保育・生活場面の展開と心身や空間把握能力の発達からみた保育施設環境の所要規模に関する研究

文献情報

文献番号
200901017A
報告書区分
総括
研究課題名
保育・生活場面の展開と心身や空間把握能力の発達からみた保育施設環境の所要規模に関する研究
課題番号
H20-政策・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 将之(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 あすか(東京電機大学 未来科学部)
  • 橋本 雅好(椙山女学園大学 生活科学部)
  • 古賀 誉章(東京大学 大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
4,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにする.それによって、保育施設環境の適正規模や諸空間に求められる1人あたり面積の基準を検討することを目的とした.
研究方法
アンケート・ヒアリング調査、観察調査、空間把握能力に関する実験的調査、によって、保育や生活の場面の展開や乳幼児の行動様態を明らかにし、運営の理念や指針に対する視座を得ると共に、運営プログラムを踏まえた保育施設の適正規模や諸室における面積等の検討を行った.
結果と考察
1)保育スタッフが現在使っている保育室に適すると考える理想人数から算出した保育室の1人当たり面積では、幼保3・4・5歳児に有意差はなく、2.11から2.95平米/人までとなり、現状の最低基準よりも約1.1倍高い.2)保育スタッフが考える最も適した保育集団の人数では、保育所の5歳児など3群が20~25人となった.3)観察調査によって,実際に使われている保育室面積を調べたところ,室内に遊びに対応したコーナーを設け空間を分節化することによって室内の面積の有効活用率が増す可能性があった.4)壁際・隅角部および狭隘部の利用率は動的・静的な活動で両方とも低かった.5)5歳児の過半数が約600mmで指示物を「アレ」と答えることが推定できる.この数値は、山田ら(同研究費H19)が行った、保育室内の設え周りで活動する際に周りの設えから離れる距離と近似する.6)幼児においての「コレ」領域とは、225mmから450mmまでを指し、おおよそ「手の届く範囲」であった.学齢があがるに従ってコレ領域が狭まり、アレ領域が広がる傾向があった.「ソレ」領域は極めて少なかった.
結論
本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにすることができた.保育所、幼稚園、認定こども園を横断的に分析し、設置基準について統合を図ることが現実的、効率的であることを明らかにできた.また幼児の空間把握能力実験では、心理的自我領域を明らかにし、有効面積を算定するための基本データを得られることができた.
 園児1人当たりの保育室面積など保育所・幼稚園・認定こども園による違いが無かったことから、それぞれの設置基準について統合を図ることが現実的、効率的である.また,様々な活動規模に対応できることや、昨今求められる多様な保育サービスに伴う人数変化にも対応するためには、多様なスケールの空間を提供すべきである.

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

文献情報

文献番号
200901017B
報告書区分
総合
研究課題名
保育・生活場面の展開と心身や空間把握能力の発達からみた保育施設環境の所要規模に関する研究
課題番号
H20-政策・一般-004
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 将之(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 あすか(東京電機大学 未来科学部)
  • 橋本 雅好(椙山女学園大学 生活科学部)
  • 古賀 誉章(東京大学 大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにする.それによって、保育施設環境の適正規模や諸空間に求められる1人あたり面積の基準を検討することを目的とした.
研究方法
アンケート・ヒアリング調査、観察調査、空間把握能力に関する実験的調査、によって、保育や生活の場面の展開や乳幼児の行動様態を明らかにし、運営の理念や指針に対する視座を得ると共に、運営プログラムを踏まえた保育施設の適正規模や諸室における面積等の検討を行った.
結果と考察
1)施設規模は、認定こども園が他のよりも大きい傾向有.保育所・幼稚園では,1クラス増で延床面積が約100平米増えていた.2)処遇規模に関する保育者の評価は,担当するクラスの園児1人あたり室面積や現員による影響有.3)保育スタッフが現在使っている保育室に適すると考える理想人数から算出した保育室の1人当たり面積では、幼保3・4・5歳児に有意差はなく、2.11から2.95平米/人までとなり、現状の最低基準よりも約1.1倍高い.4)保育スタッフが考える最も適した保育集団の人数では、保育所の5歳児など3群が20~25人となった.5)観察調査によって,実際に使われている保育室面積を調べたところ,室内に遊びに対応したコーナーを設け空間を分節化することによって室内の面積の有効活用率が増す可能性があった.6)壁際・隅角部および狭隘部の利用率は動的・静的な活動で両方とも低かった.7)5歳児の過半数が約600mmで指示物を「アレ」と答えることが推定できる.この数値は、山田ら(同研究費H19)が行った、保育室内の設え周りで活動する際に周りの設えから離れる距離と近似する.8)幼児においての「コレ」領域とは、225mmから450mmまでを指し、おおよそ「手の届く範囲」であった.学齢があがるに従ってコレ領域が狭まり、アレ領域が広がる傾向があった.「ソレ」領域は極めて少なかった.
結論
本研究では、保育施設における保育や生活の場面を把握し、保育施設に通う園児の心身や空間把握能力の発達を物理的・建築的側面から明らかにすることができた.保育所、幼稚園、認定こども園を横断的に分析し、設置基準について統合を図ることが現実的、効率的であることを明らかにできた.また幼児の空間把握能力実験では、心理的自我領域を明らかにし、有効面積を算定するための基本データを得られることができた.

公開日・更新日

公開日
2010-05-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
政策への反映案総括:園児1人当たりの保育室面積など保育所・幼稚園・認定こども園による違いが無かったことから、それぞれの設置基準について統合を図ることが現実的、効率的である.また,様々な活動規模に対応できることや、昨今求められる多様な保育サービスに伴う人数変化にも対応するためには、多様なスケールの空間を提供すべきである.
臨床的観点からの成果
政策への反映案01:
例えば、動的活動に使用できる保育室以外の保育面積が確保されていれば保育室の一人当たり面積は現行基準より小さくとも問題はない可能性がある.したがって必要面積の策定にあたっては,保育室のみならず施設全体の面積基準を検討する必要がある.
ガイドライン等の開発
政策への反映案02:
さらには、壁際・隅角部の利用率の低い部分をより少なくするためには、小さな空間に分節することが有効となる.単なる面積基準ではなく、室形状や家具配置などの使われ方を含めた有効面積という考え方を基準とすることが有効である可能性が示唆された.
その他行政的観点からの成果
政策への反映案03:
また、子どもの人数規模に応じて保育者の評価に変化がみられたことから、保育士1人当たり、あるいはクラスの人数規模に関する検討が必要である.
その他のインパクト
公開シンポジウムを2009年3月に開催した.
上記取材記事が保育雑誌「遊育」の4月号に掲載された.

発表件数

原著論文(和文)
1件
他、さらに2から3編を編集中
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
他、さらに2編を発表登録済み
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
倉斗綾子・山田あすか・佐藤将之 et al.
就学前保育施設の施設状況とその評価 全国保育施設アンケート調査より
日本建築学会技術報告集 , 15 (31) , 865-870  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-