がん検診における‘Shared Decision Making’推進と利益不利益バランスに基づく受診意思決定支援ツール開発のための研究

文献情報

文献番号
202208023A
報告書区分
総括
研究課題名
がん検診における‘Shared Decision Making’推進と利益不利益バランスに基づく受診意思決定支援ツール開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20EA1024
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)
  • 寺澤 晃彦(藤田医科大学医学部)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 山崎 恭子(帝京大学 医療技術学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的根拠に基づく利益と不利益を個人の価値観に照らし合わせ、最良の方法が選択できる‘Shared Decision Making (SDM)’が、がん検診においても適切に利用されることが求められている。本研究では、我が国において、がん検診の利益不利益を勘案して受診選択を可能とするためのDecision Aids(意思決定支援ツール)開発と運用マニュアル作成を目標とする。
研究方法
①がん検診の意思決定支援ツールを評価したシステマティックレビューのオーバービューを2022年12月31日出版分まで文献アップデートを行った。
②水戸市において、67~69歳の地域住民で過去2年に大腸がん検診未受診者8,088人に研究参加の案内状を送付し、同意が得られた研究対象者にアンケート調査、便潜血検査キットの郵送による配布・回収と精密検査対象者には研究者が作成した看護職による大腸がん検診支援マニュアルに基づく支援の実施というプログラムによる介入を行った。
③都道府県がん対策基本計画3期のがん検診の分野において、7領域29項目について評価指標を設定し評価した令和3年度までの成果をもとに、Decision Aids策定に向けた現状把握、普及・啓発、個別勧奨、指標の提示と活用の施策を取りまとめた。
④公的データを活用し、受診勧奨方法別に肺がん検診受診率との関連を検討した。
⑤職域において、がん検診および精密検査受診、治療に至るまでの検診完遂にむけ、受診者が必要とする情報、支援対策を把握するためのアンケート調査を行った。
⑥3年間の研究成果及び国立がん研究センターで作成された「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドラン」「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドラン(ドラフト版)」を参照し、子宮頸がん検診、大腸がん検診、大腸がん検診精検の3種のDecision Aidsを作成した。
⑦先行研究及び3年間の研究成果を踏まえ、我が国で実施可能ながん検診のためのSDM方法を開発し、Decision aidsの活用方法も含め、SDM運用マニュアルを作成した。さらにSDM周知・推進の対策を検討した。
結果と考察
本研究班では、SDMマニュアル作成のために、SDMの効果検証についてシステマティックレビューを行うと共に、都道府県におけるがん検診の情報提供、受診率対策の解析、大腸がん検診未受診者へナースナビゲーションによる勧奨調査、受診者が必要とする情報、支援対策を把握するためのアンケート調査を行った。
これらの結果を踏まえ、我が国のがん検診の実情に即して、主としてがん検診選択や精検支援に着目し、ナースナビゲーションにSDMを組み合わせる新たな方法を提案した。ASSESS(評価)、ADVISE(助言)、AGREE(同意)、ASSIST(支援)、ARRANGE(調整)からなる5A Frame workを採用し  Decision Aidsの活用により、SDMの標準化を図ることができる。がん検診におけるSDMの普及に向けて、基本的な考え方を紹介すると共に、研究班での研究成果を踏まえ、がん検診Shared Decision Making運用マニュアルを作成した。
SDMの推進には医療者の意識改革のために研究成果の公表などを通して継続的に情報発信をしていく必要がある。SDMを担う医師・保健師・看護師のための教育機会の提供として、研修会の開催、リカレント教育、e-learningなども検討されるべきである。また、教育のみならず、SDMにより集積される数多くの疑問点に科学的根拠に基づいた情報提供ができる機会をホームページなどで提供する必要もある。そのためにも、SDMを通じたネットワークを活用しながら、SDM普及のための継続的支援体制が整備されることが望まれる。
結論
本研究班では、SDMマニュアル作成のために、SDMの効果検証についてシステマティックレビューや調査を行った。その成果をもとに、我が国のがん検診の実情に即して、主としてがん検診選択や精検支援に着目し、ナースナビゲーションにSDMを組み合わせる新たな方法を提案し、がん検診Shared Decision Making運用マニュアルを作成した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208023B
報告書区分
総合
研究課題名
がん検診における‘Shared Decision Making’推進と利益不利益バランスに基づく受診意思決定支援ツール開発のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20EA1024
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邊 清高(帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科)
  • 後藤 励(慶應義塾大学 経営管理研究科)
  • 寺澤 晃彦(藤田医科大学医学部)
  • 細野 覚代(国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策研究所 検診研究部)
  • 山崎 恭子(帝京大学 医療技術学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
科学的根拠に基づく利益と不利益を個人の価値観に照らし合わせ、最良の方法が選択できる‘Shared Decision Making (SDM)’が、がん検診においても適切に利用されることが求められている。本研究では、我が国において、がん検診の利益不利益を勘案して受診選択を可能とするためのDecision Aids(意思決定支援ツール)開発と運用マニュアル作成を目標とする。
研究方法
①がん検診の意思決定支援ツールに関する既存のシステマティックレビューを実施した。
②公的ながん検診の対象者である40~60代の男女の一般市民に対して、オンラインによるアンケート調査を行った。がん検診の利益と不利益のバランスに関しての人々の選好を定量的に明らかにするため離散選択実験(DCE: Discrete Choice Experiment)を用いた。
③1期がん対策基本計画でのレビュー(今井らJ. Natl. Inst. Public Health, 61(6): 2012)を参考に、がん検診の分野において、7領域29項目について評価指標を設定し評価した。第3期基本計画では、過去2期の取り組みを踏まえ、科学的根拠に基づくがん検診を質の確保された体制のもと精度管理を行い実施していくこと、職域検診などと連携する重要性が強調されており、指標の抽出についても、実施体制に加え、普及啓発・Decision Aids、個別勧奨、精度管理・事業評価、職域検診との協業の領域において新たな項目を作成し評価した。
④対策型検診における受診勧奨法については厚生労働省がん疾病対策課に「市区町村におけるがん検診の実施状況調査」データ利用を申請し、2016年度-2020年度分データを入手し、受診勧奨法別の肺がん検診・乳がん検診受診率の受診勧奨方法と検診受診率について検討した
⑤水戸市大腸がん検診未受診者の中で過去2年間に大腸がん検診未受診であった住民を対象とし、初回年度は62歳と63歳、2回目年度は67歳、68歳、69歳を抽出し、水戸市医師会研究事務局から大腸がん検診についての研究同意説明文書と同意書、未受診理由に関するアンケート調査票を同封の上郵送し、同意が得られた住民に対し、郵送1日法による試行調査で実施した。
⑥_1 地域住民における大腸がん検診(便潜血検査)の未受診の要因について、便潜血検査を過去2年間未受診であった地域住民7名を対象に、電話もしくはWebによるインタビュー調査を行った。
⑥_2 単一健康保険組合に所属する従業員で、健康診断で実施する便潜血検査の要精密検査対象となった16名について、精密検査受診までの受診支援を通して得られた不安や疑問などの情報を得るためのインタビュー調査を行った。
⑦職域において、がん検診および精密検査受診、治療に至るまでの検診完遂にむけ、受診者が必要とする情報、支援対策を把握するためのアンケート調査を行った。
⑧3年間の研究成果及び国立がん研究センターで作成された「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドラン」「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドラン(ドラフト版)」を参照し、子宮頸がん検診、大腸がん検診、大腸がん検診精検の3種のDecision Aidsを作成した。
⑨先行研究及び3年間の3年間の研究成果を踏まえ、我が国で実施可能ながん検診のためのSDM方法を開発し、Decision aidsの活用方法も含め、SDMマニュアルを作成した。さらにSDM周知・推進の対策を検討した。
結果と考察
本研究班では、既存統計やがん対策基本計画から、現在の受診率対策とその効果を検証した。さらに、医療経済学的調査、受診勧奨調査、アンケート調査、インタビュー調査を通して、受診者の価値観や要望を検討した。さらに、参考研究のレビューによりDecision Aidsの効果検証を行った。
 これらの研究に基づき、我が国のがん検診の実情に即して、主としてがん検診選択や精検支援に着目し、ナースナビゲーションにSDMを組み合わせる新たな方法を提案した。ASSESS(評価)、ADVISE(助言)、AGREE(同意)、ASSIST(支援)、ARRANGE(調整)からなる5A Frame workを採用し、Decision Aidsを活用により、SDMの標準化を図ることができる。がん検診におけるSDMの普及に向けて、基本的な考え方を紹介すると共に、研究班での研究成果を踏まえ、がん検診 Shared Decision Making運用マニュアルを作成した。
結論
3年間の研究成果をもとに、我が国のがん検診に実施可能なナースナビゲーションにSDMを組み合わせた方法を提案し、がん検診Shared Decision Making運用マニュアルを作成した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208023C

収支報告書

文献番号
202208023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,999,000円
(2)補助金確定額
9,708,000円
差引額 [(1)-(2)]
291,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,114,372円
人件費・謝金 2,575,804円
旅費 353,192円
その他 3,357,692円
間接経費 2,307,000円
合計 9,708,060円

備考

備考
収支決算書において「千円未満の端数がある場合は、その端数は切り捨てること」となっているため、補助金確定額と支出合計に差異が生じております。

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-