多施設共同研究に登録された白血病の検体収集と中央保存システムの確立

文献情報

文献番号
200911011A
報告書区分
総括
研究課題名
多施設共同研究に登録された白血病の検体収集と中央保存システムの確立
課題番号
H19-生物資源・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
直江 知樹(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 麻生 範雄(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
  • 清井 仁(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 小林 幸夫(国立がんセンター中央病院)
  • 前田 智也(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 竹下 明裕(浜松医科大学 )
  • 田内 哲三(東京医科大学)
  • 滝 智彦(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,478,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、白血病に対する多施設共同治療研究登録症例において、病態に関与する遺伝子異常、発現状態を臨床的データとの関連性を考慮した中で網羅的に解析し、これら疾患群における分子病態に基づく細分化から最適な治療法の選択と治療成績の向上を目指すことを目的とする。そのため、治療研究登録全症例のDNA、RNAを中央保存化するシステムと遺伝子解析を前方視的ならびに後方視的に解析を行う上での倫理性を確保する審査システムの構築を行う。
研究方法
JALSG AML-97臨床試験登録症例の染色体異常と予後との関係について、特に、予後不良と考えられる染色体異常について検討した。予後不良の染色体転座群としてt(9;22)、11p15転座、t(10;11)(p13;q14)、t(6;9)、t(16;21)(p11;q22)、8p11転座を抽出したところ、これら全体では寛解率、5年全生存率、5年無病生存率とも低い傾向だった。ただし、それぞれの染色体転座ごとの意義については今後の症例の集積が必要である。欠失型の代表的な異常である-5/5q-は他の報告と同様予後不良であったが、-7/7q-の有無では予後に差がなかった
結果と考察
AML209試験では、キメラ遺伝子とFLT3/ITD変異において分子層別化し、治療介入を行うという遺伝子解析に関する研究提案について、JALSG検体研究・付随研究委員会と統一性をもって審議・承認を実施していく基本方針を確認し、JALSGの中での提案研究に際しては、残余検体の中央保存化を求めている。
 本研究班員施設において保存された染色体および保存検体を用いた分子病態の解明を開始し、中央保存された検体において優先的に行うべき遺伝子解析を決定するための予備的検討を開始した。
結論
研究期間中にJALSG AML201試験:249症例のDNA、APL204試験:298例のmRNA、Ph陰性ALL202試験:461例のmRNA、PhALL208-IMA試験:71例のmRNAを中央保存した。
前方視的検体収集と中央保存を研究計画書に盛り込むべく、プロトコール小委員会と連携し、2008年6月より開始されたPhALL208-IMA試験では試験登録にあたり行われるキメラ遺伝子スクリーニング検査、再発時に行われる遺伝子変異解析検査の残余検体を中央保存するための同意文書を組み入れ前方視的検体収集が開始された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200911011B
報告書区分
総合
研究課題名
多施設共同研究に登録された白血病の検体収集と中央保存システムの確立
課題番号
H19-生物資源・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
直江 知樹(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 麻生 範雄(熊本大学 大学院医学薬学研究部)
  • 清井 仁(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 小林 幸夫(国立がんセンター中央病院)
  • 前田 智也(埼玉医科大学 国際医療センター)
  • 竹下 明裕(浜松医科大学)
  • 田内 哲三(東京医科大学)
  • 滝 智彦(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、白血病に対する多施設共同治療研究登録症例において、病態に関与する遺伝子異常、発現状態を臨床的データとの関連性を考慮した中で網羅的に解析し、これら疾患群における分子病態に基づく細分化から最適な治療法の選択と治療成績の向上を目指すことを目的とする。そのため、治療研究登録全症例のDNA、RNAを中央保存化するシステムと遺伝子解析を前方視的ならびに後方視的に解析を行う上での倫理性を確保する審査システムの構築を行う。
研究方法
DNA/RNA中央保存システムの基盤整備と、後方視的な検体収集をJALSG運営委員会、検体研究・付随研究委員会と協議の上推進する。
結果と考察
またAML209試験では、キメラ遺伝子とFLT3/ITD変異において分子層別化し、治療介入を行うという遺伝子解析に関する研究提案について、JALSG検体研究・付随研究委員会と統一性をもって審議・承認を実施していく基本方針を確認し、JALSGの中での提案研究に際しては、残余検体の中央保存化を求めている。
 本研究班員施設において保存された染色体および保存検体を用いた分子病態の解明を開始し、中央保存された検体において優先的に行うべき遺伝子解析を決定するための予備的検討を開始した。
結論
研究期間中にJALSG AML201試験:249症例のDNA、APL204試験:298例のmRNA、Ph陰性ALL202試験:461例のmRNA、Ph陽性ALL208-IMA試験:71例のmRNAを中央保存した。
前方視的検体収集と中央保存を研究計画書に盛り込むべく、プロトコール小委員会と連携し、2008年6月より開始されたPh陽性ALL208-IMA試験では試験登録にあたり行われるキメラ遺伝子スクリーニング検査、再発時に行われる遺伝子変異解析検査の残余検体を中央保存するための同意文書を組み入れ前方視的検体収集が開始された。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200911011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
多施設共同研究における前向き臨床試験において白血病検体からのDNA/RNAの中央保存システムを確立した。これまでの1000例以上に及ぶ染色体解析レビューならびに200数十例におよぶ遺伝子変異解析を行い、その臨床的意義について解析した。染色体・遺伝子変異の新たな予後マーカを同定するとともに白血病発症に関する重要な知見を得た。
臨床的観点からの成果
急性骨髄性白血病においては前向き試験AML209を開始し、染色体では予後中間群に分類されるもののFLT3/ITD変異があって予後不良と考えられる群に、積極的な移植などの介入を行うことによって予後改善に寄与することを検証している。
ガイドライン等の開発
日本血液学会・日本リンパ網内系学会による「造血器腫瘍取り扱い規約」(金原出版2010)
WHO分類第4版(IARC2008)
急性骨髄性白血病に対する診断と治療のRecommendations (Blood 2010 ;115:453-74)
急性前骨髄球性白血病における管理Recommendations (Blood 2009 ;113:1875-91)
その他行政的観点からの成果
本研究を通じて行ってきたWT1転写物定量の白血病残存検査、AmpCMLによるBCR/ABL転写物定量検査が保険収載となって、広く一般診療において行われる検査法となった。
その他のインパクト
市民公開講座「がん治療最前線?大きく変わるがん治療」名古屋2009
患者会での講演「慢性骨髄性白血病・骨髄異形成症候群フォーラムin名古屋」名古屋2009

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
115件
その他論文(和文)
29件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
168件
学会発表(国際学会等)
53件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
7件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Ohtake S, Kiyoi H, Naoe T, et al.
Randomized trial of response-oriented individualized versus fixed-schedule induction chemotherapy with idarubicin and cytarabine in adult acute myeloid leukemia: the JALSG AML95 study.
Int J Hematol , 91 , 276-283  (2010)
原著論文2
Iwanaga E, Nanri T, Asou N, et al.
A JAK2-V617F activating mutation in addition to KIT and FLT3 mutations is associated with clinical outcome in patients with t(8;21)(q22;q22) acute myeloid leukemia.
Haematologica , 94 , 433-435  (2009)
原著論文3
Shiotsu Y, Kiyoi H, Naoe T, et al.
KW-2449, a novel multi-kinase inhibitor, suppresses the growth of leukemia cells with FLT3 mutations or T315I-mutated BCR/ABL translocation.
Blood , 114 , 1607-1617  (2009)
原著論文4
Kato M, Sanada M, Kobayashi Y, et al.
Frequent inactivation of A20 in B-cell lymphomas.
Nature , 459 , 712-716  (2009)
原著論文5
Kobayashi Y, Takeshita A, Naoe T, et al.
Phase I/II study of humanized anti-CD33 antibody conjugated with calicheamicin, gemtuzumab ozogamicin, in relapsed or refractory acute myeloid leukemia: final results of Japanese multicenter cooperative study.
Int J Hematol , 89 , 460-469  (2009)
原著論文6
Kitoh T, Taki T, Osaka M, et al.
Transient abnormal myelopoiesis in a newborn with Down syndrome followed by an acute myeloid leukemia: identification of the same structural chromosomal abnormality at both stage of TAM and leukemia.
Cancer Genet Cytogenet , 188 , 99-102  (2009)
原著論文7
Park M, Taki T, Hayashi Y, et al.
FBXW7 and NOTCH1 mutations in childhood T-cell acute lymphoblastic leukemia and T cell non-Hodgkin's lymphoma.
Br J Haematol , 145 , 198-206  (2009)
原著論文8
Ishikawa Y, Kiyoi H, Naoe T, et al.
Abnormal cytoplasmic dyslocalisation and/or reduction of nucleophosmin protein level rarely occurs in myelodysplastic syndromes.
Leuk Lymphoma , 49 , 2359-2364  (2008)
原著論文9
Narimatsu H, Kiyoi H, Naoe T, et al.
Clinical characteristics and outcomes in patients with t(8;21) acute myeloid leukemia in Japan.
Leukemia , 88 , 154-158  (2008)
原著論文10
Yanada M, Yagasaki F, Naoe T, et al.
Karyotype at diagnosis is the major prognostic factor predicting relapse-free survival for patients with Philadelphia chromosome-positive acute lymphoblastic leukemia treated with imatinib-combined chemotherapy.
Haematologica , 93 , 287-290  (2008)
原著論文11
Okabe S, Tauchi T, Ohyashiki K.
Characteristics of dasatinib- and imatinib-resistant chronic myelogenous leukemia cells.
Clin Cancer Res , 14 , 6181-6186  (2008)
原著論文12
Akahane D, Tauchi T, Ohyashiki K, et al.
Activity of a novel Aurora kinase inhibitor against the T315I mutant form of BCR-ABL: in vitro and in vivo studies.
Cancer Sci , 99 , 1251-1257  (2008)
原著論文13
Hidaka T, Taki T, Morishita K, et al.
Down-regulation of TCF8 is involved in the leukemogenesis of adult-T cell leukemia/lymphoma.
Blood , 112 , 383-393  (2008)
原著論文14
Hiwatari M, Taki T, Nosaka T, et al.
Novel gain-of-function mutation in the extracellular domain of the PDGFRA gene in infant acute lymphoblastic leukemia with t(4;11)(q21;q23).
Leukemia , 22 , 2279-2280  (2008)
原著論文15
Kiyoi H, Shiotsu Y, Naoe T, et al.
A novel FLT3 inhibitor FI-700 selectively suppress the growth of leukemia cells with FLT3 mutations.
Clin Cancer Res , 13 , 4575-4582  (2007)
原著論文16
Kiyoi H, Yamaji S, Naoe T, et al.
JAK3 mutations occur in acute megakaryoblastic leukemia both in Down syndrome children and non-Down syndrome adults.
Leukemia , 21 , 574-576  (2007)
原著論文17
Yanada M, Kiyoi H, Naoe T, et al.
Clinical features and outcome of T-lineage acute lymphoblastic leukemia in adults: A low initial white blood cell count, as well as a high count predict decreased survival rates.
Leuk Res , 31 , 907-914  (2007)
原著論文18
Asou N, Yanagida M, Osato M, et al.
Concurrent transcriptional deregulation of AML1/RUNX1 and GATA factors by the AML1-TRPS1 chimeric gene in t(8;21)(q24;q22) acute myeloid leukemia.
Blood , 109 , 4023-4027  (2007)
原著論文19
Fujisawa S, Takeshita A, Ohnishi K, et al.
Pharmacokinetics of arsenic species in Japanese patients with relapsed or refractory acute promyelocytic leukemia treated with arsenic trioxide.
Cancer Chemother Pharmacol , 59 , 485-493  (2007)
原著論文20
Miyawaki S, Takeshita A, Ohno R, et al.
Phase I trial of FLAGM with high doses of cytosine arabinoside for relapsed, refractory acute myeloid leukemia: study of the Japan Adult Leukemia Study Group (JALSG).
Int J Hematol , 86 , 343-347  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-