HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究

文献情報

文献番号
202207004A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究
課題番号
20DA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 時田 章史(公益社団法人 日本小児科医会 公衆衛生委員会)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高 起良(大阪鉄道病院)
  • 井村 真澄(日本赤十字看護大学 大学院 看護学研究科 国際保健助産学専攻)
  • 三浦 清徳(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,040,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集と課題整理を行い、自治体と連携した支援体制の構築、および授乳指導の標準化の推進を目的とする。今年度は5. HTLV-1 母子感染予防に関する研修会の開催・研修資材の作成と2-2.東京ネットワークの運用と問題点の検討のための東京地区ネットワークの構築を推進すること、日本産婦人科学会ガイドラインとの整合性を取り、関連学会からパブリックコメントを求めるなどし、厚生労働省とも検討の上で、最終的なマニュアルを発出する。6.の改訂版母子感染予防マニュアルに対するパブリックコメントの収集、関連学会、厚生労働省との最終調整と事務連絡発出をおもな研究目的として取り上げ、合わせて今後のHTLV-1母子感染予防対策領域における課題の検討を行うことを目的とした。
研究方法
本研究推進のための5つの大課題のうち、今年度は残る下記の課題を実施した。
1.HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集、課題整理
新たにキャリア妊産婦の短期授乳に対する意識調査などを追加してHTLV-1 キャリア登録ウェブサイト「キャリねっと」を用いた授乳方法、相談支援体制についてのアンケート調査を継続して解析を行った。
2.自治体と連携したキャリア妊婦、家族の相談支援体制の検討
2-2)東京ネットワークの運用と問題点の検討 産婦人科、小児科、内科の連携システム東京ネットワーク(産婦人科拠点6施設、小児科16施設、内科拠点1施設)構築を行う。
2-4)内科側からの検討 日本HTLV-1学会登録医療機関の年次調査データの解析を継続し産婦人科領域との連携の実態を明らかにする。
4.HTLV-1 母子感染予防法の科学的エビデンスの収集と標準化した指導法の確立
昨年度作成した板橋班で作成されたHTLV-1母子感染予防マニュアルの改訂第2版の初稿をもとに関連学会からパブリックコメントを収集するとともに日本産科婦人科学会ガイドラインとのすり合わせを行い、改訂版マニュアルを完成し発出する。
5.HTLV-1 母子感染予防に関する研修会の開催・研修資材の作成
上記マニュアル附随のコンテンツを作成する。
結果と考察
短期授乳に関するキャリア妊産婦の意識調査では少しでも感染のリスクがあることはしたくないので、人工乳哺育にしたいと回答した妊産婦が約半数存在することが明らかになった。また児の抗体検査を実施したのは38.7%であったが、実施していない理由としてもっとも多かったのが、知らなかった、検査をする場所がなかったというもので、それぞれ全体の約40%を占めており、改めて児の抗体検査についての周知と体制整備を行ったうえで改めて議論すべきであることが明らかになった。東京ネットワークについては都内の15の総合周産期母子医療センターを中心にHTLV-1相談窓口となる基幹施設と東京小児科医会から相談窓口となる小児科クリニック21施設を選定し、東京プログラム参加施設群の構築を終えた。日本HTLV-1学会登録医療機関への周産期領域施設からの紹介数は今年度も低調で組織的な連携の取り組みを強化する必要があると考えられる。改訂版母子感染予防マニュアルに対して日本HTLV-1学会、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本小児科医会に対してパブリックコメントを収集、2023年改訂版日本産科婦人科学会産婦人科診療ガイドライン産科編とも文言の記載の整合性の確認を行い、最終版を完成した。さらに研修資材として同マニュアルに附属する動画コンテンツの作成を行った。今後の体制構築において特に重要な助産師に対する研修として日本助産師会における研修をオンデマンド講習も含めて2回開催した。
結論
今年度は残された研究課題に取り組んだ。ウェブ調査によりHTLV-1キャリア妊産婦のうち短期授乳であれば児の感染率が完全人工乳と比較して上昇しないのであれば短期間でも母乳を授乳したいと考えるHTLV-1キャリア妊産婦と、少しでもリスク回避するために完全人工乳を選択する妊産婦が相半ばすることを明らかにした。これらの点を踏まえた「厚生労働科学研究班による母子感染予防対策マニュアル(第2版)」では、原則として完全人工乳としつつ、母乳へ移行するための授乳支援体制が整備されているのを前提に90日未満の短期授乳を選択肢とあげ、関連各学会からパブリックコメントを得た上、日本産科婦人科学会の改訂ガイドラインとの整合性も確認して最終版として公開した。研修のための資材として、8つのテーマについて同マニュアル付録DVDコンテンツを作成した。周産期中核センターを中心とした連携体制構築のモデルシステムとして東京地区に東京プログラムを立ち上げた。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202207004B
報告書区分
総合
研究課題名
HTLV-1母子感染対策および支援体制の課題の検討と対策に関する研究
課題番号
20DA1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(国立大学法人東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 滋(国立大学法人富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 関沢 明彦(昭和大学 医学部 産婦人科学講座)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 時田 章史(公益社団法人 日本小児科医会 公衆衛生委員会)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 高 起良(大阪鉄道病院)
  • 井村 真澄(日本赤十字看護大学 大学院 看護学研究科 国際保健助産学専攻)
  • 三浦 清徳(長崎大学 医学部・歯学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HTLV-1母子感染予防の手段として授乳介入が有用であり、妊婦 HTLV-1 抗体検査が実施されている。2017年先行研究班である厚生労働行政推進調査事業「HTLV-1 母子感染予防に関するエビデンス創出のための研究(板橋班)」による改訂授乳指導マニュアルでは完全人工栄養を推奨(HTLV-1母子感染予防マニュアル)しているが、現場における栄養指導が必ずしも統一されていない可能性も推定され、さらに同班の調査では現状の対策が不十分とするキャリア経産婦が70%以上に及び、心理的なサポートまで含めた支援体制、キャリアとしての母親への相談体制が不十分であることが指摘されている。また、総合対策の推進体制の一環とされる都道府県母子感染対策協議会の状況についても必ずしも十分機能していない可能性が指摘されている。本研究は、これらの研究成果を踏まえ、HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集と課題整理を行い、自治体と連携した支援体制の構築、および授乳指導の標準化の推進を目的とする。
研究方法
以下の5つの課題を設定して研究を実施した。
1.HTLV-1 キャリア妊婦の現状・支援体制・ニーズに関する情報収集、課題整理 
1-1) HTLV-1キャリア登録ウェブサイト「キャリねっと」を用いたアンケート調査と分析
1-2)産婦人科医による授乳指導の実態調査
日本産婦人科医会の協力を得て産婦人科におけるHTLV-1キャリアマザーに対する授乳指導を含めた実態調査を実施する。
2.自治体と連携したキャリア妊婦、家族の相談支援体制の検討
2-1)東京地区の実態調査のため東京都の保健所を対象に実態調査を行う。
2-2)東京ネットワークの運用と問題点の検討
先行研究班(板橋班)で構築された連携システムである東京ネットワークの運用と実績の集計、連携会議の開催による課題の抽出を行う。
2-3)事例検討
神奈川県、大阪府、鹿児島県、長崎県、富山県をとりあげ、高浸淫地域、大都市圏、非浸淫地域ごとに先行事例の体制、課題などを明らかにする。
2-4)内科側からの検討
日本HTLV-1学会登録医療機関の年次調査データによる検討を行う。
3.児のフォローアップ体制の検討
4.HTLV-1 母子感染予防法のエビデンスの収集と標準化した指導法の確立/普及啓発
板橋班の成果をもとに標準化授乳指導法を確立する。産科婦人科学会のガイドラインの再検討を行う。
5.HTLV-1 母子感染予防に関する研修会の開催・研修資材の作成
結果と考察
ウェブサイトを用いたアンケート調査、産婦人科医会を対象とする調査により2017年以降も約20~30%のキャリア妊産婦が短期授乳を選択していること、完全人工乳を選択した妊産婦にもサポートが必要であることなどが明らかになった。高浸淫地域、非浸淫地域、大都市圏などの事例検討なども合わせ、児のサポート体制について必要な案件の検討も加えた。板橋班の研究により90日未満の短期授乳では完全人工乳に比べて児の感染率は上昇しないことが示された一方、短期授乳を選択したキャリア妊産婦の約20%は人工乳移行に失敗していること、1か月を超えて医療機関からの母乳ケアサポートを受けられているのは半数に過ぎず、これらの支援が短期授乳を選択肢にあげるうえでは必須であることを示した。これらの検討結果を元に厚生労働科学研究班版のHTLV-1母子感染予防対策マニュアルの改訂に取り組み、人工乳への移行を支援する体制が整っている場合に限り、短期授乳が選択肢となり得ることとした。マニュアルの内容については関連学会との合意のため、各学会からパブリックコメントを得て、特に日本産科婦人科学会診療ガイドラインとの整合性について繰り返し協議を行った上で合意を得た。併せてマニュアルに附属するコンテンツとしての動画資料の作成を行った。地域におけるHTLV-1キャリア妊産婦に対する連携体制構築のモデルとして東京地区で総合周産期母子医療センターを中核とする東京モデルを構築し、地域連携の課題の検討を開始した。内科領域を中心とする日本HTLV-1学会登録医療機関と周産期領域との連繋は十分とは言えず、より連携を活性化していく必要性が示された。
結論
2017年の厚生労働行政推進調査事業「HTLV-1 母子感染予防に関するエビデンス創出のための研究(板橋班)」による授乳指導マニュアルが作成後のHTLV-1キャリア妊産婦の現状・支援体制・ニーズに関して調査を実施し、課題を整理した。板橋班研究の結果を整理し、90日未満の短期授乳では完全人工乳と比較して児の感染率が上昇ないこと、短期授乳選択者のうち20~30%が人工乳に移行できずに長期の母乳哺育となっているなどの結果を踏まえてHTLV-1母子感染予防マニュアルの改訂を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-08-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202207004C

収支報告書

文献番号
202207004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,450,000円
(2)補助金確定額
10,450,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,243,832円
人件費・謝金 4,760,902円
旅費 174,366円
その他 1,860,900円
間接経費 2,410,000円
合計 10,450,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
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