新しい生活様式における適切な健診実施と受診に向けた研究

文献情報

文献番号
202209021A
報告書区分
総括
研究課題名
新しい生活様式における適切な健診実施と受診に向けた研究
課題番号
21FA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
杉森 裕樹(大東文化大学 スポーツ・健康科学部看護学科/大学院スポーツ・健康科学研究科予防医学)
研究分担者(所属機関)
  • 塩見 美抄(京都大学大学院 医学研究科人間健康科学系専攻)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部 環境保健医学講座)
  • 鈴木 正人(日比谷国際クリニック)
  • 髙谷 典秀(医療法人社団同友会)
  • 立道 昌幸(東海大学医学部)
  • 中山 健夫(京都大学 大学院医学研究科)
  • 原 聖吾(MICIN)
  • 平尾 磨樹(東京都済生会中央病院 血液内科)
  • 福田 洋(順天堂大学 先端予防医学・健康情報学講座)
  • 武藤 繁貴(聖隷福祉事業団 聖隷健康診断センター 医務部)
  • 村上 正巳(群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,100,000円
研究者交替、所属機関変更
「指先微量血液検査(郵送健診)」実証研究と分析の遂行に必要なフィールド調査の担当者として、分担研究者として参画いただいた。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、健康増進法に基づく健康診査において、特に課題として挙げられているオンライン診療・指先検診を含めた『新しい生活様式』に対応した健診項目・健診のあり方に関するエビデンスを収集・構築し、その実行可能性のある方策を提言することである。
研究方法
1)健診フィールドにおける「指先微量血液検査(郵送健診)」実証研究と分析
健診受診者400名程度を対象に、指先微量血液検査(郵送健診)の結果の妥当性、自己採血(手指血)手技において一定の割合で発生しうる検体採取エラー(採血量不足含む)回避の課題等について検討した。
2)医師を対象としたオンラインによる健診に関する意識調査の検討
本研究では医療サービス提供側である医師を対象としてオンライン健診に関する意識調査を行った。医師パネル250人を対象に、オンラインあるいはハイブリッドによる健診の可能性について、検査項目毎に検討した。対象選定条件は、これまでに、人間ドック、集団検診(特定健診やがん健診などの予防医療)に「携わっている医師」あるいは「携わった経験がある医師」、および「医師としての経験が5年以上ある者」とした。
3)被扶養者を対象とした健診受診に関する意識調査の検討
オンライン/ハイブリッド健診が、従来の健診を受けづらいと感じている人たちの代替的選択肢になるかを検討するため、健保組合の被扶養者を対象として健診受診に関する意識調査を実施した。アンケート調査は富士通健康保険組合の協力のもと、2023年12月8~22日にインターネット上で実施した。期間中に2,069名(28.0%)から回答を得られ、このうち入力不正を除いた2,062名を分析した。
結果と考察
1)静脈血と手指血の関係について、臨床的許容誤差範囲等の基準から検討した結果、HDLコレステロール、AST(GOT)、GGT(γGPT)、HbA1cに偏りが認められた。この4者について補正式を作成した。なおGluは静脈血より手指血で高い結果が得られた。また手指血の遠隔地搬送における影響はなかった。手指血の検体採取エラー率については、200個を配布し、161個のキットが回収された。提出率80%、検体エラー率約7%であり、原因は手指血採血キットの操作の不慣れによるものが多くを占めた。今回、採血方法についてパンフレット改修や動画による説明を行うことで、検体エラー率が先行報告結果(13〜19%)に比べ大きく改善した。
2)医師を対象としたオンラインによる健診に関する意識調査の検討
オンライン健診に代替変更できる「可能性がある」とした割合は、診察/問診188人(68.4%)、身体計測/BMI165人(60.0%)で高く、次いで体重および身長、血圧測定で半数を超えた。また、便潜血126人(45.8%)、尿糖123人(44.7%)、尿蛋白等の尿検査等について約4割が「可能性がある」と回答していた。血球検査および生化学検査項目については「可能性がある」が3割強、「やや可能性がある」が3割であった。一方、「可能性がない」とした割合は、婦人科/診察+乳房超音波224人(81.5%)、消化管/上部内視鏡221人(80.4%)、腹部超音波検査、眼圧検査、呼吸機能検査の順で高かった。
3)被扶養者を対象とした健診受診に関する意識調査の検討
健診年1回受診している者が1887名(91.7%)と大多数を占めた。健診年1回受診しない者の特徴として、年齢34歳以下3.64(1.88-7.08)、35-44歳1.77(1.09-2.90)、45-54歳1.79(1.21-2.64)(対55-64歳)、就労していない1.70(1.23-2.35)が示された(数字はオッズ比と95%信頼区間を示す)。健診年1回受診している者では、従来どおりの健診方法を希望する者が大多数(77.0%)であったが、健診年1回受診していない者では、オンライン/ハイブリッド健診を希望する者がそれぞれ2~3割(22.9%/32.6%)みられた。健診年1回受診していない者では、オンライン/ハイブリッド健診を希望する者が相対的に多くみられ、このような健診方法を受診者側で選択できるようにすることで健診受診率を高めうる可能性が示唆された。
結論
医療保険者においては、健診未受診者に対する重症化予防策として「指先微量血液検査(郵送健診)」の応用が既に実施されている。健診受診の環境整備等の対策をした上で、「指先微量血液検査(郵送健診)」をオンライン健診(遠隔検診等)として部分的に利活用することが有用であり、新しい生活様式において効果的な健診手法として、その応用可能性が示唆された。来年度は、これまでの複眼的な調査結果を踏まえて、『新しい生活様式』に対応した健診項目・健診のあり方に関して実行可能性のある方策を提言・整理する予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202209021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
6,706,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,294,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,925,204円
人件費・謝金 428,730円
旅費 193,150円
その他 1,259,839円
間接経費 900,000円
合計 6,706,923円

備考

備考
令和4年度においては、当初の研究計画を一部変更し、鈴木正人先生を研究分担者とし、健診フィールドにおける「指先微量血液検査(郵送健診)」実証研究と分析を行った。このことにより、健診対象者が使用する検査キット(N=400)を購入する必要が生じたことから、物品費の執行が大幅に増額した。当初、本研究課題を支援するためのアルバイトあるいは有期雇用人員の手配を予定したが、適切な人材が確保できなかったことにより、大東文化大学における研究協力者と大東文化大学研究推進室のスタッフにおいてこれを賄うこととした。研究計画の変更(鈴木正人先生をお迎えして健診フィールドにおける「指先微量血液検査(郵送健診)」実証研究と分析を行うこととなったこと)により、当初計画していた前年度実施した調査のフォロー調査を見送ることとした。研究活動としては、前年度に得られたデータを分析・検証することと指先健診に関わる実証研究に傾注したため、研究活動への支障は生じなかった。なお、当初計画していたフォロー調査については、令和5年度において実施する計画で進める計画で考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-09-21
更新日
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