前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と環境化学物質に対する感受性の解明

文献情報

文献番号
200839019A
報告書区分
総括
研究課題名
前向きコホート研究による先天異常モニタリング、特に尿道下裂、停留精巣のリスク要因と環境化学物質に対する感受性の解明
課題番号
H20-化学・一般-005
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
岸 玲子(北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 水上 尚典(北海道大学 大学院医学研究科産科・生殖医学)
  • 遠藤 俊明(札幌医科大学 産婦人科学)
  • 千石 一雄(旭川医科大学 産婦人科学)
  • 野々村 克也(北海道大学 大学院医学研究科腎泌尿器外科学)
  • 石塚 真由美(北海道大学 大学院獣医学研究科毒性学)
  • 梶原 淳睦(福岡県保健環境研究所 保健科学部生活化学課)
  • 有賀 正(北海道大学 大学院医学研究科小児科学)
  • 湯浅 資之(北海道大学 大学院医学研究科予防医学講座公衆衛生学分野)
  • 櫻木 範明(北海道大学大学院医学研究科、生殖内分泌腫瘍学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
46,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天異常の疫学研究をhospital-basedで行ない、先天異常発生率の増加の有無、リスク要因を検討する。
研究方法
北海道内約40産科施設の協力を得て、妊婦を対象に前向きコホートを設定し、産科医が記載した新生児個票により先天異常出現頻度を調べた。母体血ダイオキシン類をHRGC/HRMS法、有機フッ素化合物濃度(PFOS・PFOA)をLC/MS/MS法で測定し、母児の甲状腺機能やアレルギー症状への影響を評価した。
結果と考察
(1)平成20年8月末までの新生児個票のある児は13105名で、うち先天異常250名、異常総数303、頻度1.90%であった。うち先天性心疾患44名、口唇口蓋裂15名、停留精巣10名、尿道下裂6名であった。(2)妊婦母体血総ダイオキシン類濃度と母TSH・FT4濃度の間に関連はなかったが、一部異性体とTSHの間に負の、FT4の間に正の関連を認めた。新生児甲状腺ホルモンと母体血ダイオキシン類に関連を認めなかった。母体血清PFOS濃度と妊婦TSHで有意な負の関連、児TSHで有意な正の関連を認めた。(3)男児において母体血ダイオキシン類濃度と臍帯血IgEとの間に有意な負の関連を認めた。(4)葉酸代謝遺伝子MTHFR (C677T)T arreyを有する喫煙妊婦で血清葉酸低下が認められ、葉酸サプリメント非摂取の妊婦で顕著に低下した。(5)母体血ダイオキシン類濃度と1歳6ヶ月までの食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息との関連はなかったが、中耳炎との間に有意な関連があった。(6) 125名母乳ダイオキシン類及び非ダイオキシン様PCB濃度は総TEQ平均値が9.4pg TEQ/g lipid、総PCB類は80ng/g lipidであった。妊婦血液と母乳ダイオキシン類濃度は正の相関を示した。経産婦は初産婦より血中非ダイオキシン様PCB類濃度が30%低かった。(7)2003-8年度内の注意欠損多動性障害の論文を検索したところ、遺伝、ヘキサクロロベンゼン、甲状腺刺激ホルモン、ニコチン曝露、母の身体・情緒的な健康、TV番組視聴が同障害の症状と関連していた。
結論
本研究によりわが国の一般地域における先天異常の有病率を反映した情報が得られた。ダイオキシン類、有機フッ素化合物、喫煙の胎児期曝露は、出生時体格、母児の甲状腺機能、中耳炎の発症に影響を与えることが示された。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-