文献情報
文献番号
202206016A
報告書区分
総括
研究課題名
医療用医薬品・医療機器等の供給情報を医療従事者等へ適切に提供するための情報システムの構築に向けた研究
課題番号
22CA2016
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
坂巻 弘之(神奈川県立保健福祉大学 大学院ヘルスイノベーション研究科)
研究分担者(所属機関)
- 林 昌洋(虎の門病院 薬剤部)
- 伊東 孝(岡山大学 新医療研究開発センター)
- 蛭田 修(熊本保健科学大学 品質保証・精度管理学共同研究講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
12,131,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、医療用医薬品について、原薬調達や製造体制等の問題により欠品や回収、出荷調整等(これらを一括して「供給不足」という)が発生し、医療の安定的な提供に支障を来す事案が多く発生している。また、医療機器については、新型コロナ下で一部の医療機器について需給のひっ迫が問題となった。海外の医薬品、医療機器の供給情報についてみると、医薬品については欧米各国で公的な情報提供が行われているが、医療機器については、COVID-19のもとで、米国連邦医薬食品局(FDA)サイトで一部の医療機器の供給不足情報提供が義務付けられた程度で、限定的と言える。
一方、我が国においては、医薬品、医療機器のいずれについても供給情報を一元的に把握できる仕組が存在していない。そこで、本研究において、医療用医薬品、医療機器の供給情報を一元的に把握できる情報提供サイトの構築を検討するために、医療関係者、企業を対象にアンケート調査を行った。また、医薬品の供給情報提供についての制度上の規定を、英米独仏加濠およびEUについてインターネット調査および企業へのヒアリング調査により明らかにすることとした。
一方、我が国においては、医薬品、医療機器のいずれについても供給情報を一元的に把握できる仕組が存在していない。そこで、本研究において、医療用医薬品、医療機器の供給情報を一元的に把握できる情報提供サイトの構築を検討するために、医療関係者、企業を対象にアンケート調査を行った。また、医薬品の供給情報提供についての制度上の規定を、英米独仏加濠およびEUについてインターネット調査および企業へのヒアリング調査により明らかにすることとした。
研究方法
医薬品調査では、医師、薬剤師(病院、薬局)、製薬企業についてはwebアンケート、医薬品卸についてはメールアンケート調査を実施した。医療機器では、病院内の医療関係者(依頼状発送先は医療機器安全管理責任者宛)、医療機器メーカーについてはwebアンケート、医療機器特約店についてはメールアンケート調査を実施した。それぞれ回答数は、医薬品調査においては、病院薬剤師347件、薬局薬剤師2362件、製薬企業178件、医薬品卸36件であり、医療機器調査では、病院の医療関係者400件、医療機器メーカー83件、医療機器特約店12件であった。
結果と考察
医薬品については、2022年度4月から9月(上半期)の供給不足状況についてみると、ジェネリック医薬品を中心に供給不足件数は極めて多く、特に、医薬品卸に大きな影響を与えていた。企業からの供給情報の提供と医療関係者とのニーズを比較すると、入手困難が発生した場合には、医療関係者の約半数が5営業日以内の情報提供を希望している一方で、企業の5営業日以内の情報提供は、約4割であり、よりタイムリーな情報提供の方法の検討が必要であると考えられた。医療関関係者の供給情報に関するニーズでは、「次の納品タイミングや供給可能量」「流通状況(他医療機関・薬局等)」など、流通に関するニーズが高く、卸を含む、情報提供・収集のあり方の検討が必要であった。医療関係者、製薬企業、医薬品卸のいずれも、より信頼性の高い公的サイトの構築が必要との意見が多かった。
一方、医療機器については、調査対象医療機器について、実際の供給不足は、2022年上期に、病院全体で37.5%が経験しており、供給不足に陥る可能性の連絡があったものも30.5%が経験していた。安定確保と適切な情報提供が医療関係者から求められているとの結果であった。
海外制度により、調査対象国では、いずれも供給情報提供について法的な裏付けがあるとともに、供給情報が医療に与える影響を分析するための仕組みも存在することが明らかとなった。
一方、医療機器については、調査対象医療機器について、実際の供給不足は、2022年上期に、病院全体で37.5%が経験しており、供給不足に陥る可能性の連絡があったものも30.5%が経験していた。安定確保と適切な情報提供が医療関係者から求められているとの結果であった。
海外制度により、調査対象国では、いずれも供給情報提供について法的な裏付けがあるとともに、供給情報が医療に与える影響を分析するための仕組みも存在することが明らかとなった。
結論
医薬品については、現在、供給不足が深刻な問題と言え、公的な情報提供が重要といえる。一方で、医療機関、薬局における代替薬も含めた必要以上の購入を避けるためのガイドライン作成も検討する必要があると考えられた。医療機器については、現在、メーカーから提供されている情報については、一部、医療関係者のニーズを満たしていないものもあるが、今後、メーカーからの情報提供の可能性を含め、供給情報提供のあり方については、さらなる検討が必要であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-06-26
更新日
-