細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究

文献情報

文献番号
200906021A
報告書区分
総括
研究課題名
細胞シートによる関節治療を目指した臨床研究
課題番号
H21-再生・一般-008
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 正人(東海大学医学部外科学系整形外科)
研究分担者(所属機関)
  • 阿久津 英憲(国立成育医療センター研究所 生殖細胞医療研究部)
  • 長嶋 比呂志(明治大学 農学部 生命科学科)
  • 石原 美弥(防衛医科大学校 医用工学)
  • 瀬尾 憲正(自治医科大学 麻酔科学)
  • 加藤 俊一(東海大学 医学部 再生医療科学)
  • 三谷 玄弥(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
  • 沓名 寿治(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
  • 海老原 吾郎(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
  • 長井 敏洋(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
  • 李 禎翼 (イー ジョンイック)(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
  • 小久保 舞美(東海大学 医学部 外科学系整形外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
49,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来修復困難と考えられてきた関節軟骨部分損傷(軟骨下骨に達しない軟骨内損傷)に対して、私共は、温度応答性培養皿で作製した積層化軟骨細胞シートによる関節軟骨修復再生効果を世界で初めて報告し、修復能力に富んだ積層化軟骨細胞シートの特性を明らかにした。要約すると軟骨細胞シートは力学的には脆弱ではあるが、優れた接着性を有し、損傷した軟骨からのプロテオグリカンの流出を阻止し、関節液中のカタボリックファクターから軟骨を保護し、成長因子の持続的な供給源であると共に、さらに骨髄由来幹細胞の軟骨分化を促進するイニシエーターとしても機能しており、単なる軟骨再生というよりは、むしろ自己修復能力を最大限に向上させ得る効果により軟骨は修復・再生されている。つまり、変形性関節症において常に混在しながら存在する軟骨部分損傷(軟骨内に留まる損傷)と全層欠損(軟骨下骨まで達する損傷で従来の再生医療は全層欠損だけがターゲットである)の両タイプの軟骨損傷に対して、細胞シートによる修復・再生効果を確認し、細胞シート工学という日本オリジナルな技術による関節治療を目指し、自己細胞による臨床研究の早期実現と同種細胞による将来的な実用化のための基礎的な検討を行う。
研究方法
1.細胞のバンキングシステムと細胞シートの構築に適した軟骨細胞等の評価に関する研究を行う。
2.移植細胞動態の解析を行う。
3.ミニブタによる同種移植の有効性の確認を行う。
4.低侵襲移植手技を確立する。
5.光を用いた細胞シートの非侵襲的特性評価を実施する。
6.ヒト幹指針に則り厚労省への申請準備を行う。
結果と考察
1.細胞のバンキングシステムと細胞シートの構築に適した軟骨細胞等のマーカーに関する研究
同種細胞の適切なバンキングシステムを、細胞の匿名化等にも配慮し、既存の骨バンクを参考に構築する。施設間でのヒト細胞の受け入れのための作業を実施している。
2.移植細胞動態の解析
ルシフェラーゼを強発現するTgラットの細胞で作製した、積層化軟骨細胞シートを作製し、関節内での細胞シートの滞在時間を計測することが可能であった。
3.ミニブタによる同種移植の有効性確認
同種のミニブタ膝関節において自然修復しない大きさの骨軟骨全層欠損を作製し、同種軟骨細胞シート移植による治療効果を確認中である。
結論
本研究事業の2つの大きな課題である「自己細胞シートによる軟骨再生医療の臨床研究」並びに「同種細胞シート移植のための技術開発に関する研究」は何れも、当初の予想以上の成果が得られている。次年度はCPCでの試験製造と安全性評価に准点を置き、臨床研究のための準備を確実にする予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-