ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来心臓細胞の分化誘導と移植医療応用に関する研究

文献情報

文献番号
200906004A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞由来心臓細胞の分化誘導と移植医療応用に関する研究
課題番号
H20-再生・一般-002
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
山下 潤(京都大学 再生医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 義(京都大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
36,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒトiPS細胞を用いた心臓再生治療の早期実現を目的とし、ヒトiPS細胞の心臓細胞(心筋および心筋前駆細胞)分化誘導法、誘導細胞純化法、純化細胞の移植法の開発、及び移植細胞の奇形腫形成、がん形成等に関する安全性の検討に関する研究を行う。
 昨年度の研究で、needle injectionによる移植ではin vivoで充分な正着が得られないことが明らかになり、本年度はそれに変わる移植法の開発を重点的に研究した。
研究方法
iPS細胞由来心筋細胞移植の前段階として、より心筋分化効率が高いマウスEMG7細胞(αMHC-EGFP transgenic EB5)を用いて研究を行った。既に発表した方法により、マウスES細胞から心筋細胞等への分化誘導を行い(Yamashita J et al. Nature 408: 92-6, 2000, Yamashita JK et al. FASEB J. 19: 1534-6, 2005)、温度感受性培養皿上で培養して心筋細胞シートを作製した。作製した心筋細胞シートをin vitroで積層化し、左前下行枝結紮により心筋梗塞を誘導した無胸腺ラット(F344/N Jcl-rnu/rnu)モデルに対して、梗塞部に貼付することで細胞移植を行った。移植後2週および4週目に心臓超音波および心臓カテーテル検査による生理学的心機能評価、病理組織学的評価を行った。
結果と考察
心筋細胞シートを貼付した群では、2週後、4週後のいずれにおいても心臓超音波検査によって左室収縮率の有意な改善が認められた。同様に心臓カテーテル検査によっても、左心室の収縮能の指標であるEmaxが有意に上昇することが明らかとなった。
 組織学的検討ではシリウスレッド染色による線維化部位の計測を行い、細胞シート貼付群で、梗塞部の繊維化領域の有意な縮小が認められた。
 また、移植後1週目の段階で梗塞巣に移植されたマウス心筋細胞の生着が確認された。現在、移植された細胞の経時的変化を検討中である。心機能改善メカニズムの検討も進めている。
結論
マウスES細胞から分化誘導させた心筋細胞等からなる細胞シートを作製した。このシートを用いてラット心筋梗塞モデルに対して、細胞移植を行い、in vivoで心機能改善効果が認められることを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-