妊婦健康診査、産婦健康診査における妊産婦支援の総合的評価に関する研究

文献情報

文献番号
202207011A
報告書区分
総括
研究課題名
妊婦健康診査、産婦健康診査における妊産婦支援の総合的評価に関する研究
課題番号
21DA1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
光田 信明(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪母子医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 木村 正(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 中井 章人(日本医科大学 医)
  • 池田 智明(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 藤原 武男(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 国際健康推進医学)
  • 佐藤 昌司(大分県立病院総合周産期母子医療センター)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 清野 仁美(兵庫医科大学 精神科神経科学講座)
  • 三代澤 幸秀(信州大学 医学部)
  • 日高 庸博(福岡市立こども病院 産科)
  • 林 昌子(山口 昌子)(日本医科大学多摩永山病院 女性診療科・産科)
  • 味村 和哉(大阪大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
  • 金川 武司(国立循環器病研究センター 産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の周産期医療レベルは高く、その指標である周産期死亡率や妊産婦死亡率は世界のトップ水準にある。その大きな要因の一つに妊婦健康診査(妊健)があり、妊健の普及は周産期予後改善に寄与してきた。しかし社会的ハイリスク妊娠(SHP;Social high risk pregnancy)やメンタルヘルス(MH;Mental health)に問題を抱える妊産婦は増加傾向にあり、自殺や児童虐待発生の要因となり社会的な問題となっている。これまでにSHPが母児の予後と密接に関連すること、MHの不調がSHPにつながり、母児の予後にも影響を及ぼすことを明らかにした。またSHPを把握するためのアセスメントシート(SLIM尺度)を確立した(第1次・2次光田班)。そこで本研究では、SHPやMHに問題を抱える妊産婦だけではなく全ての妊産婦への支援に資する実証的基礎データを得ることを目的とする。
研究方法
Ⅰ: 妊娠出産に関わる社会的・精神的支援に係る人員と労力の評価
Ⅱ: 合併症妊娠、異常妊娠・分娩、NICU入院等における妊産婦健康診査体制構築
Ⅲ: 妊娠および出産における経済的負担に関する調査
Ⅳ: 分娩取扱い施設における社会的ハイリスク妊婦の把握に関する調査
Ⅴ: IT動画(シリアスゲーム)によるハイリスク妊婦支援における多職種連携の推進
Ⅵ: 精神科医療、精神保健との持続可能な連携支援体制構築
Ⅶ: 妊産婦死亡登録事業からの自殺分析・提言と メンタルヘルス講習会企画
Ⅷ: メンタルヘルスケアのための研修会の開催
結果と考察
Ⅰ: データ収集が開始され、今年度約2,000症例が登録済みである。
Ⅱ: データ収集が開始され、今年度約900症例が登録済みである。
Ⅲ: 2,574人から回答を得た。妊健の自己負担がないものの割合は3%であった。妊健の自己負担額と都道府県ごとの合計特殊出生率は相関し、負担額が高いほど、出生率が低くなる傾向があった。出産一時金を差し引いて、実際医療機関に支払った費用に関して、自己負担がないものの割合は12%であった。妊健の自己負担同様、出産費用の自己負担額も都道府県ごとの合計特殊出生率と相関し、自己負担が高いほど、出生率が低いことが判明した。また子供の数、母体年齢、世帯年収で調整しても、出産費用の自己負担と出生率には負の相関があった。
妊健、出産費用に関しても、現在の公費負担が適切であるか見直すために今回の結果は重要なデータであると考えられる。
Ⅳ: 731施設(回答率33.9%)より回答を得られた。約95%の施設が社会的ハイリスク妊婦を把握することは重要であると回答した。SHPで困るのは行政との情報共有がスムーズに行かない点、時間的人員的負担がかかる点、妊婦の経済状況の問題が挙げられていた。
今後、社会的ハイリスク妊婦の抽出ツールを普及するとともに、分娩取扱施設と行政との連携をスムーズに行うための方策、費用の問題などについて、検討する必要がある。
Ⅴ: iOS 200ダウンロード、Android 14 ダウンロードされた。終了後アンケートには21人が回答。回答者は保健師が最も多かった。書籍とゲームの併用が最も有効とした。
Ⅵ: 90の行政機関(うち、子育て世代包括支援センター48機関)より回答(回収率81.8%)を得た。9割以上の母子保健主管課が精神疾患合併妊産婦、MHに不調のある妊産婦を支援していたが、在籍する専門職は保健師(100%)、助産師(75%)が多く、心理職(40%)、精神保健福祉士(29%)はやや少なかった。
当事者のニーズに寄り添った妊産婦MH支援に必要な医療・社会・福祉サービスは不足している。予算の拡大、専門的な人材育成、サービス利用手続きの簡略化・迅速化が必要である。
Ⅶ: 自殺者は妊娠前に精神疾患を罹患している例が多いことが明らかとなり、精神疾患を有することはリスクであると考える。
Ⅷ: 母と子のMH研修会を受講した、メールアドレスが確認されている者(1,042名)で、Googleフォームを用いたインターネット調査を行った。381名から回答を得ることができ(回収率36.6%)、回答者の内訳については、助産師(66.4%)、産科医(17.6%)、看護師(5.8%)、保健師(2.9%)、心理職(2.6%)となった。
多職種連携・地域連携および妊産婦のメンタルヘルスの現状把握については課題が残されており、これらの課題に対して重点的に取り組んでいく必要があると考える。
結論
研究結果は中間的ではあるものの、SHP、特定妊婦だけではなくローリスク妊娠全てにおいて妊産婦自身の経済的負担、医療・保健・福祉機関での人的資源の不足等が課題であることが示唆された。次世代の妊健の体制作り(必要な職種、人員、経済的支援等)のための実証的基礎データが得られる研究成果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-12-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2023-12-19
更新日
-

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収支報告書

文献番号
202207011Z