医療・介護分野におけるインクルージョン・テクノロジーの体系化のための研究

文献情報

文献番号
202203015A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護分野におけるインクルージョン・テクノロジーの体系化のための研究
課題番号
22AC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
阿久津 靖子(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院 患者支援部)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 琴子(能川 琴子)(千葉大学 医学部附属病院 患者支援部)
  • 小林 宏気(SOMPOケア株式会社 egaku事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,830,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢者向け(障がい者を一部含む)を中心としたインクルージョンテクノロジーについて、国内外で活用されている製品・サービスを抽出し、テクノロジーを取り巻く社会情勢の変遷や近年の開発の傾向を踏まえ、その将来展望について体系的に捉えることを目的とした。具体的には、①活用が期待されるインクルージョンテクノロジーをリストアップする、②テクノロジーの変遷を整理する、③テクノロジーの評価に関する研究実態と研究傾向やトレンドの変遷を整理する、④近年のAging Technologyの傾向やトレンドを明らかにする、⑤実用化に向け、テクノロジーを時系列でマッピングする、⑥テクノロジーの実装プロセスおよび評価方法についての状況を把握する、⑦現場導入を目指したフレームワーク作成のため、評価および導入プロセスを体系化する、という段階を経て研究に取り組んだ。
研究方法
研究協力者の研究拠点である 4ヶ国(カナダ、デンマーク、マレーシア、日本)を中心に、国内外のインクルージョンテクノロジーの評価指標に関する知見を集積し、国際比較を通して、テクノロジーの開発、実証、普及、評価におけるフレームワークの提案を目指した。特に、評価のプロセスに焦点を当て、文献検討・資料調査および現地視察・調査を実施した。なお、倫理的配慮について、本研究はテクノロジーおよび評価方法についての調査研究であり、研究対象者に対する人権擁護上の特段の配慮や、不利益・危険性の排除、説明と同意についての特段の配慮は必要としないと判断した。
結果と考察
高齢者が自立的な生活を目指して自らの意思で利用するものをアクティブ、高齢者の自立的な生活を取り巻く種々の環境を整備するものをパッシブの2つに大別し、インクルージョンテクノロジーの系譜を図示した。また、海外拠点(カナダ、デンマーク、マレーシア)におけるインクルージョンテクノロジーの普及にまつわる特徴を整理し、日本との比較分析より、我が国における将来的な課題とその解決策について考察した。我が国のインクルージョンテクノロジーの普及においては、①社会的・歴史的背景に由来する自立に対する価値観、②「自立支援」よりも「介護支援」に主軸を置くテクノロジーの開発傾向、③保険制度によるテクノロジー選択範囲の限界とテクノロジー・リテラシー教育の欠如、④インクルージョンテクノロジーに関する質的な評価研究の不足、⑤インクルージョンテクノロジーの評価プロセスが確立されていない、という5つの課題があることが示唆された。あわせて、インクルージョンテクノロジーの実装・普及におけるプロセスフローを図示し、<啓発・教育>と<マニュアル・プロセス化>の2つのフェーズに区分して、社会啓発・周知、利用者教育、導入、評価、開発の各プロセスにおいて必要とされる10の事項を整理した。さらに、インクルージョンテクノロジーの導入/普及を促進するマニュアル・ガイドライン作成の一助となるプロセスフローや必須項目・指標の具体例を提案した。
結論
高齢者を対象としたインクルージョンテクノロジーについて、海外拠点(カナダ、デンマーク、マレーシア)と日本の比較分析を通じ、その変遷と今後の展望、将来的な課題と解決策について考察した。インクルージョンテクノロジーの実装・普及を促進するために、<啓発・教育>として、①加齢・インクルージョン・well-beingに関する社会全体へのリテラシー教育、②高齢者・障がい者のテクノロジー・リテラシーの向上を前提とし、③現場の医療/介護職を対象としたテクノロジー教育、④福祉用具専門相談員・福祉用具プランナー等を対象とした継続的なテクノロジー教育(情報発信)が提供される環境を整備し、導入のプロセスを促進する。あわせて、評価のプロセスにおいては、⑤当事者・現場の医療/介護職・開発者等の全てのステークホルダーに対するデザイン思考に基づく開発手法の教育、評価コーディネーターの育成を進め、開発のプロセスにおいては、⑥開発者に対する利用者視点や現場のニーズを起点とした開発手法の教育が提供される環境を整備する必要がある。<マニュアル・プロセス化>として、⑦誰でもアクセスできるテクノロジーサイト・アプリを整備し、⑧現場の医療/介護職や管理者等を対象とした現場ニーズに即した導入のためのアセスメントマニュアル、⑨当事者・現場の医療/介護職・開発者等の全てのステークホルダーを交えた評価プロセスマニュアルの作成を進める必要がある。また、⑩評価をレビューできるテクノロジーサイトを整備し、利用者同士で様々なユーザー体験を共有できる場や、開発者が利用者の潜在的なニーズを発掘する場の創出が期待される。以上の取り組みが、利用者視点や現場のニーズを中心に据えたインクルージョンテクノロジーの普及に寄与することが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
2023-07-24

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
2023-07-24

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203015C

収支報告書

文献番号
202203015Z