小児がん拠点病院等及び成人診療科との連携による長期フォローアップ体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202208021A
報告書区分
総括
研究課題名
小児がん拠点病院等及び成人診療科との連携による長期フォローアップ体制の構築のための研究
課題番号
20EA1022
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 清谷 知賀子(独立行政法人国立成育医療研究センター腫瘍科)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究推進室)
  • 原 純一(地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 岡田 賢(広島大学大学院医系科学研究科 小児科学)
  • 田尻 達郎(京都府立医科大学 大学院医学研究科小児外科学 小児外科学)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 向井 幹夫(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 成人病ドック科)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 長谷川 大輔(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院医学研究科電子医療情報管理学講座)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理委員会)
  • 塩田 曜子(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 加藤 実穂(国立成育医療研究センター 小児がんセンター小児がんデータ管理科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国立成育医療研究センターに長期フォローアップセンターを設立し、CCS サポートシステムの基盤整備とともに、情報収集・ 発信の基盤となるオンラインネットワークを構築することにある。
研究方法
国立成育医療研究センター内に長期フォローアップセンターを設置して、診療施設、中央診断・臨床研究のデータセンター、CCSおよびその家族等と連携して情報の授受を行うオンラインネットワークを構築する。具体的にTCCSGコホート研究においてデータセンターとREDCapを用いたネットワークを実際に稼働して情報収集を開始する。また、疾患モデルとして、本分担研究で構築したEDC用いて日本小児がん研究グループ(JCCG)のHLH/LCH委員会のランゲルハンス組織球症治療患者を対象とするフォローアップ研究LCH-12-LTFUを立ち上げる。さらに、小児-成人医療間のフォローアップ、合併症診療連携のモデルを作成し、総合的診療を要するAYA診療や成人のがんサバイバー外来との連携ならびに移行(トランジション)連携、外科的フォローアップ連携を構築する。
結果と考察
REDCapを用いたTCCSGコホート研究は長期フォローアップに有用なモデルとなりうると考えられ、実際に双方向性の情報のやり取りに関して成功している。TCCSGコホートのシステムを発展、導入することで、JCCGとの協働や、我が国の長期フォローアップ体制構築に役立てることができると考えられた。また、疾患モデルとして、LCHをモデルとすることで、他疾患への応用も可能になるものと考えられた。また、双方向性の情報伝達に関しては、スマーフォンアプリの活用は患者からの情報を得るばかりでなく、双方向性の情報交換の手法として有用であると考えられた。本研究にて開発したアプリを、実際のCCSに用いて、より使い勝手の良いシステムに改修することを考えている。
今回の研究で、国立国際と成育間で移行期医療のモデルを作成したが、一定以上の規模をもつ小児がん診療施設で、安定して成人-小児施設間の移行医療を実施するためには、成人施設、小児施設の双方に、移行医療に携わる専門診療科チームとサポート体制の構築が必要であると考えられた。そのためには長期FU/移行医療に携わる人材育成、業務体制の安定化、加算等の体制維持のためのインセンティブが不可欠であり、今後の体制整備が求められる。
人間ドックや検診システムを活用することで、CCSの晩期合併症を効率的に発見できることが明らかになった。しかし経済的な課題があり、フォローアップを行うための小児がん経験者に特化した、人間ドック助成などの公的補助が得られるような社会の仕組みが求められる。
各種学会との連携は、長期フォローアップを考える上で、大きな課題である。特に内分泌と循環器に関しては、それぞれの専門学会(小児学会と成人学会を含む)と連携することで、シームレスな移行を実現しなければならない。その場合、小児科と成人診療科との長期フォローアップ診療に対する温度差にも注意する必要があると考えられた。
結論
長期フォローアップセンターの基礎を構築し、TCCSGコホートをモデルとして、WEBベースの運用を開始し、双方向性の情報提供に成功した。疾患モデルとして、JCCGと共同してLCH-12-LTFU研究を立ち上げ、データセンター支援を行った。長期フォローアップに対する疾患横断的な収集項目案を、セントジュード小児病院の専門家と協議を重ね決定した。また、患者向けの双方向性ツールとして、スマートフォンアプリを開発した。人間ドックや検診システムを活用することで、CCSの晩期合併症を効率的に発見できると考えられたが、経済的な課題があった。日本小児内分泌学会など各種学会やJCCGの各種委員会との連携も重要であると考えられた。循環器、内分泌など長期合併症に対する成人施設との連携に関しては、トリアージを行う窓口診療科の必要性、心理社会的視点の欠如、生殖医療に関する成人診療科からの患者教育などが必要であると考えられた。成人診療科側からのアプローチとして、漫然とガイドラインに記載された検査を実施するのではなく、成人診療の視点でアセスメントし、必要に応じて検査や治療を最適化し、改めて患者教育を行うことが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202208021B
報告書区分
総合
研究課題名
小児がん拠点病院等及び成人診療科との連携による長期フォローアップ体制の構築のための研究
課題番号
20EA1022
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松本 公一(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 清谷 知賀子(独立行政法人国立成育医療研究センター腫瘍科)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療研究センター 臨床研究センター 臨床研究推進室)
  • 原 純一(地方独立行政法人大阪市民病院機構 大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
  • 岡田 賢(広島大学大学院医系科学研究科 小児科学)
  • 田尻 達郎(京都府立医科大学 大学院医学研究科小児外科学 小児外科学)
  • 清水 千佳子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター がん総合診療センター / 乳腺・腫瘍内科)
  • 向井 幹夫(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 成人病ドック科)
  • 康 勝好(埼玉県立小児医療センター 血液腫瘍科)
  • 長谷川 大輔(学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 佐藤 真理(順天堂大学大学院医学研究科電子医療情報管理学講座)
  • 飯島 祥彦(名古屋大学大学院医学系研究科生命倫理委員会)
  • 塩田 曜子(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
  • 加藤 実穂(国立成育医療研究センター 小児がんセンター小児がんデータ管理科)
  • 依藤 亨(大阪市立総合医療センター 小児代謝・内分泌内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、国立成育医療研究センターに長期フォローアップセンターを設立し、CCS サポートシステムの基盤整備とともに、情報収集・ 発信の基盤となるオンラインネットワークを構築することにある。
研究方法
国立成育医療研究センター内に長期フォローアップセンターを設置して、診療施設、中央診断・臨床研究のデータセンター、CCSおよびその家族等と連携して情報の授受を行うオンラインネットワークを構築する。具体的にTCCSGコホート研究においてデータセンターとREDCapを用いたネットワークを実際に稼働して情報収集を開始する。また、疾患モデルとして、本分担研究で構築したEDC用いて日本小児がん研究グループ(JCCG)のHLH/LCH委員会のランゲルハンス組織球症治療患者を対象とするフォローアップ研究LCH-12-LTFUを立ち上げる。さらに、小児-成人医療間のフォローアップ、合併症診療連携のモデルを作成し、総合的診療を要するAYA診療や成人のがんサバイバー外来との連携ならびに移行(トランジション)連携、外科的フォローアップ連携を構築する。
結果と考察
REDCapを用いたTCCSGコホート研究は長期フォローアップに有用なモデルとなりうると考えられ、実際に双方向性の情報のやり取りに関して成功している。TCCSGコホートのシステムを発展、導入することで、JCCGとの協働や、我が国の長期フォローアップ体制構築に役立てることができると考えられた。また、疾患モデルとして、LCHをモデルとすることで、他疾患への応用も可能になるものと考えられた。また、双方向性の情報伝達に関しては、スマーフォンアプリの活用は患者からの情報を得るばかりでなく、双方向性の情報交換の手法として有用であると考えられた。本研究にて開発したアプリを、実際のCCSに用いて、より使い勝手の良いシステムに改修することを考えている。
今回の研究で、国立国際と成育間で移行期医療のモデルを作成したが、一定以上の規模をもつ小児がん診療施設で、安定して成人-小児施設間の移行医療を実施するためには、成人施設、小児施設の双方に、移行医療に携わる専門診療科チームとサポート体制の構築が必要であると考えられた。そのためには長期FU/移行医療に携わる人材育成、業務体制の安定化、加算等の体制維持のためのインセンティブが不可欠であり、今後の体制整備が求められる。
人間ドックや検診システムを活用することで、CCSの晩期合併症を効率的に発見できることが明らかになった。しかし経済的な課題があり、フォローアップを行うための小児がん経験者に特化した、人間ドック助成などの公的補助が得られるような社会の仕組みが求められる。
各種学会との連携は、長期フォローアップを考える上で、大きな課題である。特に内分泌と循環器に関しては、それぞれの専門学会(小児学会と成人学会を含む)と連携することで、シームレスな移行を実現しなければならない。その場合、小児科と成人診療科との長期フォローアップ診療に対する温度差にも注意する必要があると考えられた。
結論
長期フォローアップセンターの基礎を構築し、TCCSGコホートをモデルとして、WEBベースの運用を開始し、双方向性の情報提供に成功した。疾患モデルとして、JCCGと共同してLCH-12-LTFU研究を立ち上げ、データセンター支援を行った。長期フォローアップに対する疾患横断的な収集項目案を、セントジュード小児病院の専門家と協議を重ね決定した。また、患者向けの双方向性ツールとして、スマートフォンアプリを開発した。人間ドックや検診システムを活用することで、CCSの晩期合併症を効率的に発見できると考えられたが、経済的な課題があった。日本小児内分泌学会など各種学会やJCCGの各種委員会との連携も重要であると考えられた。循環器、内分泌など長期合併症に対する成人施設との連携に関しては、トリアージを行う窓口診療科の必要性、心理社会的視点の欠如、生殖医療に関する成人診療科からの患者教育などが必要であると考えられた。成人診療科側からのアプローチとして、漫然とガイドラインに記載された検査を実施するのではなく、成人診療の視点でアセスメントし、必要に応じて検査や治療を最適化し、改めて患者教育を行うことが重要と考えられた。
長期フォローアップの担い手として、今回の研究では、国立国際病院というプロフェッショナルな成人施設をモデルとしたが、日本の小児がん医療の現状を考えると全てのCCSをこのような形に集約することは困難であると考える。今後は、通常の総合病院や開業医をベースとしたシステムを構築することが重要となり、そのための実践的なガイドラインが必要となるものと考える。

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202208021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本では小児がん長期生存者の長期フォローアップを前向きに行う研究はなかった。今回の研究により長期フォローアップセンターの基礎を構築することができ、TCCSGコホート研究、LCH-12-LTFU研究を開始することができた。今後、全国的な小児がん長期フォローアップセンターに展開し、全国のデータを蓄積することにより、日本から情報の発信が可能となり、欧米との比較、共同研究が可能となる。また、各種学会やJCCG委員会との連携が重要であることを示すことができた。
臨床的観点からの成果
各病院単位での小児経験者の長期フォローアップに留まっていたシステムを、全国規模で展開する日本全体の体制整備に昇華させることができた。全国の小児がん経験者に、地域差なくシステムを提供することが可能なため、経験者に対するメリットがあるとともに、全国からのデータ収集を可能にした。さらに、患者向け携帯アプリの開発等により、双方向性の情報共有が可能になることを示すことができ、小児がん経験者の実態解明と課題解決につなげることができると考えられる。
ガイドライン等の開発
小児がん経験者の長期フォローアップの重要性について示すことができ、人間ドックの応用などの検討を行った。人間ドックの応用には経済的な課題があり、補助金などの制度が必要であると考えられた。受け手となる成人診療科に関しては、患者教育の必要性などが明らかになり、小児診療科との温度差も明らかとなった。これらの結果を踏まえ、より実践的なガイドラインが必要となると考えられ、次期研究にて作成する計画である。
その他行政的観点からの成果
第82回がん対策推進協議会(令和4年9月20日開催)の大賀委員報告資料中に、本研究の一部を引用し、小児がん長期フォローアップの重要性に関して報告した。第四期がん対策推進基本計画内に、「国は、長期フォローアップの更なる推進のため、小児がん経験者の晩期合併症について実態把握を行うとともに、小児がん拠点病院等と、拠点病院等、地域の医療機関、かかりつけ医等の連携を含め、地域の実情に応じた小児・AYA世代のがん患者の長期フォローアップの在り方を検討する。」と記載された。
その他のインパクト
成育医療研究センターで長期フォローアップセンターが稼働しデータ集積により、治療後の合併症対策につながることが、読売新聞2023年1月4日夕刊第1面で取り上げられた。その他、小児がん長期フォローアップの重要性について、具体的な患者さんを通して、2023年12月からの読売新聞の連載に協力し、長期フォローアップセンター構想についても取り上げていただいた。

発表件数

原著論文(和文)
31件
原著論文(英文等)
49件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-07-04
更新日
2024-06-07

収支報告書

文献番号
202208021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
14,979,000円
差引額 [(1)-(2)]
21,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,411,425円
人件費・謝金 4,902,625円
旅費 867,505円
その他 4,338,350円
間接経費 3,460,000円
合計 14,979,905円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-05-23
更新日
-