レセプトデータ等を用いた、長寿化を踏まえた医療費の構造の変化に影響を及ぼす要因分析等のための研究(傷病構造及びサービス提供体制が医療費構造に及ぼす影響の分析)

文献情報

文献番号
202201003A
報告書区分
総括
研究課題名
レセプトデータ等を用いた、長寿化を踏まえた医療費の構造の変化に影響を及ぼす要因分析等のための研究(傷病構造及びサービス提供体制が医療費構造に及ぼす影響の分析)
課題番号
22AA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
  • 劉 寧(リュウ ネイ)(産業医科大学 医学部)
  • 得津 慶(産業医科大学 公衆衛生学)
  • 松垣 竜太郎(産業医科大学 医学部公衆衛生学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
4,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では我々が国内の自治体の協力を得て構築している医療・介護レセプトデータベース(12区市府県の2000万人について個人単位で最長15年追跡可能)を用いて、医療介護資源の整備状況から地域を分類し、その分類ごとの医療費の構造を分析するツールの開発を試みる。令和4(2022)年度研究では、推計モデル構築の基礎となる、社会経済環境及びその時系列変化が傷病構造や医療介護サービスに及ぼす影響を分析し、モデルに投入するパラメーターの検討を行った。
研究方法
本研究では当教室の保有する2014年度から2020年度の傷病構造及び医療・介護給付費構造データに人口データ、医療・介護査サービス供体制データ、社会経済データを組み合わせて、探索的分析を行い医療費予測のためのモデルを複数構築する。モデルとしては、重回帰モデル(Yt= f(傷病構造t、要介護度t、医療提供体制t、介護サービス提供体制t、人口構造t、社会経済要因t、・・・)+α))、Bayesian Networkによる構造学習モデルなど複数のものを作成する(予測モデルAi: iはモデル番号)
 上記のモデルのうち、社会経済状況については、介護保険における保険料の所得段階を代替変数として用いることが可能である。そこで、令和4年度研究においては、保有する医療介護レセプトデータのうち、被保険者の所得情報(介護保険料の段階区分)及び各地区の社会経済状況に関する情報のある一自治体のデータを用いて、所得が医療介護サービスの利用料に及ぼす影響と各傷病の地域別の有病率の時系列変化について探索的に検討を行った。所得段階は以下のとおりである。
区分1: 生活保護、本人市民税非課税、同居家族市民税非課税、本人所得80万以下
区分2: 本人市民税非課税、同居家族市民税非課税
区分3: 本人市民税非課税、同居家族市民税課税
区分4: 本人市民税課税、本人収入250万円未満
区分5: 本人市民税課税、本人収入250万円以上
結果と考察
所得区分別の医療介護サービスの利用状況及び主な傷病の状況を概観すると所得区分の低い群では介護保険の利用率が高く、特にサービス種別では特別養護老人ホームとグループホームの利用率が低所得群で高くなっていた。他方、訪問看護は医療保険、介護保険ともに高所得群で高くなっている。訪問診療については低所得群と高所得群で高く、中位の群で低いというU字型の利用状況となっていた。所得区分と主な傷病の有病率をみると、所得区分が高くなるほど悪性腫瘍および糖尿病などいくつかの有病率が高くなっていたが、他の傷病では明確な差は観察されなかった。
 介護給付額と医療費の一人当たり平均には、所得区分で明確な差が観察された。所得区分3(本人市民税非課税、同居家族市民税課税)を対象とすると、それよりも低い群、高い群ともに給付額が有意に大きくなっていた。特に低所得群でその額は大きくなっていた。他方、医療費は区分3に比較して他の区分はいずれも有意に平均費用が低くなっていた。特に減少額は低所得層で大きかった。
 主な諸病の年齢調整有病率比をみると、経時的に増加している傷病(悪性腫瘍、慢性腎不全、高血圧、高脂血症、糖尿病、慢性腎不全、心不全など)と減少している傷病(脳梗塞、心筋梗塞)、一定の傾向を示さない傷病(肺炎、気分障害など)があることが示された。諸病構造の推計にあたってはこうした時系列変化の影響を勘案することが必要である。
結論
医療保険レセプト及び介護保険レセプトを用いて地域別の傷病構造及びそれに伴う医療費構造の推計を行うモデル開発の検討を行った。社会経済環境要因、例えば所得の状況は、悪性腫瘍や糖尿病を除いて有病率に大きな影響をもたらしていないが、医療介護サービスの利用率に有意の影響をもたらしていた。また、時系列でみると、悪性腫瘍や高血圧、高脂血症、糖尿病、慢性腎不全などのように、有病率が経時的に増加している傷病がある一方で、脳梗塞のように減少傾向にあるものもあった。また、こうした変化は地域によって異なる場合もあった。上記の分析結果を踏まえて、傷病構造及び医療費の変化については、地域単位で、いくつかの操作可能なパラメーターを設定して、それを推計するモデルを作成することが妥当であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-14
更新日
2023-06-27

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-14
更新日
2023-06-27

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202201003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,500,000円
(2)補助金確定額
5,499,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 549,898円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 3,681,000円
間接経費 1,269,000円
合計 5,499,898円

備考

備考
千円未満切り捨て

公開日・更新日

公開日
2023-12-28
更新日
-