健康診査・保健指導における効果的な実施に資する研究

文献情報

文献番号
202209035A
報告書区分
総括
研究課題名
健康診査・保健指導における効果的な実施に資する研究
課題番号
22FA1006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 克之(国立大学法人滋賀医科大学 社会医学講座公衆衛生学部門)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 荒木田 美香子(川崎市立看護短期大学 看護学部)
  • 由田 克士(大阪公立大学大学院 生活科学研究科 食・健康科学講座)
  • 古井 祐司(東京大学 未来ビジョン研究センター)
  • 寳澤 篤(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
  • 山岸 良匡(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
  • 神田 秀幸(岡山大学 学術研究院医歯薬学域)
  • 平田 あや(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特定健診・特定保健指導制度は、糖尿病合併症や脳・心血管疾患等の予防を通じて医療費の適正化を目指している。2021年12月に厚生労働省に第4期特定健診・特定保健指導の見直しに関する検討会(以下、厚労省検討会)が設置され、2024年度からの見直しに向けた議論が行われた。本研究班は、この厚労省検討会に資する科学的なエビデンスを提供する目的で進められた。さらに都道府県や保険者での計画策定の円滑化、さらなる将来に向けたより良い健診制度の構築のためにはコホート研究やその既存データ等を活用した深掘り検証も必須である。
研究方法
本研究は先行研究である厚生労働科学研究「健康診査・保健指導における健診項目等の必要性、妥当性の検証、及び地域における健診実施体制の検討のための研究の研究成果を引き継いで実施されており、様々な分野の専門家で構成されている。個々の健診項目の評価については、文献的な考察にとどまらず実際の地域・職域集団で検証が可能であり、従来の健診項目との比較や上乗せ効果も評価する。また本研究で提案された健診・保健指導の制度の施策実行性や費用対効果の判断、さらに長期的な視点での提言を行う。
結果と考察
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の2018年度特定 健診情報を用いて、日本高血圧学会と日本動脈硬化学会の最新のガイドラインの血圧と脂質(中性脂肪)の判定基準値を用いて、保健指導判定値を変更した場合の保健指導対象者の増減率を推計した。その結果、血圧のみの判定値変更後:1.02%の増加、脂質のみの判定値変更後:0.16%の減少、血圧と脂質の判定値変更後:0.89%の増加となることを示した。また受診勧奨域の基準別の治療状況も提示でき、糖尿病の服薬率が高く、脂質異常症の服薬率が低いこと、肥満者の方が非肥満者よりも服薬率が高いことを示した。個別研究として、①慢性腎臓病(CKD)に対する人口寄与危険割合は糖尿病よりも高血圧の方が高いこと、②特定健診の法定項目のみで算出できる脂肪肝指数(fatty liver index, FLI)が高値の場合、血糖値異常の有無にかかわらず、男女ともに高血圧の新規発症リスクが高いこと、③既存のリスクスコアが冠動脈石灰化と関連すること、④特定保健指導非実施群と比較して、実施群ではQALY(quality-adjusted life year)の増加と費用削減効果が示されること、⑤高血圧に伴う臓器障害は、高血圧単独と比べて脳卒中死亡をさらに上昇させること、⑥肥満・非肥満に関わらず尿Na/K比が血圧値、高血圧有病率の上昇と関連すること、⑦国保新規加入者に対して、加入手続きの際に健診の案内の「あり」の市町村は、「なし」に比べて健診実施率が5ポイント以上高く、健診会場までの移動手段を提供している場合には、提供していない市町村に比べて、集団健診実施率が高いこと、⑧自動測定・データ転送環境下において、室温、外気温および室温と外気温の差は、朝・晩の家庭血圧と負の関連を示すこと、⑨保健指導にデジタル機器を使うことで、効果の大きさは、それ以前の保健指導と同程度かそれ以上の効果を期待できる可能性があること、⑩BMIの痩せの範囲に該当する腹囲の値を年齢階級・身長区分別に算出した、などの研究成果を得た。さらに最新の診療ガイドラインや臨床研究、疫学研究に基づいて、厚労省の特定健診の標準プログラムのフィードバック文例集の改定案を作成した。
結論
基本健診項目(血圧、脂質異常、糖尿病等)、詳細な健診項目(心電図、眼底等)のそれぞれにおいて、必要な項目、不必要な項目、健診や保健指導で追加すべき新しい項目案(インピーダンス法による内臓脂肪面積、NT-proBNP等)、各検査が推奨される対象者の特性、リスクスコアの意義などを明らかにした。また遠隔での健診・保健指導の実施も見据えてインターネットデバイスの活用(血圧計など)も検証した。さらに健診受診の促進要因、痩せとフレイルの問題、保健指導の費用対効果も検討した。なお本研究班の成果は、厚生労働省の標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)の作成に貢献した(2023年3月31に利発行)。

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
10,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,148,164円
人件費・謝金 1,474,916円
旅費 1,566,426円
その他 2,561,590円
間接経費 2,307,000円
合計 10,058,096円

備考

備考
一部の研究分担者が自己資金を使用したため。

公開日・更新日

公開日
2023-09-11
更新日
-