主にアジアに蔓延するウイルス性肝疾患の制御に資する為の日米合作的肝炎ウイルス基礎研究

文献情報

文献番号
200904007A
報告書区分
総括
研究課題名
主にアジアに蔓延するウイルス性肝疾患の制御に資する為の日米合作的肝炎ウイルス基礎研究
課題番号
H21-国医・指定-007
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学 東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 脇田隆字(国立感染症研究所)
  • アクバルシェイクモハマドファズレ(東芝病院研究部)
  • 茶山一彰(広島大学医歯薬学総合研究科)
  • 金子周一(金沢大学医薬保健研究域医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
14,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御を目的とする。
研究方法
本研究は、1.基礎研究、2.米国研究者との研究協力、3.アジア諸国研究者との研究協力、及び4. 他組織とのシンポジウム共催という四つの部分から成る。
結果と考察
1. HIV/HCV、HIV/HBV重複感染の疫学・病理病態・治療について。
我が国のHIV感染症例の約20%がHCVに重複感染している。リバビリン併用ペグ・インターフェロン療法でHCV排除が得られた例は42例中15例(36%)であり、最近5年間に肝臓病により死亡する例が減少してきていることが明らかになった。一方、我が国のHIV感染症例の6.4%がHBVに重複感染していることが明らかになった。
2. HCVの培養細胞における複製増殖に重要なウイルスゲノム領域の解析をおこなった。
3. アジアの開発途上国では肝炎ウイルス、特にHBVが蔓延しており、また、HBVやHCVとHIVの共感染が広がっており、これは非常に大きな医療問題かつ社会問題となっている。今回の研究では、アジア(インドネシア、バングラデシュ)におけるウイルス肝炎の実態を調査した。
4. Genotype 1b型の急性重症C型肝炎患者の血清よりHCV全長クローン(HCV KT9)をクローニングした。このHCV KT9はコア領域のaa 70およびaa 91にそれぞれR70QおよびL91Mのアミノ酸変異を認め(Core-Mutant)、ISDRには変異を認めなかった。このクローンのコア領域のaa 70およびaa 91を野生型にもどしたクローン(Core-Wild)、あるいはISDRに4個の変異を挿入したクローンを作製し、ヒト肝細胞キメラマウスの肝臓内に投与したところHCV感染を惹起した。
5. B型慢性肝炎、C型慢性肝炎、関連肝細胞がんにおける発現遺伝子、micro-RNAを包括的に解析し、慢性肝炎および肝細胞がんの病態と発現遺伝子との関連を明らかにした。肝炎ウイルスの感染後に引き起こされるmicro-RNAの変動は、B型およびC型で大きく異なり、この変動は培養細胞においても臨床材料においても確認された。


結論
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御という目的のための研究は、予定通りに進捗した。アジアにおけるHIV-HBV/HCV重複感染症の現状と問題点が明らかになり、対策のポイントが日米両国において確認された。

公開日・更新日

公開日
2010-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200904007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アジアを中心とするB型肝炎、C型肝炎におけるウイルス遺伝子型、変異と病態との関連性、またウイルス肝炎におけるマイクロRNAとの関連性が明らかにされた。
臨床的観点からの成果
我が国におけるHIV/HCV、HIV/HBV重複感染の疫学と病態について明らかにされ、それをアジアの他地域と比較検討することができた。アジアの開発途上国では肝炎ウイルス、特にHBVが蔓延しており、また、HBVやHCVとHIVの共感染が広がっており、これは非常に大きな医療問題かつ社会問題となっている。アジア(インドネシア、バングラデシュ)におけるウイルス肝炎の実態が調査された。
ガイドライン等の開発
特になし。
その他行政的観点からの成果
我が国とアジア諸国におけるHIV感染症とB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスとの重複感染症の実態が明らかになり、現状を改善するためにとるべき方策の方向性が明らかにされた
その他のインパクト
アジア諸国の肝炎・肝癌の制御という目的のための研究は、予定通りに進捗した。アジアにおけるHIV-HBV/HCV重複感染症の現状と問題点が明らかになり、対策のポイントが日米両国において確認された。

発表件数

原著論文(和文)
46件
原著論文(英文等)
54件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
30件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hmwe SS, Aizakia H, Date T, et al.
Identification of hepatitis C virus genotype 2a replicon variants with reduced susceptibility to ribavirin
Antiviral Res  (2010)
原著論文2
Ishizaka N, Hongo M, Matsuzaki G, et al.
Effects of the AT(1) receptor blocker losartan and the calcium channel blocker benidipine on the accumulation of lipids in the kidney of a rat model of metabolic syndrome.
Hypertens Res  (2010)
原著論文3
Ishizaka N, Ishizaka Y, Toda E,
Impact of changes pn waist circumference and BMI over one-year period on serum lipid data in Japanese individuals.
J Atheroscler Thromb  (2010)
原著論文4
Moriya K, Miyoshi H, Tsutsumi T, et al.
Tacrolimus ameliorates metabolic disturbance and oxidative stress caused by hepatitis C virus core protein: Analysis using mouse model and cultured cells
Am J Pathol  (2009)
原著論文5
Tsutsumi T, Matsuda M, Aizaki H, et al.
Proteomics analysis of mitochondrial proteins reveals overexpression of a mitochondrial protein chaperone, prohibitin, in cells expressing hepatitis C virus core protein.
Hepatology  (2009)
原著論文6
Yotsuyanagi H, Kikuchi Y, Tsukada K, et al.
Chronic hepatitis C in patients coinfected with human immunodeficiency virus in Japan: a retrospective multicenter analysis.
Hepatol Res  (2009)
原著論文7
Hara H, Aizaki H, Matsuda M, et al.
Involvement of creatine kinase B in hepatitis C virus genome replication through interaction with the viral NS4A protein.
J Virol  (2009)
原著論文8
Hiraga N, Imamura M, Hatakeyama T, et al.
Absence of viral interference and different susceptibility to interferon between hepatitis B virus and hepatitis C virus in human hepatocyte chimeric mice.
J Hepatol  (2009)
原著論文9
Abe H, Ochi H, Maekawa T, et al.
Effects of structural variations of APOBEC3A and APOBEC3B genes in chronic hepatitis B virus infection.
Hepatol Res  (2009)
原著論文10
Saeed M, Suzuki R, Kondo M, et al.
Evaluation of hepatitis C virus core antigen assays in detecting recombinant viral antigens of various genotypes.
J Clin Microbiol  (2009)
原著論文11
Noguchi C, Imamura M, Tsuge M, et al.
G-to-A hypermutation in hepatitis B virus (HBV) and clinical course of patients with chronic HBV infection.
J Infect Dis  (2009)
原著論文12
Nabeshima Y, Tazuma S, Kanno K, et al.
Deletion of angiotensin II type I receptor reduces hepatic steatosis
J Hepatol  (2009)
原著論文13
Tsuji K, Kawakami Y, Aimitsu S, et al.
Predicting the response to 48-week combination therapy with peginterferon alpha-2b plus ribavirin from the estimated HCV RNA load index after negative serum change in genotype 1b hepatitis C patients
Hepatol Res  (2009)
原著論文14
Tsukada H, Ochi H, Maekawa T, et al.
A Polymorphism in MAPKAPK3 Affects Response to Interferon Therapy for Chronic Hepatitis C.
Gastroenterology  (2009)
原著論文15
S Ura, M Honda, T Yamashita, et al.
Differential microRNA expression between hepatitis B and hepatitis C leading disease progression to hepatocellular carcinoma.
Hepatology  (2009)
原著論文16
T Yamashita, M Honda, H Takatori, et al.
Activation of lipogenic pathway correlates with cell proliferation and poor prognosis in hepatocellular carcinoma.
J Hepatology  (2009)
原著論文17
Moriya K, Miyoshi H, Shinzawa S, et al.
Hepatitis C virus core protein compromises iron-induced activation of antioxidants in mice and HepG2 cells.
J Med Virol  (2010)
原著論文18


公開日・更新日

公開日
2015-06-05
更新日
-