ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究

文献情報

文献番号
202203008A
報告書区分
総括
研究課題名
ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究
課題番号
20AC1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 貴範(九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長室)
  • 吉田 真弓(一般財団法人医療情報システム開発センター ICT推進部)
  • 平松 達雄(国際医療福祉大学 医療情報部)
  • 飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 下川 能史(九州大学 脳神経外科)
  • 藤田 卓仙(慶應義塾大学 医学部)
  • 脇 嘉代(東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
個人健康医療情報と日常の生体情報を統合管理するPersonal Health Record(以下、PHR)は、超少子高齢社会の課題解決、患者主体医療(Patient Engagement)の推進、頻発する災害やパンデミック対策などの核心ツールとして期待されている。厚生労働省のデータヘルス集中改革プラン(2020年)や骨太の方針2022と医療DX推進本部の施策としての全国医療情報プラットフォームの創設にもPHRが含まれている。また、スマートシティ企画団体や自治体、各事業者との連携も活発になりつつある。その一方、PHRは電子カルテの黎明期と同様に標準化よりも商品化が先行しつつあり、データの相互運用性と構造化に課題を残している。これらの検討が不十分であると、PHR基盤やPHR事業者を変更する際に、データ移行が困難に陥り、個人の健康医療データの保存性が強く危惧される。その解決には、標準仕様の実装と臨床上のユースケース(以下、UC)の整備が不可欠である。つまり、各UCに必要な項目を臨床的に構造化データとして定義し、入力支援機能や患者側のIoT入力で補完することは、PHRに期待される有効な機能である。反対にUC策定と標準情報規格の適用を怠れば、PHRは自由文中心の電子カルテビューアに陥り、有効性とユーザビリティ、さらにはデータ保存性も欠く。
 本研究では、臨床上重要な疾患に対応し、相互運用性と保存性を確保したPHR基盤とPHRアプリケーション(以下、PHRアプリ)を開発する。また、ユースケースに対応した実証施設の利用者に使用してもらい、PHRアプリの操作性とデータの有効性を検証し、課題抽出とその解決を通したユーザビリティの向上が目的である。
研究方法
九州大学病院、国際医療福祉大学病院群の電子カルテ基盤を用いて実証実験を行う。またAMED・動的同意取得機能の研究の成果であるDynamic Consent(eConsentをさらに動的に行う機能)の備えるべき要件を用いて、MEDISにてその実装の検討と検証を行う。その上で、PHRの動的同意取得機能で個別同意の取得を行う。UC別の稼働率、活用回数、臨床指標への効果等の調査に加えて、患者・担当医アンケート調査を実施する。
結果と考察
2022年10月〜2023年3月末までに、120名(自治体実証・福岡市職員50名、病院実証・患者52名、薬局実証:患者18名)に対してPHRアプリケーションのインストールと実証体験の協力を得た。年齢範囲は24歳〜79歳(中央値53)であり、男性78名(女性42名)であった。被験者への研究概要と同意説明文の説明には動画を用いた。説明からインストールの時間は約30〜45分であり、インストール後にダイナミックコンセントによるオプトインの同意を取得した。
福岡市職員と病院患者についてPHRアプリのアクセス数について、自治体実証では特定健診結果、測定・全検査結果のアクセスが多く、病院実証は測定・全検査結果、自己測定登録、自己測定参照のアクセスが顕著であった。薬局実証では、患者が服薬状況を登録し、その状況を薬剤師によるWebビューアから服薬アドヒアランスを実施した。服薬状況確認シート(福岡市薬剤師会にて採用)を活用して実証前後で服薬スコアが20.76%の向上が認められた。一方で実証薬局7施設のうち6施設でお薬手帳QRコードが読み込めない事例が生じ、その原因としてJAHIS電子版お薬手帳 ver2.4に対応できていないことが分かった。
結論
相互運用性と保存性、標準仕様、UC策定を考慮したPHR基盤とPHRアプリケーションを用いて、2022年10月から実証実験を実施した。PHR基盤構築では、病院情報システム連携やマイナポータル申請、医療文書の運用について課題抽出ができ、実証実験ではPHR運用や電子版お薬手帳における課題が抽出できた。これらの成果と課題について、各学会、論文等にて報告予定である。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202203008B
報告書区分
総合
研究課題名
ユースケース・ベースのPHRサービスによるOpen FHIRと電子カルテの連携を目指すクラウド型医療連携プラットフォーム構築研究
課題番号
20AC1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中島 直樹(国立大学法人九州大学 大学病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山下 貴範(九州大学 病院 メディカル・インフォメーションセンター)
  • 山本 隆一(一般財団法人医療情報システム開発センター 理事長室)
  • 吉田 真弓(一般財団法人医療情報システム開発センター ICT推進部)
  • 平松 達雄(国際医療福祉大学 医療情報部)
  • 飯原 弘二(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 下川 能史(九州大学 脳神経外科)
  • 藤田 卓仙(慶應義塾大学 医学部)
  • 脇 嘉代(東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療施設や健診施設で発生した個人の健康医療情報と日常の生体情報を統合管理するPersonal Health Record(以下、PHR)は、超少子高齢社会の課題解決、患者主体医療の推進、災害やパンデミック対策などの核心ツールとして期待されている。厚生労働省のデータヘルス集中改革プラン(2020年)から骨太の方針2022や医療DX推進本部の施策(2022)に引き継ぐ全国医療情報プラットフォームの創設にもPHRが含まれている。その一方で、PHRは21世紀初頭の電子カルテの黎明期と同様に、現在は標準化よりも商品化が先行しつつあり、データの相互運用性と構造化に課題を残している。これらの検討が不十分であると、相互運用性が失われ、患者/市民などの利用者がPHR事業者を変更する際に、個人の健康医療データの保存性・継続性が強く危惧される。その解決には、日本における標準仕様の実装と臨床上のユースケース(以下、UC)の整備が不可欠である。反対にUC策定と標準情報規格の適用を怠れば、PHRは自由文中心のビューアに陥り、有効性とユーザビリティ、さらにはデータ保存性も欠く。データの二次利用にも不利となろう。そこで本研究では、臨床上重要な疾患に対応し、相互運用性と保存性を確保したPHR基盤とPHRアプリケーション(以下、PHRアプリ)を開発する。また、ユースケースに対応した実証施設の利用者に使用してもらい、PHRアプリの操作性とデータの有効性を検証し、課題抽出とその解決を通したユーザビリティの向上を目的とする。
研究方法
PHR基盤は、前研究で構築した基盤を国際標準規格であるHL7 FHIRで再構築し、PHRアプリと病院電子カルテを連携した。病院検査結果と医療文書の連携は、FHIR JP Core実装ガイドに準拠し、特定健診結果の取得はマイナポータルのAPI連携を申請する。PHRアプリは、疾患別UCと疾患非特異UCを開発し、PHR利用者の同意の下で医療者や家族が情報を閲覧できるWebビューアを開発する。自治体実証では、対象職員の2021年から過去5年分の特定健診情報を同意に基づき保険者から入手し、PHR基盤にアップロードし、マイナポータル連携に先んじて特定健診情報の確認とPHR 推奨設定の体験とする。病院実証では、主に病院検査結果の閲覧と自己測定、PHR 推奨設定の体験とした。薬局実証では、服薬アドヒアランスの向上を目的として、電子版お薬手帳への薬剤情報登録と医療者ビューアを用いる。実証後、利用者に対してPHR評価と健康管理についてアンケート調査を行う。
結果と考察
PHR基盤のFHIR置換とFHIR連携のインターフェイス、PHRアプリを開発し、実証実験を行なった。病院電子カルテデータの連携について、FHIRリソースのマッピング作業やJLAC10登録に時間を要した。またデータ連携の利用者間違いを防ぐために、FHIR認可サーバへ利用者を登録した。マイナポータル連携からの特定健診情報は、一部の利用者により閲覧できないことが判明し、その原因は各保険者により支払基金にデータ登録するタイミングが異なるためと判明した。データの有用性を考えると登録タイミングの検討が行政レベルで必要である。またマイナポータルAPI連携は、PHR研究事業として初であった。お薬手帳では、登録用QRコードに対応できていない薬局システムがあることの課題が抽出された。2023年1月より電子処方箋が開始されたが、PHRの薬剤情報のデータ源については検討が必要である。
診療情報提供書と退院時サマリーは、病院運用やベンダーのパッケージに依存しており、FHIR叙述セクションで対応せざるを得ない項目があった。今後FHIRによる文書の病院間流通が始まれば、医療文書運用の標準化は課題となるだろう。ダイナミックコンセントは、有用性を確認できた。倫理性の高い同意取得やデータの商用利用などまでの幅広い利用としての活用が期待できる。
 利用者の評価として、自身の健康増進のために積極的に病院検査や特定健診情報、薬剤情報を活用できること、服薬管理は、患者自身の服薬アドヒアランス向上と医療者と家族による状況把握による安心感を得ることができた。今後、健康情報の共有意識について深掘りする予定である。
結論
国の政策(データヘルス集中改革プラン、骨太の方針2022)に対応した相互運用性と保存性、標準仕様、UC策定を考慮したPHR基盤とアプリを開発し、実証実験を実施。そして国が進める全国医療情報プラットフォームやマイナポータル、電子処方箋等に関連した実証ができ、有用な結果と課題を抽出できた。なお今回の評価を通して、関連団体と連携し社会実装に向けたPHR基盤の発展と、PHR業界の健全な発展により国民の健康増進への寄与を期待したい。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203008C

収支報告書

文献番号
202203008Z