文献情報
文献番号
200839020A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法に関する総合研究
課題番号
H20-化学・一般-006
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
福島 昭治(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 鷹屋 光俊(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 西沢 共司(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 相磯 成敏(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター )
- 甲田 茂樹(独立行政法人労働安全衛生総合研究所)
- 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 小川 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 梯 アンナ(大阪市立大学 大学院医科学研究科都市環境病理学)
- 長野 嘉介(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 浅倉 眞澄(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 野口 忠(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター)
- 平田 睦子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
46,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ナノマテリアルは極めて微細であり一般生活環境や産業現場の気中に拡散しやすいため、経気道的に容易に体内に侵入する可能性が高く、その吸入暴露によるヒトへの健康影響が深刻に懸念される。本研究の目的は、ナノマテリアルの吸入によるヒトへの健康影響の評価に役立つ手法を開発することである。
研究方法
多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を用いて、ナノマテリアルの吸入暴露実験方法について研究した。また、生体への影響の評価手法、すなわち、呼吸器および呼吸器以外の臓器への影響を調べるための光顕および電顕レベルでの病理学的検査法、吸入暴露肺におけるcDNAマイクロアレイによる毒性評価、毒性発現における酸化的ストレスの関与について研究した。さらに、吸入暴露による肺を標的とした中期発がん試験法、培養細胞を用いたin vitro試験系、遺伝子改変動物を用いたin vivo試験系による遺伝毒性スクリーニング法について検討した。また、産業用ナノマテリアルの吸入暴露に関する情報を収集・整理した。
結果と考察
吸入暴露手法の開発については、湿式法と乾式法について検討したが、MWCNTの吸入による暴露法は極めて困難であることが分かった。また、経気道投与に使用したMWCNTの分散性は良好であることが確認された。健康影響の評価手法については、1)MWCNTの気管内投与によりラットの肺および肺外影響が示された。2)MWCNTとフラーレンでは、神経系に器質的な変化がみられなかった。3)雄C57BL/6マウスの肺の遺伝子発現の日内変動等を明らかにした。4)MWCNTの経気道投与による肺の毒性影響には酸化的DNA傷害が関与していることが示唆された。5)ナノマテリアルの吸入暴露による中期発がん試験の基本プロトコールを作成した。in vitro及びin vivo試験系によるスクリーニング法については、in vitro系での遺伝毒性試験の手法が確立できた。in vivo系での遺伝毒性試験は、MWCNTを気管内投与したgpt deltaラットの肺にゲノム遺伝子に対する点突然変異が認められなかった。ナノマテリアルの吸入暴露情報の調査研究では、ナノマテリアルの毒性に粒子の形状や大きさ、分散状態等が重要な役割を果たしていることがわかった。
結論
以上の研究成果は、ナノマテリアルによるヒトの健康への影響の評価手法の確立と機序の解明に供することができる。
公開日・更新日
公開日
2009-05-25
更新日
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