非ヒト霊長類造血器腫瘍モデル作出と悪性腫瘍モデル作出に向けた基盤技術の開発

文献情報

文献番号
200911002A
報告書区分
総括
研究課題名
非ヒト霊長類造血器腫瘍モデル作出と悪性腫瘍モデル作出に向けた基盤技術の開発
課題番号
H19-生物資源・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
谷 憲三朗(九州大学 生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 えりか(実験動物中央研究所)
  • 小林 誠一郎(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,388,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療予後不良の成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)および Phフィラデルフィア染色体陽性成人急性リンパ性白血病(PhALL)霊長類モデル作出を行うとともに、その解析法の開発、さらにはZinc finger nuclease(ZFNs)法を用いた悪性腫瘍高発症コモンマーモセット(CM)モデル作出に向けた基礎研究を実施する。
研究方法
ATLLモデル作出にはHTLV-1産生MT-2細胞株を経静脈あるいは経腹腔内に霊長類であるCMに投与し、経時的にHTLV-1抗体価、HTLV-1プロウイルス量、末梢血スメアを観察した。PhALLモデル作出にはCM末梢血単核球細胞にp190遺伝子発現レンチウイルスベクター(LV)を導入、ブスルファン前処置後に自家移植、もしくは5-FU 全身投与後大腿骨髄内にLVを注入した。各個体においてp190 bcr-abl mRNA / DNAをRT-PCR法 / PCR法を用いて検出した。一方、これらの血球細胞解析を目的に、抗CMCD抗原単クローン抗体を作製するとともに、CMp53遺伝子を標的とするZFNsプラスミドDNAを作製し、CMp53ノックイン技術開発に向けた基礎研究を行った。
結果と考察
ATLLモデル作出においていずれの個体の血液細胞のDNAからもHTLV-1プロウイルスが持続的に検出され、腹腔内投与個体においては投与後より現在まで1年以上、HTLV-1抗体価の持続的上昇を認めた。末梢血には核に軽度の切れ込みをもった細胞が散見され、抗体価に違いがあるものの、これらCM個体においてHTLV-1キャリア状態が作出できた。Ph ALLモデルでは大腿骨髄内に直接LVを注入する方法で長期観察の結果、LV接種1年4ヶ月以上後も2個体の末梢血単核球および好中球からp190遺伝子発現が確認されたが、いずれにおいても現時点まで白血病発症は認められていない。新たに作製した抗CM CD4ならびにC D8単クローン抗体はCMにおいても有用であることが示された。さらにCMp53遺伝子を標的可能な3ペアのZFNsを作製し、それらがin vitroで活性を有する結果を得た。
結論
CMATLLキャリアモデルならびにCM単クローン抗体は今後の分子標的薬を含む新規治療薬開発上有用であると考えられた。一方遺伝子導入によるCM白血病ならびに悪性腫瘍モデル作出技術においては改良すべき点があることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200911002B
報告書区分
総合
研究課題名
非ヒト霊長類造血器腫瘍モデル作出と悪性腫瘍モデル作出に向けた基盤技術の開発
課題番号
H19-生物資源・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
谷 憲三朗(九州大学 生体防御医学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 えりか(実験動物中央研究所)
  • 小林 誠一郎(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(生物資源・創薬モデル動物研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
治療予後不良の成人T細胞性白血病・リンパ腫(ATLL)および Phフィラデルフィア染色体陽性成人急性リンパ性白血病(PhALL)霊長類モデル作出を行うとともに、その血球解析法の開発、さらにはZinc finger nuclease(ZFNs)法を用いた悪性腫瘍高発症コモンマーモセット(CM)モデル作出に向けた基礎研究を実施する。
研究方法
ATLLモデル作出にはまずHTLV-1産生細胞(CM-1細胞)を妊娠カニクイザルに静脈投与後経過を観察した。またHTLV-1産生MT-2細胞株を経静脈あるいは経腹腔内にCMに投与後、経時的に観察した。PhALLモデル作出にはCM末梢血単核球細胞にp190遺伝子発現レンチウイルスベクター(LV)を導入後に自家移植、もしくは5-FU 全身投与後大腿骨髄内にLVを注入後経過を観察した。CM 抗CD4,8,25,117,34,45単クローン抗体を作製し、それらの機能を解析した。さらにCMp53遺伝子を標的とするZFNsプラスミドDNAを作製し、CMp53ノックイン技術開発に向けた基礎研究を行った。
結果と考察
ATLLモデル作出過程で、カニクイザル母体末梢血中に一過性のHTLV-1の出現と、抗HTLV-1抗体出現を認めた。また新生仔にも一過性に抗HTLV-1抗体出現を認めたが、HTLV-1は末梢血中には認められなかった。CMにおいてはいずれの個体の血液細胞DNAからもHTLV-1プロウイルスが持続的に検出され、腹腔内投与個体においては投与後より現在まで1年以上、HTLV-1抗体価の持続的上昇を認めた。末梢血中には核に軽度の切れ込みのある細胞が散見され、CM個体においてHTLV-1キャリア状態が作出できた。Ph ALLモデル作出には大腿骨髄内への直接的LV注入法が有用であることを示唆する結果を得たが、現時点まで白血病発症は認められていない。新たに作製した抗CM CD4,8,25,117,34,45単クローン抗体はCMにおいても有用であることが示された。さらにCMp53遺伝子を標的可能な3ペアのZFNsを作製し、それらがin vitroで活性を有する結果を得た。
結論
CMATLLキャリアモデルならびにCM単クローン抗体は今後の分子標的薬を含む新規治療薬開発上有用であると考えられた。一方遺伝子導入によるCM白血病ならびに悪性腫瘍モデル作出技術においては改良すべき点があることが明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200911002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HTLV-1ウイルスを病因とする極めて予後不良で日本人に多い、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)疾患モデルを小型霊長類コモンマーモセットに作出する方法の開発に成功した。また、難治性フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病原因遺伝子であるp190bcr/abl遺伝子をレンチウイルスベクターでマーモセット骨髄内に直接接種し、長期間同遺伝子を造血細胞内で発現させることに成功した。さらにはヒト固形腫瘍モデルをマーモセットに作出するためのzinc finger nuclease法の開発を行った。
臨床的観点からの成果
造血器腫瘍の中でも治療予後が非常に悪い成人T細胞白血病/リンパ腫ならびに難治性フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に対する新たな治療法の開発は極めて重要である。現在げっ歯類腫瘍モデルはあるものの、分子標的薬剤を含む新規薬剤の有効性、安全性の検討のためには人に近いサルモデルを用いることが重要であるが、サルには悪性腫瘍モデルは作出されていない。本研究ではコモンマーモセットに作出する研究を進めてきており、ATLLについてはキャリアーモデルの作出に成功し、臨床的な展開が期待できる。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
SORSTシンポジウム(3)遺伝子改変マーモセット研究の新展開
日時 2009年 4月 27日 (月曜日) (全日イベント)
場所 コクヨホール(東京・品川)
連絡先 TEL: 03-3512-3526
主催 独立行政法人 科学技術振興機構
ヒト血液疾患モデルとしてのマーモセットの可能性 
九州大学 生体防御医学研究所 教授 谷 憲三朗

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
24件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
20件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Inoue, H., Iga, M., Tani,K.,et al.
TARC and RANTES Enhance Antitumor Immunity Induced by the GM-CSF-Transduced Tumor Vaccine in a Mouse Tumor Model.
Cancer Immunol Immun. , 57 , 1399-1411  (2008)
原著論文2
Inoue, H., Iga, H., Tani,K.,et al.
Non-transmissible SeV encoding GM-CSF is a novel and potent vector system to produce autologous tumor vaccines
Cancer Science , 99 (11) , 2315-2326  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-