児童養護におけるGrowing Up in Communityの実現とNPOの役割

文献情報

文献番号
200901042A
報告書区分
総括
研究課題名
児童養護におけるGrowing Up in Communityの実現とNPOの役割
課題番号
H20-政策・若手-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森 傑(北海道大学 大学院工学研究院 建築都市空間デザイン部門)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
1,226,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
米国NPOによる先駆的プロジェクトの可能性と限界の構造化、および、日本における“Growing Up in Community”の実現における課題解明とNPOが果たしうる役割の検討を目的とした。
研究方法
イリノイ州の住宅地開発Hope Meadowsについて、現地調査・インタビュー調査に基づくケーススタディを行ったとともに、平成20年度の成果を踏まえ、全国568ヵ所の児童養護施設に対して生活行為の発生場所や頻度、建物・周辺環境に関するアンケート調査を実施した。
結果と考察
Hope Meadowsは、軍用に整備された既存住宅群を用途転換した養子縁組家族のための住宅地開発である。そのため、どこからがHope Meadowsなのかを見分けることのできない居住環境の形成に成功している。敷地面積は22エーカー、住戸数は全体で64 戸、その内13戸が養子を迎えた家族の住居、46戸が高齢者の住居、また5戸がオフィスやインタージェネレーショナル・センター(IGC)などの運営や地域活動のための施設として使用されている。住戸は二戸一型住宅(duplex)または四戸一型住宅(four-plex)を基本としている。この事業は、養子とその家族の支援プログラムおよび高齢者ボランティアプログラムによって構成される。養家へは、カウンセリングなどの児童福祉事業のほか、住宅を含む経済的な支援が行われている。また、高齢者は家庭教師などの週6時間のボランティア活動を行っており、その代替として市場価格以下の賃貸料での生活を可能としている。Hope Meadowsは、児童養護という子どもに限定した支援にとどまらず、NPOによる家族単位での支援を目的としたインタージェネレーショナル・コミュニティという点で注目すべき事例である。
結論
Hope Meadowsのケーススタディにより、児童の居住環境と支援体制を考える上で、まず、居住環境しては、1)特別視されず偏見が生まれない環境、2)規模やニーズの変化に対応できる柔軟な環境、そして支援体制としては、3)理念の継承による確実な支援体制の確立、4)家族単位で行う日常生活での継続的な支援、5)世代間交流による高齢者の参加促進、が必要であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200901042B
報告書区分
総合
研究課題名
児童養護におけるGrowing Up in Communityの実現とNPOの役割
課題番号
H20-政策・若手-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
森 傑(北海道大学 大学院工学研究院 建築都市空間デザイン部門)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
NPOによる児童養護の取り組みと生活環境の整備を支援する制度およびシステムが未だほとんど確立されていない我が国において、近い将来確実に必要となる非施設型の児童養護環境を整備する上での具体的な課題を、既に様々な児童養護関連問題を抱える米国でのNPOによる先進的取り組みと我が国の現状との比較分析を通じて、社会・経済・組織・建設等の複合的視点から理論的・事例的に検討することを目的とした。
研究方法
(A)“家庭・家族”の観点による児童養護関連施設の再評価、(B)米国NPOによる先駆的プロジェクトの可能性と限界の構造化、(C)我が国における“Growing Up in Community”の実現における課題解明とNPOが果たしうる役割の検討、に取り組んだ。
結果と考察
全国568ヵ所の児童養護施設に対するアンケート調査により、入所前の児童の生活状態や習慣による児童の問題が根本となって施設の日常生活での課題が生まれており、それらを支えるかたちで職員の勤務形態や施設のプログラム、また空間や設備面での課題が捉えられていることが把握できた。特に、1)ハード面を整備することで施設の小単位化や児童の自立支援、職員の管理意識や指導方法が改善される、2)調理場と食事空間の繋がりによって調理体験の機会が増えるなど施設の空間構成が児童の生活体験に影響する、3)遊び場や買い物先としての周辺環境、近隣に住む同年代児童の有無や町内会との関わりの深度などの地域性が、児童の対人関係を形成する上で大きく関係する、ことが強く課題認識されていることが明らかとなった。
結論
児童の居住環境として相応しい環境を築くためには、周辺地域との連携、世代間交流を積極的に考えた視野の広い支援体制が求められると同時に、共通した福祉理念の継承による持続性・柔軟性も、確実な支援体制を築く上で必要である。米国のHope Meadowsでは、児童を取り巻く環境を物理的な視点で捉えることで、日常における近所の高齢者の見守りや交通安全面などの支援体制を近隣に敷いている。日本の施設形態とは異なる住宅地のコンバージョンという計画が支援プログラムの効果に寄与しており、高齢者やサポートスタッフの活用を実現させている。住宅地という面的広がりの中で展開される児童養護の環境デザインが、日本における脱施設化への一つの手がかりになると考える。

公開日・更新日

公開日
2010-05-19
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901042C