タスクシフトによる医師労働時間短縮効果と医療機関経営上の影響に関する研究

文献情報

文献番号
202201007A
報告書区分
総括
研究課題名
タスクシフトによる医師労働時間短縮効果と医療機関経営上の影響に関する研究
課題番号
21AA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 耕(国立大学法人一橋大学 大学院経営管理研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 阪口 博政(金沢大学 経済学経営学系)
  • 吉村 長久(京都大学 医学研究科 眼科学)
  • 内藤 嘉之(社会医療法人愛仁会 高槻病院)
  • 齊藤 健一(京都大学 医学研究科 附属医療DX教育研究センター)
  • 平木 秀輔(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,588,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医師の労働時間短縮を進める方法の一つとしてタスクシフトの推進が課題となっているが、短期的にはコスト増と認識されがちなタスクシフトに医療機関が積極的に取り組むことに躊躇せざるを得ない状況がある。そのため、費用対効果が大きいタスクシフトを明らかにすることは極めて重要となっているが、従来、タスクシフト種類ごとの費用対効果分析の方法論は確立されていない。そこで本研究では、昨年度、そのための暫定的な方法論を構築した。本年度の研究では、この暫定的に構築した方法論を実際にいくつかの医療機関で実践することを通じて、より現実的に利用可能な方法論として改善していくことを目的とする。また、より多くの医療機関での適用研究を通じて、暫定的方法論に基づく費用対効果分析の展開可能性を検証することも目的とする。
研究方法
以上の研究目的を達成するために、本研究では4つの調査を用いた。実地病院調査では、3つの医療機関において、暫定的に構築された方法論に基づくデータの収集や方法の検証を行うこととした。また試行収集分析調査では、暫定的に構築した方法論に必要なデータを多数の病院から収集するのに先立って、収集上の課題を把握するため、まず数病院から関連データを収集することにした。また収集したデータを活用して、暫定的な方法論に基づき、実際に費用対効果分析を試行することにした。さらにアンケート調査では、1,086病院を対象に、タスクシフトに伴う業務マニュアル作成や教育研修にかかる業務時間や費用についてアンケート調査を実施した。加えてインタビュー調査では、タスクシフトに関わる質的状況の把握のために、非二次・三次救急病院群を対象として実施した。
結果と考察
実地病院調査においては、東京医科歯科大学病院では、暫定的に構築した方法論に基づいたデータ収集様式に沿って、放射線部門内のモダリティごとに、各対象業務のシフトに伴うマニュアル作成及び研修に関わる人的資源の投入状況や発生件数・業務所要時間を把握することができ、昨年度に構築した暫定的方法論の妥当性が検証できた。また愛仁会グループ3病院では、妊婦健診や保健指導といった業務の助産師へのシフトに関して、暫定的な方法論に沿って業務所要時間や教育研修について調査し、昨年度構築した方法に必要なデータの収集が可能であることが確認できた。さらに北野病院では、暫定的な方法論において不可欠なシフト業務の月間発生件数の収集方法として診療報酬請求データを活用することを検討し、実際に抽出し、通常の院内での医事統計作成と同様の工数で実施できることが確認できた。
また暫定的な方法論に基づく分析に必要な諸データを多くの病院から収集する上での課題を7病院対象の試行収集調査により把握することができた。本年度および次年度の多数の病院を対象とした調査における調査票の作成に際して記載方法の工夫が必要な具体的な諸課題などが明らかとなった。また試行的な分析の結果、シフト業務によって、経営上の負荷と医師時短効果による費用対効果に違いがあることが明らかとなり、費用対効果分析を通じて、経営負荷が小さく時短効果の大きいタスクシフトから優先的に実践していくことを促すことに、意義があることが確認された。
さらにアンケート調査を通じて、開設主体の観点からも病床規模の観点からも多様な480病院から、優先的に分析対象とすべき19種類業務の内で各病院で実施しているシフト対象業務ごとに、タスクシフトに伴う技術的な初期費用に関連する諸データが収集できた(回収率44.2%)。そのため、次年度において多数病院を対象とした費用対効果分析を実施検証するうえで、分析対象病院数の観点からも、分析対象病院の多様性の観点からも、十分なデータを収集することができた。
加えてインタビュー調査により、非救急病院では、医師業務のシフトの必要性が相対的に低く、その一方で移管先職種の人員確保がより困難な状況が確認された。またタスクシフトの推進に向けては、病院としての対応策推進という視点よりも、社会的な施策の取り込みが期待されていた。
結論
昨年度の研究により暫定的に構築された方法論について、3病院での実地調査を通じて検証しつつ、より現実的に利用可能な方法も検討できた。また多数病院からのデータ収集の取り組みに先立ち、7病院からの試行的なデータ収集により課題を明らかにするとともに、収集データにより費用対効果分析も試行できた。さらにアンケート調査により、480病院からデータを収集できた。加えてインタビュー調査では、非二次・三次救急5病院での詳細な実態を把握できた。令和4年度において実施すべき調査研究はすべて実施され、令和5年度の調査研究においてその成果を利用してさらなる調査研究を実施するための基盤ができた。

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202201007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,464,000円
(2)補助金確定額
11,517,000円
差引額 [(1)-(2)]
947,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,097,026円
人件費・謝金 1,344,400円
旅費 501,150円
その他 4,698,524円
間接経費 2,876,000円
合計 11,517,100円

備考

備考
自己資金100円

公開日・更新日

公開日
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更新日
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