シックハウス症候群の原因解明のための全国規模の疫学研究-化学物質及び真菌・ダニ等による健康影響の評価と対策-

文献情報

文献番号
200840042A
報告書区分
総括
研究課題名
シックハウス症候群の原因解明のための全国規模の疫学研究-化学物質及び真菌・ダニ等による健康影響の評価と対策-
課題番号
H20-健危・一般-009
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 湯浅 資之(北海道大学大学院医学研究科 予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 田中 正敏(福島学院大学 福祉学部福祉心理学科)
  • 吉村 健清(福岡県保健環境研究所)
  • 森本 兼曩(大阪大学大学院 医学系研究科社会環境医学)
  • 柴田 英治(愛知医科大学 医学部衛生学講座)
  • 河合 俊夫(中央労働災害防止協会 大阪労働衛生総合センター)
  • 西條 泰明(旭川医科大学 医学部健康科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、一般住宅を対象とした全国規模の疫学研究の結果から、シックハウス症候群(SHS)の症状有訴は成人よりも未成年者に多いことを明らかにした。そこで本年度から小学生を対象に、学校と自宅環境・暮らし方とSHS症状との関連を解明し、発症予防の環境づくりと暮らし方を提言することを目的とした研究を実施した。
研究方法
3年計画の1年目となる本年度は、全国統一プロトコルに則る小学生を対象とした質問紙調査および小学校教室内化学物質の測定を旭川、札幌、福島、福岡で実施した。関西、愛知、岡山では次年度はじめに終了する予定。質問紙は担任教諭が全児童に配付し、保護者が記入したものを回収した。質問内容は、アレルギー既往、SHS自覚症状、ライフスタイル、自宅の環境についてである。学校の建築構造については質問紙による聞き取り調査と、1校あたり3教室を選び、パッシブ法で空気を採取し、アルデヒド類14化合物、VOC類41化合物を測定した。
結果と考察
対象校数、回答数と回収率は、旭川地区3校、集計中;札幌地区12校、4445人、69.5%;福島地区3校、1046人、84.2%;福岡地区3校、1105人、71.6%であった。教室の空気中化学物質濃度はすべて厚生労働省の基準値以下であり、過去に実施した一般戸建て住宅(築8年以下)の化学物質濃度より低値であった。毎週のようにSHS症状を訴える児童の割合は、札幌8.8%(入力終了した3校の集計)、福島8.0%、北九州4.4%であり、過去に本研究班が算出したSHS症状有訴率0.8-2%程度よりも多かった。症状有訴は、食べ物の好き嫌いが多い、睡眠の質が悪い、排便頻度が少ない、自宅の湿度環境(結露、目で見えるカビの生育、カビ臭、水漏れ)が悪いと有意に高かった(p<0.05)。今後全地域の調査結果を解析することで、症状と関連する要因をより明確にし、症状軽減・発症予防策の提案ができると考える。
結論
小学校の教室内空気中化学物質濃度は、築8年以下の戸建て住宅よりも低い傾向にあった。SHS症状には自宅の湿度環境が重要であり、児童のライフスタイル(食べ物の好き嫌い、排便、睡眠)も関連する要因であった。自宅環境については、次年度以降にSHS症状による症例対照研究を実施し、さらに集合住宅を対象として微生物由来VOC類やエンドトキシンなどの環境測定を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2009-05-14
更新日
-