飲料水に係る健康危機の適正管理手法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200840005A
報告書区分
総括
研究課題名
飲料水に係る健康危機の適正管理手法の開発に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 哲治(国立医薬食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部)
  • 山田 俊郎(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
3,004,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
飲料水に起因する健康の安全を脅かす事態を対象に、被害発生予防・拡大防止のための危機管理の適正化に資する手法の開発を最終的な目的としている。今年度は、国内外で発生した過去の飲料水健康危機事例の把握、化学物質に関する除去技術など危機発生対応に必要な情報の収集、地理情報システム(GIS)による水源汚染リスク評価手法の開発、小規模飲料水供給施設の管理の在り方の検討を目的とした。
研究方法
飲料水健康危機事例を文献から整理するとともに、厚労省に報告された情報から全国の耐塩素性病原微生物の原水検出状況を分析した。飲料水健康危機に関連する化学物質とその健康影響につき情報を整理し、監視優先度の高い化学物質の分析方法や浄水プロセスでの除去性を実験により検討した。GISによる病原微生物の水源汚染要因を抽出する手法、汚染危険度の高い水源を抽出し地図上に可視化する手法を検討した。飲用井戸等の把握の管理につき地方自治体の情報や要領などから検討を行った。
結果と考察
国内の飲料水健康危機事例を収集・整理を継続し、事例データベースを更新した。過去10年間の耐塩素病原微生物の原水検出状況を整理し、流域によって検出頻度等の特徴が大きく異なることを明らかにした。水道水を介して健康危機被害を生じる恐れのある有害化学物質の基礎的情報を整理するとともに、未規制物質で監視優先度の高い化学物質について塩素処理や粉末活性炭処理の浄水処理プロセスにおける除去性を実験より明らかにした。一般に利用可能な地理情報や統計情報のGISへの取り込み方法を整理し、地理情報源の問題点・改善点を指摘した。GISの空間解析機能を用いて水源毎の汚染要因抽出や個々のリスク因子に対する危険度の高い水源を抽出・可視化する手法を示した。井戸台帳の利用による小規模飲料水供給施設の管理手法を示し、また飲料水健康危機管理実施要領の内容を分析し、具体的な対応等や再発防止を意図した対策が明記されることでより有効なものとなること等が指摘できた。
結論
国内外での飲料水に係る健康危機の状況・体制を把握し、適正な管理策を講じる上で有効な情報を整理することができた。本研究の成果は、飲料水健康危機事例、未規制化学物質に関する情報、小規模な飲料水供給施設の衛生管理のポイント等、飲料水健康危機管理に有用な情報について、公開内容等を検討し順次インターネット上で公開する。

公開日・更新日

公開日
2009-05-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200840005B
報告書区分
総合
研究課題名
飲料水に係る健康危機の適正管理手法の開発に関する研究
課題番号
H18-健危・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 道宏(国立保健医療科学院 水道工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 哲治(国立医薬食品衛生研究所 環境衛生化学部)
  • 国包 章一(静岡県立大学 環境科学研究所)
  • 浅見 真理(国立保健医療科学院 水道工学部 )
  • 島崎 大(国立保健医療科学院 水道工学部 )
  • 山田 俊郎(国立保健医療科学院 水道工学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
飲料水に起因する国民の健康の安全を脅かす事態の要因は、水質汚染事故、テロ及び自然災害など多数存在し、飲料水に係る健康リスクを回避するための施策が求められている。本研究は、飲料水に起因する国民の健康の安全を脅かす事態に対する発生予防・拡大防止等のための危機管理の適正化を図ることを目的とした。
研究方法
国内外の飲料水に関する健康危機関連情報の整理と危害内容の分析を行った。文献調査と実験により健康危機対応に必要な化学物質の毒性や浄水プロセスでの除去性等を検討した。水道施設および飲用井戸等の小規模飲料水供給施設の適正な管理のあり方について文献およびアンケート調査を行った。地理情報システム(GIS)の空間解析機能による飲料水管理手法の開発を検討した。
結果と考察
飲料水健康危機に関する情報を収集・整理しデータベースを作成した。危機事例の傾向や原因を分析し、小規模飲料水供給施設等で健康被害リスクが大きい等水道種別にリスクを明らかにし、被害防止に消毒プロセスの実施や水源管理が重要であることを示した。自然災害時の管理体制や海外のテロ対策等を含む飲料水危機管理の取組など危機管理の向上に資する情報を収集し、課題等について指摘した。健康危害の原因化学物質についての毒性や浄水工程での除去性などを整理した。未規制化学物質の監視優先度を示し、優先度の高い化学物質の浄水プロセスにおける除去性を実験的に示した。有機リン系農薬の急性毒性評価は、原体のみではなくオキソン体の両方を合算した濃度を考慮することが重要であること等を明らかにした。小規模飲料水供給施設における管理上の問題を指摘した。井戸台帳を活用した施設把握手法を示し、小規模飲料水供給施設の衛生管理ポイントを整理した。飲料水危機管理にGISを活用する時の地理情報や統計情報の利用方法を整理し、利用上の問題点・改善点を指摘するとともに、病原微生物による汚染リスクの高い水源を抽出・可視化する手法を開発した。
結論
飲料水に係る健康被害の実態や、飲料水供給施設の管理状況と問題点等について明らかにするとともに、危機発生時に必要となる化学物質情報を整理し、さらにGIS等による管理手法を開発することによって飲料水を経由して摂取する有害化学物質及び病原微生物による健康被害の発生予防、拡大防止等を図るための危機管理手法を提示することができた。

公開日・更新日

公開日
2009-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200840005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国における飲料水に係る健康危機情報を整理・分析し、近年発生した飲料水による健康危機事例の傾向を明らかにするとともに水道の種類によるリスクレベルを評価し、近年の飲料水を介する健康危機の状況等を明らかにした。また、原水に含まれる有機リン系農薬の毒性の浄水プロセスにおける変化等を実験的を明らかにした。以上の成果は審査付論文や国際学会において発表を行った。
臨床的観点からの成果
本研究では、国内外で発生した飲料水を中心に水を介した水系感染症発生の事例を収集し、その内容を分析して、傾向・特徴や主な原因を整理し、特に小規模な水道や飲料水供給施設において塩素消毒の実施や適切な原水保全が飲料水に係る健康被害の発生や拡大防止に重要であることを示すことができた。
ガイドライン等の開発
飲料水に係る健康危機事例の発生頻度が多い、小規模飲料水供給施設や飲用井戸において、飲料水管理の現状と課題を明らかにした。これらは、地方自治体の衛生行政部局や保健所で管理されている小規模な飲料水供給施設の適切な水質管理のためのガイドラインを策定する上での骨子となるものである。
その他行政的観点からの成果
本研究を実施することによって、飲料水を経由して摂取する有害化学物質及び病原生物による健康被害の発生防止、拡大防止等の飲料水に係る健康リスクを回避するための方策を示すことができた。このことは厚生労働省健康局水道課が策定した『水道ビジョン』の主要施策に上げられている「安心・快適な給水の確保」に大いに資するものである。
その他のインパクト
本研究成果で得られた、飲料水健康危機事例、未規制化学物質に関する情報、小規模な飲料水供給施設の衛生管理のポイント等、飲料水健康危機管理に有用な情報について、公開方法等を検討した上で、国立保健医療科学院水道工学部のウェブサイト内にホームページサイトを開設し、また小規模飲料水供給施設の管理ポイントに関する小冊子を作成する予定である。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
22件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
山田俊郎,秋葉道宏,浅見真理 et al.
わが国における飲料水健康危機事例の分析
環境工学研究論文集 , 45 , 563-570  (2008)
原著論文2
田原麻衣子,久保田領志,西村哲治 et al.
塩素反応生成物を含めた有機リン系農薬のための水道水の安全性評価
用水と廃水 , 50 (6) , 39-43  (2008)

公開日・更新日

公開日
2014-05-27
更新日
-