水道システムにおけるカーボンニュートラル実現に向けた緩和策と気候変動影響に対する適応策の推進のための研究

文献情報

文献番号
202206007A
報告書区分
総括
研究課題名
水道システムにおけるカーボンニュートラル実現に向けた緩和策と気候変動影響に対する適応策の推進のための研究
課題番号
22CA2007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 浅田 安廣(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 酒井 宏治(東京都立大学 都市環境学部)
  • 下ヶ橋 雅樹(叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部)
  • 真砂 佳史(国立環境研究所 気候変動適応センター)
  • 三浦 尚之(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
11,934,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
水道分野では気候変動に関し温室効果ガスの排出を抑制する緩和とその影響に備える適応の両面からの対策が求められている。本研究では、①気候変動の緩和策、適応策に関する最新の知見・情報、事例の整理、②CO2削減ポテンシャルの推計の精緻化、③水災害による断水の予防策および対応策に関する検討、④気候変動に対する影響評価手法ならびに対策技術に関する調査、の4課題について検討した。
研究方法
水道分野等における気候変動への緩和策、適応策について、国内外の研究、報告書、学会発表、ウェブサイト、聞き取り等を基に整理した。各情報の内容は、整理表により取りまとめた。7水道事業体の7浄水場について、データや情報を入手し、現状の電力使用量の把握やCO2削減ポテンシャルの推計を行った。CO2削減の対策として、「管理強化、運用見直し」、「設備改善、設備付加」(ポンプのインバータ化等)、「プロセスの変更、高効率機器の導入」、「再生可能エネルギーの導入」(太陽光発電、小水力発電)を採り上げた。同一流域に属する水道事業体の連携による、水災害起因の断水被害の予防・抑制について、近年水災害に起因して断水を経験した事業体を対象に文献調査と、聞取り調査を中心とした現地調査を行った。現地調査では主に聞取り調査、施設の視察を行った。聞取り調査に先立ち、ヒアリングリストを作成し、調査対象事業体に事前に送付し、その回答に基づき聞取り調査を実施した。水道事業体が気候変動への適応に関する計画等を策定するために、様々な分野で取り組まれている影響評価や対策事例について取りまとめた。
結果と考察
気候変動の緩和策、適応策に関する事例、文献調査では、緩和策については、国内外の水道事業体の事例(省エネルギー、再生可能エネルギーの導入等)、エネルギー政策等に関して39の整理表にまとめた。水災害への対応に関しては4つ(水道、下水道)の整理表に、気候変動に対する水質、災害、水道等を対象とした将来予測、影響評価、および検知技術に関しては34の整理表にまとめた。モデル事業体の電力消費量の現状を整理し、各事業体に対して削減策を選定し、電力消費の削減ポテンシャルを推計した。さらに、CO2削減ポテンシャルを算出した。検討結果を踏まえ、情報収集から削減ポテンシャルの推計方法までの手順を整理し、提示した。調査対象地方における断水要因の傾向等を解析し、東北地方の阿武隈川流域の宮城県丸森町、福島県二本松市、田村市、福島県郡山市、九州地方の筑後川流域の大分県日田市、玖珠町、九重町、福岡県東峰村を対象に選定した。令和4年台風第15号で大規模な断水が発生した静岡県静岡市も対象とした。水災害に起因した断水への予防策としては、バックアップ機能の強化等による施設被害発生時の影響を最小化する対策の有効性が示唆された。また、都道府県や日本水道協会の支部長都市等が中心となり小規模事業体を含めた合同研修の実施等による地域的な災害対応力の強化の必要性が考えられた。事業体の連携により、これら施策へ取り組むとともに、国や都道府県においてはこれらを支援していくことが望まれる。特に国には、関連する補助制度の拡充、見直し等による財政的な支援が求められる。気候変動影響評価や適応策の評価に用いる気候シナリオは、気候シナリオデータセット2022に掲載されているデータセットを中心に、各データセットの特徴を踏まえて選択することが重要であると考えられた。特に水道事業への適用を考える上ではデータセットの中でダウンスケーリング(DS)が重要であり、実際に使用する際にはDS手法ごとに概要を整理し、各DSの特徴を理解し、予測すべき気象要素に適したDSデータを使用する必要があることを指摘した。水道事業体で影響評価を行う場合は、まず水量に関する評価を進め、その結果に基づき影響する水質項目を決定し、水質に関する評価を専門家とともに行うことが重要であると考えられた。また検知・予測技術では衛星データを活用した技術が発展しており、これらの技術を適用するためには対象地域での検証が必要であるが、将来的にこれらの技術を活用できる可能性が考えられた。
結論
緩和策、適応策に関する文献や事例として77の整理表にとりまとめた。これらは、水道事業体が、今後の取り組みを考える上で役立つ内容が多いと考えられた。モデル事業体について、CO2削減ポテンシャルの推計を行い、その結果を示すとともに、削減ポテンシャルの推計手順を示した。水災害起因の断水被害の予防・抑制について、事業体、都道府県、国等の立場から有効と考えられる対策を示した。水道事業体が気候変動への適応に関する計画等の策定に活用できると考えられる、気候シナリオのデータセット、予測モデル、検知技術について整理した。

公開日・更新日

公開日
2023-07-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202206007C

収支報告書

文献番号
202206007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,934,000円
(2)補助金確定額
11,934,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,239,158円
人件費・謝金 265,367円
旅費 1,095,538円
その他 7,305,114円
間接経費 0円
合計 11,905,177円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-07-21
更新日
-