医療・介護制度における適切な提供体制の構築と費用適正化に関する実証的研究

文献情報

文献番号
200901011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療・介護制度における適切な提供体制の構築と費用適正化に関する実証的研究
課題番号
H19-政策・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 謙治(政策研究大学院大学)
  • 郡司 篤晃(聖学院大学 大学院)
  • 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 田城 孝雄(順天堂大学 医学部)
  • 宮澤 仁(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科)
  • 東 修司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 西田 在賢(静岡県立大学 地域経営研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
6,506,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はこれまでの医療・介護制度改革について実証的検証を行い、分析結果に基づいて制度改革に関する提言を行うことである。
研究方法
公的統計や国民健康保険・介護保険などの個票データを統計的に分析すること、有識者等にヒアリングすること、などによる。
結果と考察
(1)平均在院日数、転帰、医療費の地域差等に関する分析
急性期・慢性期の機能分化による在院日数の短縮には一定程度の効果が確認されたが、介護保険
導入の効果は極めて限定的であると考えられた。また、平均在院日数の短縮化は医療費の節約に
必ずしも結びついていなかったが、それは技術普及の偏差によると推定された。
(2)医療連携の効果
医療連携を単に報酬で評価することだけでは適切な連携システムの構築のためには十分ではないと考えられた。地域で利用可能な医療・介護資源は異なるため、全国均一のシステムは構築しにくいと考えられた。
(3)患者受診行動の分析
複数の市町村から提供受けたレセプトデータについて分析を実施した。自宅から遠距離の医療機関に受診している患者ほど医療費が高くなる構造は共通に観察された。医療と介護のレセプトデータを個人単位で接合し、高齢者の入院・入所行動についても分析を行った。患者の疾病をコントロールした上でも、介護ニーズの高い患者ほど入院期間が長かった。
(4)プライマリー・ケア(PC)の制度化可能性について
世界の国々の医療制度には大きな差があるが、その差はPC及びそれと高次医療との接続にある。GP への登録制度、税財源による無料の医療を提供している国の国民の医療に対する満足度は極めて高い。英国等での調査結果から、「PCとは人々の不安に対処することが本質的に重要であり、不安に対処する方法は信頼できる人が責任を持つことである」と考えられた。
(5)自宅死亡割合の分析
2005年時点の二次医療圏の地域区分を過去に遡って適用し、「人口動態調査」のデータにより経年比較したところ、自宅死亡の割合が高かった地域ほど自宅死亡割合が大きく低下していた。
65歳以上に限定して分析したところ、年齢が高いほど自宅死亡割合が高かった。悪性新生物、脳血管疾患、心疾患に限定しても自宅死亡割合の経年的低下が観察された。
結論
これまでの医療制度改革は一定の費用適正化の効果があった。他方、自宅死亡割合の増加などの新しい状況に対応するために継続的に制度改革を行っていく必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2010-11-15
更新日
-

文献情報

文献番号
200901011B
報告書区分
総合
研究課題名
医療・介護制度における適切な提供体制の構築と費用適正化に関する実証的研究
課題番号
H19-政策・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
泉田 信行(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 島崎 謙治(政策研究大学院大学)
  • 郡司 篤晃(聖学院大学 大学院)
  • 橋本 英樹(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 田城 孝雄(順天堂大学 医学部)
  • 宮澤 仁(お茶の水女子大学 大学院人間文化創成科学研究科)
  • 東 修司(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 川越 雅弘(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 野口 晴子(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障基礎理論研究部)
  • 菊池 潤(国立社会保障・人口問題研究所 企画部)
  • 西田 在賢(静岡県立大学 地域経営研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はこれまでの医療・介護制度改革について実証的検証を行い、分析結果に基づいて制度改革に関する提言を行うことである。
研究方法
公的統計や国民健康保険・介護保険などの個票データを統計的に分析すること、有識者等にヒアリングすること、などによる。
結果と考察
急性期・慢性期の機能分化による在院日数の短縮には一定程度の効果が確認されたが、介護保険導入の効果は極めて限定的であった。また、平均在院日数の短縮化は医療費の節約に必ずしも結びついていなかった。他方、医療連携については単に報酬で評価することだけでは適切な連携システム構築のためには十分ではないと考えられた。ただし、連携の帰結として達成されるより良い成果については現行の診療・介護報酬などを用いて全国で統一された評価を行うことは可能であると考えられた。
レセプトデータの分析からは患者の合理的な受診行動が示唆される結果が得られた。さらに、医療保険と介護保険の給付双方を考慮しても自己負担増大の効果は大きくない可能性が示唆された。
人的資源確保は医療・介護制度の大きな課題である。医療制度については、日本の制度は非常に資本集約的になっている点が特徴である。このため、人的資源確保のみならず、資本投入に対するコントロールを行う必要があるかも知れない。人的資源確保に関して、介護職の離職率の分析をしたところ、働き方や介護事業の種類を区別すると必ずしも離職率は高くなかった。
公立病院やプライマリー・ケアの分析からは「不安に対処する方法は信頼できる人が責任を持つこと」、「権限と責任の一致」などの理念が制度運営上必要であることが示唆された。
なお、自宅死亡割合が大きく変化しており、今後の課題となる可能性が示唆された。
結論
これまで行われてきた制度改正のうち、一定の目的を果たしたものもあると考えられた。しかしながら、安全・安心な医療供給体制を確保していくためには状況の変更に応じて今後も継続的に制度改正を行っていく必要があり、それを支えるデータセットの整備が継続的に行われていく必要があると考えられた。
データに基づいて安全・安心な医療供給体制の確保していくにあたっては、「不安に対処する方法は信頼できる人が責任を持つこと」、「権限と責任の一致」、などの基本的な考え方が制度全体や関連する組織構造において貫かれる必要がある。また、医療制度に関わる個別の組織が「地域の中で果たす役割は何か」を十分に検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2010-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200901011C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平均在院日数が何によって短縮化されてきたかはこれまで明らかでなかったが、機能分化による在院日数の短縮、介護保険導入の効果、などについてその効果を定量的に明らかにしている。また、平均在院日数の短縮化は医療費の節約に必ずしも結びついていないことも明らかにしている。また、人的資源確保に関して、働き方や介護事業の種類を区別すると介護職者の離職率が必ずしも高くないことが示唆された。これらは医療経済学分野における極めて新規性の高い分析結果である。
臨床的観点からの成果
 研究成果を実際の制度運営に活かすという観点からは、本研究班の分析結果はこれまでの制度改正について定量的にその効果を提示した点に意義があると考えられる。さらには、医療・介護従事者に関する統計分析や自宅死亡割合の分析などに見られるように、現在起こっている課題のみならず今後新規に発生する政策課題に対して、既存の統計データをより改善していく必要があることを具体的に指摘している。
ガイドライン等の開発
特記事項なし。
その他行政的観点からの成果
特記事項なし。
その他のインパクト
特記事項なし。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
宮澤仁
東京大都市圏における有料老人ホームの立地と施設特性
E-Journal GEO , 4 (2) , 69-85  (2009)
原著論文2
川越雅弘・小森昌彦・備酒伸彦
病床区分別にみた病床運営および退院先のリハビリテーション連携状況の差異
理学療法兵庫 ,  (15) , 35-42  (2009)
原著論文3
住友和弘・泉田信行・野口晴子他
地域住民の受診動向、医療連携の現状分析-中頓別町国民健康保険病院と旭川医科大学病院を事例として-
旭川医科大学フォーラム , 10 , 64-75  (2009)

公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
-