次世代医療情報交換標準規格FHIRを用いたPHR統一プラットフォームの開発

文献情報

文献番号
202203007A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代医療情報交換標準規格FHIRを用いたPHR統一プラットフォームの開発
課題番号
20AC1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中山 雅晴(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在Personal Health Record(PHR)は民間企業ベースのサービスに基づいた日々の健康情報の蓄積が一般的であるが、本来健診や採血検査結果、処方データなど医療機関における臨床情報を共有し、個人の生活情報と紐付け、健康増進や疾患増悪防止に役立てることが理想である。それが可能となれば、PHRを介した生涯にわたる個人データが一元管理されることとなり、より有効な臨床データとしての2次活用も期待される。そこで本研究では、次世代医療情報交換標準規格FHIRを用いた互換性の確立と対象データの拡張を進め、PHRの統一プラットフォームを構築することを目的とする。
研究方法
令和4年度
 画像データや新規項目の追加など、PHRとして扱うデータの種類を増やし、処方箋QRコード対応など、データを効率よく入力するためのツールも追加した。加えて、汎用クラウドにおけるシステムの互換性を検討し、それぞれの差異を明らかにした。
令和5年度
 介護に関しての検討が必要と考え、備えるべき機能について介護施設職員へヒアリングし、実装した。
結果と考察
令和3年度までの機能に加え、以下を実装した。
1) 汎用クラウドサービスにおける互換性の検討
これまでInter Systems社IRIS Health(以下、IRIS)を利用してFHIRリポジトリを構築し、PHRアプリケーションに適用してきた。令和4年度に、クラウド環境Amazon FHIR Works on AWS、Google Cloud Healthcare API、Microsoft Azure Health Data ServicesのFHIRリポジトリサービスを用いて、我々が開発してきたプラットフォームが特定の製品及びサービスに依存せずに機能するかを検証した。SS-MIX2から変換したFHIRデータをBundleリソースとしてリポジトリに格納。次に、格納されたデータにPHRからアクセスして、それぞれのFHIRサービスで動作するかを確認した。結果、概ね可能だが、様々な条件の差異があるので注意が必要であることがわかった。
2) OAuth2を用いた異なるPHR間のデータ連携
異なるPHR間におけるセキュアなデータ連携実現のために、IRISに内包されたサーバを利用して、OAuth認可サーバの構築を行った。これにより、異なるFHIRリソースサーバからデータを取得するために、該当するシステムにアクセスする認証・認可が可能になった。
3) 画像データのアップロードとFHIR規格での取り扱い
医療機関からのデジタル画像データを利用する機能を開発した。DICOM画像を患者ポータルからアップロードし、同時にFHIRリポジトリにImagingStudyリソースが登録され、最終的にPHR上にFHIRリポジトリを経由して、DICOMサーバの画像データがPHRアプリケーション上に表示される仕組みである。
4) カスタマイズ機能
今後収集するデータ項目を拡大するため、「拡張メニュー登録」というカスタマイズ機能を開発した。また、処方箋QRコードに対応し、処方された内服薬データを容易に取り込めるよう機能も追加した。
5) 介護情報共有機能
上記カスタマイズ機能を応用し、本アプリケーションを介護分野においても活用するための画面を作成した。項目は実際に介護事業者にヒアリングし、疾患名や介護度などの他に、介護従事者や家族で共有すべき情報である食事量、むせや嚥下の程度、転倒のリスク、排泄や入浴介助の現状などといった情報の入力と閲覧が望ましいとの意見から、それらを入力できるよう実装した。さらに、日々の変化の認識が把握しやすいよう日毎重要度によって色別表示する画面も作成した。
結論
PHRの機能改善と活用拡大を目指して、画像データや新規項目の追加など、取り扱うデータの種類を増やし、処方箋QRコード対応など、データを効率よく入力するためのツールも追加した。加えて、汎用クラウドにおけるシステム互換性を検討し、それぞれの差異も明らかにした。介護に関しては、令和5年度にようやく現場にヒアリングできたため、そこでの意見をもとに介護項目の入力、および重要度に応じた色別表示が可能な画面を作成し、当初の目的を果たすアプリケーションを開発した。これらによりFHIRベースのPHRアプリケーションの品質向上に寄与したと考えている。

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
2024-07-17

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-13
更新日
2024-07-17

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202203007B
報告書区分
総合
研究課題名
次世代医療情報交換標準規格FHIRを用いたPHR統一プラットフォームの開発
課題番号
20AC1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
中山 雅晴(国立大学法人 東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在Personal Health Record(PHR)は民間企業ベースのサービスに基づいた日々の健康情報の蓄積が一般的であるが、本来健診や採血検査結果、処方データなど医療機関における臨床情報を共有し、個人の生活情報と紐付け、健康増進や疾患増悪防止に役立てることが理想である。それが可能となれば、PHRを介した生涯にわたる個人データが一元管理されることとなり、より有効な臨床データとしての2次活用も期待される。そのためには多種多様なPHRにおいて、データ項目の標準化およびデータ送受信の互換性の担保が重要である。そこで本研究では、日本において複数の病院情報システム間の情報共有目的で頻用されるStandardized Structured Medical Information eXchange version 2 (SS-MIX2)を介したPHRによるデータ共有から開始し、その後次世代医療情報交換標準規格FHIRを用いた互換性の確立と対象データの拡張を進め、PHRの統一プラットフォームを構築することを目的とする。
研究方法
令和2年度
データ統合プラットフォームの構築にあたっては、みやぎ医療福祉情報ネットワーク(Miyagi Medical and Welfare Information Network: MMWIN)の基盤を活用し、MMWINおよびPHR活用双方に同意した患者データについてSS-MIX2からFHIR形式へのデータ変換を行った。さらに、対象データ項目を広げることやMMWIN以外でもPHRサービスを展開できるためのAPI開発を令和2年度内に着手した。これにより、医療データと個人データの双方向連携を開始し、PHR運用における現実的な課題を抽出した。過程においては、進捗を管理するとともに情報公開を図ることで広く多くの意見を集約することを心がけた。また、WAFの導入を始めとして、セキュリティ・監視運用フローを考慮しながら進めていった。
令和3年度
 令和2年度に行ったことを推し進め、SS-MIX2におけるデータおよびPHRで汎用されるデータ項目もFHIR形式として利用可能にした。マッピングについてはJP-Core V1との対比を行い、随時修正を加えた。特に循環器疾患患者に特異的なデータ項目に対応したFHIR準拠のアプリケーションを開発し、患者リクルートおよび実運用を展開した。利用者のフィードバックを得ることでPHRサービスとしての充実を図り、PHR運用における現実的な課題を挙げた。さらに、疾患予防や慢性疾患コントロールへの活用を検討した。
令和4年度
 それまでの残課題に対する対応を行った。画像データや新規項目の追加など、PHRとして扱うデータの種類を増やせるようにし、処方箋QRコード対応など、データを効率よく入力するためのツールも追加した。いずれもFHIRベースのPHRアプリケーションの品質向上に寄与する機能と考えている。加えて、汎用クラウドにおけるシステム互換性を検討し、それぞれの差異も明らかにした。
令和5年度
介護に関しての検討が必要と考え、備えるべき機能について介護施設職員へヒアリングし、実装した。
結果と考察
期間中に、目的としていた①SS-MIX2に保存されているデータ項目を表示するPHRアプリケーションの開発、②SS-MIX2に保存されているデータのFHIR形式への変換、③FHIR形式のデータを表示するPHRアプリケーションの開発、④臨床医が通常の診療に使うために必要なPHRにおける機能検討、⑤FHIRデータを交換する際に必要な認証・認可の検討、⑥PHRとして必要な項目の拡大、⑦汎用クラウドサービスにおける互換性の検討、⑧Oauth2を用いた異なるPHR間のデータ連携、⑨FHIRに基づいた画像データのアップロードおよびPHRにおける表示、⑩個別カスタマイズを許容する設定機能、⑪介護情報共有機能の拡大の全てを実現した。
結論
PHRとして扱うデータの種類を増やすための対応を行い、さらに、データを効率よく入力するためのツールも開発した。医療・介護いずれの項目にも対応し、超高齢社会において、患者の状態把握を本人、家族、および医療介護従事者が容易にできるよう、PHRアプリケーションの品質を向上させた。また、課題としていたOAuth連携や画像データの表示なども実現した。汎用クラウドにおける差異も示し、本研究における目的は全てクリアした。今後、FHIRを用いた情報交換ツールとして、本PHR活用の展開を試みる。

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202203007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新しい医療情報交換標準規格であるFHIRに注目し、SS-MIX2に保存された診療データの有効活用および個人の毎日の健康記録との統合をPHRの枠組みを用いて実現する基盤を構築した。SS-MIX2からFHIR形式へのデータ変換やPHRプロトタイプの作成についてはComput Meth Prog Bio誌に、統合した患者データの可視化についてはJ Med Syst誌にそれぞれ掲載され、その他についても現在論文投稿中だ。国際的にFHIR化が進行しており、本邦においてもその一端を担えたものと考えている。
臨床的観点からの成果
循環器疾患患者を対象にして、実臨床に用いることのできるPHRアプリケーションを開発した。日々の診療において、血圧などの記録を医師―患者間でPHRを介して情報共有しながら治療方針を決めていくことが可能である。介護情報の共有にも対応しており、超高齢社会における患者全体像の把握と、関連する医療介護スタッフおよび家族との円滑な情報連携が期待できる。本PHRアプリケーションを用いた臨床研究も実施され、論文投稿中であり、成果を広く伝えていく。
ガイドライン等の開発
FHIRの日本版プロファイルの策定やPHR普及におけるガイドラインの作成が進められており、FHIRを用いたPHRの実例として、今後寄与できる部分があれば提示したい。
その他行政的観点からの成果
現在は研究レベルであり、行政的観点上特記すべきことはない。
その他のインパクト
開発したPHRアプリケーションについて、第41回医療情報学連合大会(第22回日本医療情報学会学術大会)のシンポジウム(2021年11月20日)や第43回医療情報学連合大会(第24回日本医療情報学会学術大会)口演で発表し(2023年11月23日)、国際モダンホスピタルシヨウにおける小セミナーなどを行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Song C, Nakayama M.
Implementation of a Patient Summary Web Application According to the International Patient Summary and Validation in Common Use Cases in Japan.
J Med Syst , 47 (1) , 1-9  (2023)
10.1007/s10916-023-01993-6

公開日・更新日

公開日
2024-07-17
更新日
-

収支報告書

文献番号
202203007Z