高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進に係る検証のための研究

文献情報

文献番号
202201005A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進に係る検証のための研究
課題番号
20AA2006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐室)
  • 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
  • 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,935,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2年度から始まった「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」の実施市町村割合は、2年度は全国1,741市町村のうち21%であったが、3年度は46%、4年度は62%と年々増加、6年度の全国実施に向けて進んでいる。一方、事業を開始はしたものの、実施体制の構築、保健事業の実施方法、事業評価などに課題を感じている市町村が少なくない。
本事業をより効果的・効率的に実施していくためには、科学的根拠に基づく現場に即した方法の提示、広域連合や市町村に役立つツールや解説書の提供、研修の充実、事業評価方法の確立等が求められている。
本研究では ① 後期高齢者の質問票の検証、② 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の事業検証、③ 高齢者の保健事業プログラムの進捗に向けたマニュアル・研修資材等の開発、④ 保健事業対象者の抽出方法の検討、⑤ 高齢者の保健事業の企画、実施、評価のサポートとなる実践支援ツールの開発等を実施、一体的実施の推進に寄与することを目的として研究を実施した。
研究方法
①後期高齢者の質問票の検証:7つ研究フィールドにおいて質問票による調査を実施し、断面調査での指標間の関連、追跡調査による要介護状態との関連、有疾患者における質問票の妥当性の検討など、テーマを定めて調査を行った。
②高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の検証:研究班作成の「進捗チェックリストガイド」に基づき実施状況について自己評価してもらい、自治体規模別の課題等の分析をおこなった。また、低栄養高齢者の栄養相談により医療費の推移を検討した。
③、⓸「一体的実施・KDB活用支援ツール」のCSVデータを用いた事業フロー、研修資材の作成と評価:各取組(栄養、口腔、服薬、身体的フレイル、重症化予防、健康状態不明者)別に、一体的実施・KDB活用支援ツールから得られるCSVデータをもとにした事業展開方法についてフロー図を作成、1広域4自治体のデモデータをもとに、対象人数を試算した。保健事業のポイントについて動画を作成した。
⑤「一体的実施・実践支援ツール」の開発と解説書作成:CSV情報を二次加工して対象者の全体像の見える化、配慮すべき疾患(認知症や脳卒中等の状況)、絞り込み条件に合わせたリストや個票作成、事業評価(進捗管理とアウトプット評価)ができる実践支援ツールを開発した。
結果と考察
① 各分担研究にて後期高齢者の質問票の妥当性を検証、構成概念妥当性、フレイルや口腔所見との関連、医療費や要介護認定との関連などの知見が集積した。健診、通いの場、慢性疾患診療の場面で検証されたが、4項目以上該当で要介護リスクが高まることが一致した。
② 一体的実施の事業進捗チェックリストに基づいた各段階における達成状況をみると、大規模自治体では地区別の細やかな分析・推進に困難感があること、小規模自治体では対象選定基準や目標設定に関する迷いやマンパワー・時間の確保に関する困難が挙げられた。低栄養、身体的フレイル、口腔の各保健事業の事業検証では、質問票の回答の改善だけでなく、要介護認定、医療費等の抑制の可能性が示された。
③・④tツールデータの活用状況を、2023年11~12月に厚生労働省が実施した、一体的実施実施状況調査(悉皆調査)で確認した。「ツールを用いてデータを抽出、活用している」のは591市町村(34%)、抽出したデータの提供を受けて活用している53市町村(3%)と調査時点での活用は約4割であった。
⑤ ④のCSVデータから簡単に対象者の選定、評価ができる二次加工ツールを開発、解説書を作成した。性・年齢階級別集計、重複状況、事業フローに合わせたリスト作成、個別管理表、データヘルス計画に活用できる機能を盛り込んだ。
結論
質問票についてのエビデンスを蓄積し活用法を提示した。保健事業での有効な活用が期待される。自治体の規模別に課題が異なっており、市町村に合わせた支援が必要と考えられた。本研究班の成果物として「進捗チェックリストガイド」、「抽出条件の考え方と保健事業への活用」、「実践支援ツールの保健事業への活用」の三部作を作成、これらを活用することにより、一体的実施の全国的な広がりに寄与する可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202201005B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施推進に係る検証のための研究
課題番号
20AA2006
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
津下 一代(丹羽 一代)(女子栄養大学 栄養学部)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島 勝矢(国立大学法人 東京大学 高齢社会総合研究機構/未来ビジョン研究センター)
  • 石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 岡村 智教(慶應義塾大学 医学部 衛生学公衆衛生学教室)
  • 鈴木 隆雄(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐室)
  • 樺山 舞(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻)
  • 田中 和美(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
  • 渡邊 裕(北海道大学 大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)
  • 小嶋 雅代(国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施」(以下「一体的実施」)について、国は令和元年にガイドラインを発表、2年度より制度開始となった。本事業推進に向けて、後期高齢者医療広域連合(以下「広域連合」)と市区町村・関係機関との連携調整、市区町村内の連携(国保・衛生・介護の各部局)、「後期高齢者の質問票」(以下「質問票」)の実施、保健事業等の企画・運営、国保データベースシステム(以下「KDB」)等による健康課題分析と評価などを効果的かつ効率よく進めていく必要がある。
そのため、本研究では科学的根拠に基づきつつも、現場に即した方法の提示、広域連合や市町村の現状に即し、実践に役立つツールや解説書の提供、事業評価方法の確立を目的として研究を実施した。
研究方法
1) 後期高齢者の質問票の検証:健診、通いの場、慢性疾患診療の場面で質問票を実施、7つのフィールドで横断的、縦断的分析を実施した。
2)一体的実施の事業検証:一体的実施の事業進捗チェックリストを作成、都道府県管内においてこれに基づいた各段階における達成状況を調査、市区町村規模別の課題について調査した。また市区町村における低栄養、身体的フレイル、口腔の各保健事業の事業検証を実施した。
3)マニュアル・研修資材等の開発:本事業の進捗、対象者抽出、事業評価に活用できるマニュアル、研修資材を開発した。
4)保健事業対象者の抽出方法の検討:「一体的実施・KDB活用支援ツール」で生成するCSVデータを用いて、既存のエビデンスや保健事業の実態を踏まえて事業フローを作成した。
5)実践支援ツールの開発:活用支援ツールで生成したCSVデータから簡単に対象者の選定、評価ができる二次加工ツールを開発した。
結果と考察
1)後期高齢者の質問票の検証:質問票の4項目以上該当で要介護リスクが高まることが明らかとなった。構成概念妥当性、フレイルや口腔所見との関連、医療費や要介護認定との関連などの知見が得られた。
2)一体的実施の事業検証:進捗チェックリストにより、自治体規模別の課題が明らかとなった。各保健事業の事業検証により、質問票の回答の改善・悪化防止、要介護認定、医療費等の抑制の可能性が示された。
3)マニュアル:令和2年度は「市町村における『高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施』のための進捗チェックリストガイド」、3年度は「『⼀体的実施・KDB 活⽤⽀援ツール』の抽出条件の考え⽅と保健事業への活⽤」、4年度は「一体的実施・実践支援ツールの保健事業への活用・実践・評価編」を作成し、広域連合、国保連合会、都道府県、市町村等に周知した。国⺠健康保険中央会(以下、国保中央会)による横展開事業(研修)にて解説した。
4) 保健事業対象者の抽出方法の検討:「一体的実施・KDB活用支援ツール」で生成するCSVデータを用いた事業フローを作成、保健事業のポイントについて動画を作成した。令和4年度調査でツールを活用した広域連合は53%、活用を検討中が28%であった。
5)実践支援ツールの開発:性・年齢階級別集計、重複状況、事業フローに合わせたリスト作成、個別管理表、データヘルス計画に活用できる機能を盛り込んだ。
結論
本研究により、質問票についてのエビデンスが蓄積し、活用法を提示することができた。本研究班の成果物として「進捗チェックリストガイド」、「抽出条件の考え方と保健事業への活用」、「実践支援ツールの保健事業への活用」の三部作を作成、これらを活用することにより、一体的実施の全国的な広がりに寄与した可能性が考えられる。

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-26
更新日
2023-05-29

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202201005C

収支報告書

文献番号
202201005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,030,000円
(2)補助金確定額
9,030,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 559,234円
人件費・謝金 1,619,071円
旅費 630,272円
その他 5,126,423円
間接経費 1,095,000円
合計 9,030,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-12-20
更新日
-