小胞体ストレスによるインスリン分泌障害と糖尿病治療法開発

文献情報

文献番号
200907005A
報告書区分
総括
研究課題名
小胞体ストレスによるインスリン分泌障害と糖尿病治療法開発
課題番号
H19-ゲノム・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡 芳知(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片桐 秀樹(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 谷澤 幸生(山口大学 大学院医学系研究科 )
  • 浅野 知一郎(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
32,829,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現代の飽食と運動不足の環境下では、インスリン分泌を強要する。膵β細胞の小胞体ストレスが過大となると細胞はアポトーシスに陥る。このβ細胞数減少に着目することが、最近の糖尿病増加を解く鍵であり、新規治療法につながると考える。そこで、本研究では、この膵β細胞のアポトーシスを惹起する小胞体ストレスに焦点をあてる。
研究方法
WFS1KOマウスの膵β細胞、あるいは膵β細胞株MIN6でWFS1を除いた細胞を、野生型と遺伝子発現を比較する。また、WFS1の過剰発現、RNAiによる発現抑制で検証する。さらに、臓器間代謝情報ネットワークの存在を利用して、再生医療による新しい治療法を見出す。
結果と考察
小胞体ストレス下でも膵β細胞数を保持できる、全く新しい糖尿病治療薬の開発を目指している。WFS1との結合蛋白を、個体に小胞体ストレスが加わっていることのバイオマーカーとならないか、検討をしている。治療の面では、我々が世界に先駆けて作成したWFS1欠損マウスをモデルでは、動脈硬化が進行することを世界で初めて見出した。これは予想外のことであったが、小胞体ストレスと肥満・糖尿病との関係が注目されており、意義深い発見である。
結論
我々は、翻訳抑制因子4EBP1が転写因子ATF4の制御によって慢性小胞体ストレス下での膵β細胞保護分子となることを世界で初めて示した。4EBP1がないと膵β細胞は小胞体ストレス下でアポトーシスに陥り、糖尿病を惹起する。小胞体ストレス下でも膵β細胞数を保持(増加)できる、従来の薬剤にはない全く新しい糖尿病治療薬のターゲットであり、さらに研究を進めている。また、神経系による臓器間ネットワークにより、各臓器の代謝が調節されていることを発見したが、さらにこの機構を利用して肝臓刺激により膵β細胞を増加させることができるという、きわめて斬新な糖尿病治療法を見出し世界の注目を浴びている。どのような分子が肝臓で自律神経末端を刺激しているのか、あるいは自律神経末端が膵β細胞に向かってどのような分子を放出するのかは、治療薬開発に直接につながる重要な課題であり、製薬企業とともに現在精力的に研究を進めている。同時に、神経を直接刺激することで膵β細胞量を調節して糖尿病を治療する試みを行っている。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
200907005B
報告書区分
総合
研究課題名
小胞体ストレスによるインスリン分泌障害と糖尿病治療法開発
課題番号
H19-ゲノム・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
岡 芳知(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片桐 秀樹(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 谷澤 幸生(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 浅野 知一郎(広島大学 大学院歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
糖尿病は増え続けている。現代の飽食と運動不足の環境下では、インスリン分泌を強要する。膵β細胞の小胞体ストレスが過大となると細胞はアポトーシスに陥る。このβ細胞数減少に着目することが、最近の糖尿病増加を解く鍵であり、新規治療法につながると考える。
研究方法
WFS1のKO膵β細胞の遺伝子発現を比較する。また、我々が見出した臓器間代謝情報ネットワークの存在)を利用して、再生医療のまったく新しい治療に結びつける。また、糖尿病1000例対照例1000例の解析進めて、特に、小胞体ストレスに対して弱い者は、耐糖能が正常域にあってもインスリン分泌反応が低下・遅延している可能性が検証する。
結果と考察
小胞体ストレス下でも膵β細胞数を保持(増加)できる、従来の薬剤にはない全く新しい糖尿病治療薬の開発を目指している。2008年度までに、ターゲット分子・遺伝子として、WFS1に加えて翻訳抑制因子4EBP1を同定した。個体に小胞体ストレスが加わっていることのバイオマーカーとならないか、その医療上の有用性を検討している。さらに我々が世界に先駆けて作成したWFS1欠損マウスをモデルでは、動脈硬化が進行することを世界で初めて見出した。これは予想外のことであったが、小胞体ストレスと肥満・糖尿病との関係が近年世界で注目されており、きわめて意義深い発見である。。また、膵β細胞が減少して糖尿病が発症するSTZ糖尿病やAkitaマウスで神経ナットワークを用いて治療できることを示したが、これをさらに発展させ、神経を直接刺激することで膵β細胞量を調節して糖尿病を治療する試みを行っている。
結論
翻訳抑制因子4EBP1が転写因子ATF4の制御によって慢性小胞体ストレス下での膵β細胞保護分子となることを世界で初めて示した。小胞体ストレス下でも膵β細胞数を保持(増加)できる、従来の薬剤にはない全く新しい糖尿病治療薬のターゲットであり、研究を進めている。また、我々は神経系による臓器間ネットワークの概念を発展させて、肝臓刺激により膵β細胞を増加させることができるという、きわめて斬新な糖尿病治療法を見出した。どのような分子が肝臓で自律神経末端を刺激しているのか、あるいは自律神経末端が膵β細胞に向かってどのような分子を放出するのかは、治療薬開発に直接につながる重要な課題であり、現在精力的に研究を進めている。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200907005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
糖尿病をきたす遺伝子WFS1が小胞体ストレスから細胞を守る機構を、米国マサチューセッツ大の研究グループと明らかにした。
臨床的観点からの成果
WFS1の発現を高める薬剤は、小胞体ストレスに由来する糖尿病の発症・進展を抑制する可能性がある。
ガイドライン等の開発
小胞体ストレスの増加による糖尿病を防ぐためには、小胞体ストレスを軽減する働きのあるWFS1の効果を高めることが必要である。
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
19件
原著論文(英文等)
11件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
34件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Imai J, Katagiri H, Oka Y,et al.
Regulation of pancreatic β cell mass by neuronal signals from the liver.
Science , 322 (5905) , 1250-1254  (2009)
原著論文2
Yoshida S, Hirai M, Suzuki S, Oka Y, et al.
Neuropathy is associated with depression independently of health-related quality of life in Japanese patients with diabetes.
Psychiatry and Clinical Neurosciences , 63 (1) , 65-72  (2009)
原著論文3
Fukuda N, Emoto M, Oka Y, et al.
DOC2B: A novel syntaxin-4 binding protein mediating insulin-regulated GLUT4 vesicle fusion in adipocytes.
Diabetes , 58 (2) , 377-384  (2009)
原著論文4
Akiyama M, Hatanaka M, Oka Y, et al.
Increased insulin demand promotes while pioglitazone prevents pancreatic beta cell apoptosis in Wfs1 knockout mice.
Diabetologia , 52 (4) , 653-663  (2009)
原著論文5
Tokita A, Ishigaki Y, Oka Y, et al.
Carotid arterial elasticity is a sensitive atherosclerosis value reflecting visceral fat accumulation in obese subjects.
Atherosclerosis , 206 , 168-172  (2009)
原著論文6
Kaneko K, Yamada T, Oka Y, et al.
Obesity Alters Circadian Expressions of Molecular Clock Genes in the Brainstem.
Brain Res , 1263 , 58-68  (2009)
原著論文7
Kawano J, Fujinaga R, Oka Y, et al.
Wolfram syndrome 1(Wfs1) mRNA expression in the normal mouse brain during postnatal development.
Neuroscience Research , 64 , 213-230  (2009)
原著論文8
Fujiwara M, Kobayashi T, Oka Y, et al.
Pattern recognition analysis for 1H NMR spectra of plasma from hemodialysis patients.
Anal Bioanal Chem , 394 , 1655-1660  (2009)
原著論文9
Miyake K, Yang W, Oka Y, et al.
Construction of a prediction model for type 2 diabetes mellitus in the Japanese population based on 11 genes with strong evidence of the association.
Journal of Human Genetics , 54 , 236-241  (2009)
原著論文10
Ogihara T, Katagiri H Oka Y, et al.
Peginterferon(PEG-IFN)Plus ribavirin combination therapy,but neither interferon nor PGE-IFN alone, induced Type 1 diabetes in a patient with chronic hepatitis C.
Internal Medicine , 48 , 1387-1390  (2009)
原著論文11
Imai J, Oka Y, Katagiri H.
Identification of a novel mechanism regulating β-cell mass.
Islets , 1 (1) , 73-75  (2009)
原著論文12
Imai J, Yamada T, Oka Y, et al.
Eradication of insulin resistance
Lancet , 378 , 9685-  (2009)
原著論文13
Ishigaki Y, Oka Y, Katagiri H.
Circulating oxidized LDL-a biomarker and a pathogenic factor.
Current Opinion in Lipidology , 20 , 363-369  (2009)
原著論文14
Katagiri H, Imai J, Oka Y.
Neural relay from the liver induces proliferation of pancreatic beta cells: A path to regenerative medicine using the self-renewal capabilities.
Commun Integr Biol , 2 (5) , 425-427  (2009)
原著論文15
Chen C, Takahashi K, Oka Y, et al.
Characterization of a novel murine preadipocyte line, AP-18, isolated from subcutaneous tissue: analysis of adipocyte-related gene expressions.
Cell Biol Int , 34 (3) , 293-299  (2009)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-