遺伝性難聴の根本的治療を目的とした内耳への多能性幹細胞移植療法の開発および安全性・有効性評価

文献情報

文献番号
200906018A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性難聴の根本的治療を目的とした内耳への多能性幹細胞移植療法の開発および安全性・有効性評価
課題番号
H21-再生・若手-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 和作(順天堂大学 医学部耳鼻咽喉科学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 美野輪治(理化学研究所筑波研究所)
  • 池田 勝久(順天堂大学医学部 耳鼻咽喉科学教室)
  • 飯塚 崇(順天堂大学医学部 耳鼻咽喉科学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性難聴は約1,600出生に1人と高頻度に発症し聴覚と言語発育障害の極めて高度なQOLの低下をもたらす。遺伝性難聴の根本的治療法は未だ存在しないが、我々は骨髄間葉系幹細胞を使って蝸牛線維細胞損傷モデルの聴力を改善させることに成功している。本研究では我々の開発した細胞移植法を応用し、遺伝性難聴の中で最も高頻度に発生するGjb2変異を持つ遺伝性難聴モデル動物の聴力回復実験により、新規治療法を開発することを目的とした。
研究方法
難聴モデル動物としては内耳特異的Cx26コンディショナルKOマウスをP0-Creトランスジェニックマウスとの交配により作製した。骨髄間葉系幹細胞は半規管の外リンパ液還流法によって内耳に投与し、聴性脳幹反応によってモニタリングした。蝸牛組織への幹細胞誘導因子を解析するため蝸牛コルチ器および外側壁組織のDNAマイクロアレイおよびRT-PCRによる遺伝子発現動態の解析を行った。これによりスクリーニングされた遺伝子をクローニングし、幹細胞誘導因子の発現制御細胞を作成するためのベクターを構築した。
結果と考察
Cx26の内耳特異的欠損マウスが完成し、同マウスが遺伝性難聴モデルとして最適な表現型を持つことが明らかとなった。遺伝性難聴モデルは蝸牛損傷モデルと異なり損傷修復のための細胞誘導がないため、単に間葉系幹細胞を移植するだけでは聴力回復に十分な細胞数は導入することは困難である。これを改善するため、蝸牛損傷の際の幹細胞誘導のメカニズムを解析し、幹細胞誘導に必要なケモカインとその受容体遺伝子をスクリーニングした。これを移植用の間葉系幹細胞に組み込んでケモカインとその受容体をそれぞれ発現制御できる細胞を樹立している。現在のところ既にベクター系は構築された。通常の間葉系幹細胞移植でも線維細胞に軽微損傷を与えて細胞導入効率を高めることに成功しているため、この効果を上記の遺伝子導入とその発現制御により更に効果を増強させることにより大量の幹細胞を蝸牛組織内に誘導することができると考えられる。
結論
本研究では、ヒト遺伝性難聴の新規治療法開発のための最適な遺伝子改変モデルマウスを開発した。さらに骨髄間葉系幹細胞のマウス内耳への導入法を改良し、蝸牛組織への細胞導入効率を飛躍的に高める方法を開発した。我々が開発したCx26遺伝子改変マウスに上記の細胞導入システムの効果を増強させて用いることにより、遺伝性難聴における正常細胞への細胞置換法が確立し、これまで不可能であった遺伝性難聴の聴力改善が徐々に現実化すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
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