ヒトパピローマウィルス持続感染制御に関するゲノム医学からのアプローチ

文献情報

文献番号
200907006A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトパピローマウィルス持続感染制御に関するゲノム医学からのアプローチ
課題番号
H19-ゲノム・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉浦 孝一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 晃(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 増崎 英明(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中山 大介(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 三浦 清徳(長崎大学病院)
  • 木住野 達也(長崎大学 先導生命科学研究支援センター)
  • 近藤 新二(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
26,333,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は,子宮頸癌の発症リスクを高めているヒトのsingle nucleotide polymorphism (SNP)の検索を行い,SNPタイピングによって子宮頸癌検診の効率を高めること,またワクチン投与に関し科学的な基盤情報を得ることを目的とする。
研究方法
研究対象疾患群は,子宮頸部異形成を指摘された群,妊婦群,そして持続感染者と見なせる子宮頸癌発症者(手術後の患者も含む)の3群に分類した。子宮頸部異形成と診断された群は,フォローアップすることによってHPV感染の消失を確認できる群である。妊婦は,いわゆる長崎の一般女性集団におけるHPVの頻度算定が可能であるので,子宮頸部異形成を指摘された群に認められるHPVの型と比較するための基本データとして非常に重要である。収集した試料から組織診断によって最終的に子宮頸癌と診断された209例のジェノタイピングを行い,一般集団対照集団184例を対照群として用いた。ジェノタイピングはGenome-Wide Human SNP 6.0 Arrayを用い,ジェノタイピング結果はplinkにより関連解析を行い,plinkによる解析結果はhaploviewにより図式化した。
結果と考察
HSIL群とSCC群をあわせると,HPV52型と58型に感染している割合は26 % にのぼり,本邦で使用されている子宮頸癌予防ワクチンでは,抗原に対する交差反応を考慮しても3割程度の子宮頸癌は予防できない。そのため,ワクチン発売後も子宮頸部細胞診の子宮頸癌予防意義は極めて重要である。また,今後の日本における子宮頸癌ワクチンの効果についても,16型・18型のみならず,52型・58型にも注意をはらった前向きのコホート研究が必要である。子宮頸癌になりやすい傾向があるかないかを決定するSNPの探索は,まだ,途中の段階である。最終年度である本年度までに,子宮頸癌発症患者209名を収集し,遺伝子型を決定して対照184名と比較した。まだ,1st screeningが終了した段階であり,今後子宮頸癌発症に関連したSNP同定を目指す。
結論
高リスク型ヒトパピローマウィルス持続感染制御にかかわるSNPもしくはCNV探索に向けて,目標に向けて試料収集が順調に進んだ。まだ,解析途中であるが,研究を完成させるべく進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200907006B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒトパピローマウィルス持続感染制御に関するゲノム医学からのアプローチ
課題番号
H19-ゲノム・一般-006
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
吉浦 孝一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 晃(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 増崎 英明(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中山 大介(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 三浦 清徳(長崎大学病院)
  • 木住野 達也(長崎大学 先導生命科学研究支援センター)
  • 近藤 新二(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目標は,子宮頸癌の発症リスクを高めているヒトのsingle nucleotide polymorphism (SNP)の検索を行い,SNPタイピングによって子宮頸癌検診の効率を高めること,またワクチン投与に関し科学的な基盤情報を得ることを目的とする。
研究方法
細胞診,組織診の病理診断と関連づけながら収集するシステマティックな試料収集・管理システムを構築し,血液試料の収集のみならず,現在の子宮頸癌検診システムとHPVのタイピング情報も加味したベセスダシステムとの検討も兼ね,HPV型判定は,アンプリコア®リニアアレイHPVジェノタイピングキット(Roche ダイアグノスティック社)を採用した。全ゲノムSNPジェノタイピングは,Affymetrix社製GeneChipシステムを用いて行った。収集した試料から組織診断によって最終的に子宮頸癌と診断された209例のジェノタイピングを行い,一般集団対照集184例を用いた。
結果と考察
妊婦144人中HPV感染を認めたものは52人(36%)であり,その平均年齢は29歳であった。妊婦においてはHPV16型(10%)と52型(10%)が同数で、最も多く検出された型であり,3番目にHPV31型(6%),以下18型,58型と続く。1年以上フォローアップした患者が62例ある。これらの患者のHPV感染状況は,一年後に陽性であった例が51例(82 %),陰性となった例が11例(18 %)であった。すなわち,HPVが消失した例は,一年後で18 %である。子宮頸癌になりやすいさを決定するSNPの探索は,まだ,1st screeningが終了した段階である。極端に低いP-値を示すSNPがあるが,これらのジェノタイピングを確認しながら関連したSNPの特定を進める。
結論
本邦で使用されている子宮頸癌予防ワクチンによって,HPV52型の感染防御が重要であることが示唆され,前向きコホート研究が必要である。
高リスク型ヒトパピローマウィルス持続感染制御にかかわるSNP探索に向けて,試料収集が順調に進んだ。まだ,解析途中であるが,研究を完成させるべく進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200907006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成22年1月23日までに延べ1,315例を収集し,その中で子宮頸部扁平上皮癌209例を収集し,子宮頸癌になりやすいか否かを決定するSNPのスクリーニングを行った。現在,GWAS (genome wide association study)は進行中であるが,まだ確定できるSNPの決定までには至っていない。しかし,一つ一つのSNPについて順次遺伝子型を確定させていくことによって,子宮頸癌になりやすい体質が明らかになると期待される。
臨床的観点からの成果
HPVの型の一般集団での頻度は,これまで算出されておらず今回の研究で妊婦144名を対象として,推定することが出来た。HPV16型(10%)と52型(10%)が同数で,最も多く検出された型であり, high risk group HPV として知られる52型が多いことが示された。また,1年以上フォローアップした患者が62例あるが,一年後に陽性であった例が51例(82 %),陰性となった例が11例(18 %)であった。すなわち,HPVが消失した例は,一年後でわずかに18 %である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
HPV16型はHSIL群や子宮頸癌を推定するSCC群で最も多く認められる型(29?39 %)であるが,HPV52型(11?15 %)や58型(11 %)も多い。HSIL群とSCC群をあわせると,HPV52型と58型に感染している割合は26 % にのぼり,今後の日本における子宮頸癌ワクチンの効果については,16型・18型のみならず,52型・58型にも注意をはらった前向きのコホート研究が必要である。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
37件
原著論文(英文等)
42件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
112件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tsuda M, Yamada T, Mikoya T et al.
A type of familial cleft of the soft palate maps to 2p24.2-p24.1 or 2p21-p12.
Journal of Human Genetics , 55 (2) , 124-126  (2010)
原著論文2
Kuniba H, Yoshiura K, Kondoh T et al.
Molecular karyotyping in 17 patients and mutation screening in 41 patients with Kabuki syndrome.
Journal of Human Genetics , 54 (5) , 304-309  (2009)
原著論文3
Miura K, Miura S, Yoshiura K et al.
A case of Kallmann syndrome carrying a missense mutation in alternatively spliced exon 8A encoding the immunoglobulin-like domain IIIb of FGFR1.
Human Reproduction , 25 , 1076-1080  (2010)
原著論文4
Nakashima M, Tsuda M, Kishino T et al.
The accuracy of SNP genotyping using genomic DNA extracted from finger nail: Comparison with blood.
Clinical Chemistry , 54 (10) , 1746-1748  (2008)
原著論文5
Kuniba H, Tsuda M, Nakashima M et al.
Lack of C20orf133 and FLRT3 mutations in 43 patients with Kabuki syndrome in Japan.
Journal of Medical Genetics , 45 (7) , 479-480  (2008)
原著論文6
Miura K, Miura S, Yamasaki K st al.
Increased level of cell-free placental mRNA in a subgroup of placenta previa that needs hysterectomy.
Prenatal Diagnosis , 28 (9) , 805-809  (2008)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-