栄養に関する世界的な潮流及び主要国における栄養関連施策の分析と課題抽出のための研究

文献情報

文献番号
202205005A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養に関する世界的な潮流及び主要国における栄養関連施策の分析と課題抽出のための研究
課題番号
22BA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
和田 安代(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 児玉 知子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 須藤 紀子(お茶の水女子大学 基幹研究院)
  • 中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 野村 真利香(国立開発研究法人医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター)
  • 坂元 晴香(東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題解決推進のための行政施策に関する研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東京栄養サミットでは、①健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)への統合、②食:健康的で持続可能な食料システムの構築、③強靭性:脆弱な状況下における栄養不良対策、④説明責任:データに基づくモニタリング、⑤財政:栄養改善のための財源確保の5つのテーマで議論され、215のステークホルダーからのエンドースを得て「東京栄養宣言」を発出、栄養改善に向けて国際社会が今後取り組むべき方向性を示した。さらに、396のコミットメントが発表されたが、世界の栄養改善に向けた流れをさらに促進するためには、各国の栄養政策を十分に理解した上で、わが国がどのように貢献できるかを検討する必要がある。本研究では、①主に先進国の栄養政策に関する実態把握と課題抽出、②世界各国と日本の栄養政策や課題についての比較、③栄養関連国際会議におけるコミットメント表明までのプロセス分析と課題抽出、④SDGs達成に必要なステークホルダーのコミットメント確保に関する方法論の開発と日本の強みを生かした貢献策を明らかにすることを目的とし、最終的には世界の栄養問題の解決へ向けて日本がなし得る具体的な貢献を提言することを目標とする。
研究方法
1) 東京栄養宣言の主要テーマを切り口とした日本とG7諸国の栄養政策の比較
G7諸国のほか、特筆すべき栄養政策が行われている国を対象とし、各国政府のホームページ、研究論文を中心に情報収集した。
2) WPRO Nutrition Country Profile Dashboardフレームワークを用いた日本の栄養政策の現状分析
WPRO栄養国別プロファイル・ダッシュボードに掲載されているWPRO加盟国の栄養政策・プログラムをマトリックス化して傾向を分析した。
3) 東京栄養サミットにおけるコミットメントおよび東京栄養宣言に対するエンドースに関する分析
東京栄養サミットのコミットメントおよび東京栄養宣言に対するエンドースに関する分析を行った。
4) グローバルヘルスアジェンダを推進するための政治プロセスの分析に関する研究
日本がG7伊勢志摩サミットの議長国を務めた際に、主要アジェンダの1つとして打ち出したUHCに焦点を当て、成功要因を分析した。
5) 栄養政策と健康課題についての国際比較およびSDGs達成に必要なステークホルダーのコミットメント確保に関する方法論の開発
栄養政策や課題について、先進国における栄養政策に関する情報収集を行い、生活習慣病対策状況および食環境・食品規制等の動向把握等を行った。
6) アジアの栄養改善を担う人材の教育、養成と栄養士制度の確立の支援を目的にした社会的実装研究
日本栄養士会は、東京栄養サミットにおいて、アジアを中心に持続可能な栄養改善を進めるべき人材養成の支援をコミットメントし、それらの現状の課題や進め方を検討した。
結果と考察
1) 日本では自治体における母子保健事業の中で栄養のUHCへの統合が行われているが、米国ではハイリスク・アプローチの中での栄養教育にとどまっていた。日本、フランス、ドイツ、カナダ、オランダ、スイスの食生活指針には「健康的で持続可能な食料システムの構築」の視点が含まれていた。
2) 日本の特徴は、栄養を国家アジェンダとして位置づけながら、母子栄養や公衆衛生サービスとして充実させている一方で、食品マーケティングや食品の価格統制・課税は一貫して行っていないことが明らかとなった。
3) 東京栄養サミットのエンドースおよびコミットメントに関する特徴に関して、G7では、イタリアのみがそれらを表明しておらず、WPROに関しては、16%の国が表明していた。企業等は、日本の企業等が75%を占め、製造業が最も多かった。
4) 日本はG7伊勢志摩サミット等のハイレベルな会議を開催した。UHCの事例を参考に、Shiffmanのカテゴリーの各要素を栄養領域においてどのように高めていくことができるのかの検証が必要となる。
5) 米国・英国・カナダでは、科学的エビデンスを基に健康的な食生活ガイドを提供しており、独自の取組を展開していた。EUは世界に先駆けてNCDs対策に取り組んでおり、食品ラベルの改善、責任あるマーケティングと表示、身体活動の促進などに関する取り組みを推進していた。
6) 日本の支援により、ベトナムでは管理栄養士養成課程を有する大学が9校に拡大し、職業コードの設置、病院への配置基準の策定、ベトナム栄養士会の設立まで発展した。しかし、国家資格の導入、関係施設への配置義務、他職種との役割分担、学校給食や行政への未配置、等の課題が存在していた。
結論
世界の栄養問題の解決へ向けて日本がなし得る具体的な貢献を提言することを目標とするためのあらゆる角度からの研究となった。

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-08-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202205005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,500,000円
(2)補助金確定額
4,897,000円
差引額 [(1)-(2)]
603,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,043,199円
人件費・謝金 1,133,843円
旅費 917,272円
その他 1,802,849円
間接経費 0円
合計 4,897,163円

備考

備考
自己資金:163円

公開日・更新日

公開日
2023-12-20
更新日
-