ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築

文献情報

文献番号
200908020A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト組織長期維持SCIDマウスを用いた医薬品等の有効性、安全性評価システムの構築
課題番号
H21-政策創薬・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
野村 大成(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 梁 治子(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部)
  • 小原 有弘(独立行政法人医薬基盤研究所 生物資源研究部)
  • 立花 功(大阪大学・医学系研究科)
  • 本行 忠志(大阪大学・医学系研究科)
  • 野々村 祝夫(大阪大学・医学系研究科)
  • 榎本 隆之(大阪大学・医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,443,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、20年間継代維持凍結保存してきたヒト頚部腫瘍、婦人科・生殖器腫瘍、消化器腫瘍、内分泌腫瘍等の再移植保存を2年間で、未調査のヒト前立腺、脳、肺他の原発腫瘍組織、本研究所資源部所有の培養細胞の移植維持を3年間で、また、良性腫瘍、正常組織、胎児由来組織の継代維持に努め、総括的ヒト組織維持システム構築の基盤を3年間で完成させる。その成果は医薬品の有効性・安全性評価に用いられ国民の保健・医療・福祉の向上に大きく貢献できる。
研究方法
1.ヒト臓器・組織長期維持用SCIDマウスの維持・増産と開発(野村)。
2.長期継代維持後凍結保存ヒトがん組織(1988-1995)の再移植による形態の不変性の確認 (野村)。
3.原発腫瘍、転移組織の新規移植(野村、野々村)。
4.培養がん細胞等の皮下、腹腔、当該臓器内移植と臨床組織との比較(野村、小原)。
5.ヒト正常組織・細胞、胎児由来組織の長期維持(野村、本行、立花、榎本)。
6.移植組織・細胞の継代維持によるマイクロアレイを用いた遺伝子発現不変性の解析(梁、野村)。
結果と考察
 ヒト悪性腫瘍に関しては、SCIDマウス移植組織片をプログラムフリーザーにて凍結後、液体窒素に保存することにより、移植・保存→再移植を繰り返しても、増殖能、組織像に変化がない上に、遺伝子発現の変化も限られていることが明確になった。必要に応じて凍結保存組織をSCIDマウスに再移植する事により、ヒト悪性腫瘍組織を永久に生きたまま確保・使用できる。培養がん細胞は、移植により増殖し腫瘤を形成し、転移もし、移植細胞数に応じて腫瘤を形成することから、定量的治療研究には大いに役立つ。しかし、病巣はがん細胞の塊だけで、ヒト臨床がん組織で見られる組織構造が全く見られない。ヒトがんの研究、治療には適さないと考える。
結論
 ヒト悪性腫瘍の液体窒素凍結保存と再移植の繰り返しよる、移植組織の形態的変化と遺伝子発現への影響は僅かであった。ヒト正常組織(甲状腺)でも同じ傾向が見られた。これらの結果から、ヒト悪性腫瘍を生きたまま永久に保存できる可能性が明らかになった。この成果は、in vivoでのヒト悪性腫瘍の資源化と医薬品の有効性・安全性の研究に大いに貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-