,970円
その他 357,345円
間接経費 1,846,000円
合計 7,585,241円

備考

備考
会議や学会がWEB参加となり,旅費の支出が一部減少したため.

公開日・更新日

公開日
2023-09-19
更新日
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