化学物質の経気道暴露による毒性評価の迅速化、定量化、高精度化に関する研究-シックハウス症候群レベル低濃度暴露を考慮した吸入トキシコゲノミクスを核とする評価体系の開発-

文献情報

文献番号
200839015A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の経気道暴露による毒性評価の迅速化、定量化、高精度化に関する研究-シックハウス症候群レベル低濃度暴露を考慮した吸入トキシコゲノミクスを核とする評価体系の開発-
課題番号
H20-化学・一般-001
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
小川 幸男(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 慶長 直人(国立国際医療センター研究所 呼吸器疾患研究部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 長野 嘉介(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター 病理検査部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
63,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
気化性化学物質リスク評価法の基盤整備として、日常生活に於いて使用あるいは受動的に暴露される様々な化学物質の安全性確保の為の毒性発現メカニズムに基づいた、より迅速、定量的、且つ、高精度な吸入毒性評価システムを構築することを目的とする。特に、シックハウス症候群の様に、人における被害報告濃度と実験動物の器質変化濃度の乖離が指摘されてきた極低濃度吸入毒性への理論的及び現実的な対応を包含することを目指す。
研究方法
研究班は、化学物質の極低濃度での経気道暴露のための技術開発と暴露、得られたマウス肺・肝サンプルの網羅的遺伝子発現変動解析、ヒト気道上皮細胞株を用いたin vitro実験系、以上3部から成っており、人への外挿性を考慮した高精度な解析をおこなう。
結果と考察
経気道暴露システムの開発・改良として、本年度はテトラデカンおよびパラジクロルベンゼンについて、室内濃度指針値を参考に決定した極低濃度にて、ガスを発生させ安定供給する技術を開発し、両物質共に、2時間単回暴露サンプリング(2、4、8、24時間後)、6時間/日×7日間暴露(6、22、70、166時間後)および22時間/日×7日間暴露(6、24、150、168時間後)をおこない、マウス肺および肝mRNAの網羅的遺伝子発現解析を行った。肺と肝、あるいは同じ化学物質でも暴露時間が異なると遺伝子発現プロファイルが異なることが明らかとなった。昇華性物質パラジクロロベンゼンの22時間暴露時の酸化的ストレス応答は、指針値レベルから用量依存的に増加していることが明らかとなり、シックハウスレベルの極低用量暴露に於いても生体反応変化を予測することが可能であることが示唆された。加えて、ヒト気道上皮細胞株を用いるin vitroの系において、poly IC低濃度刺激下の炎症応答に対するホルムアルデヒド添加の影響を検討し、ホルムアルデヒドが炎症性サイトカイン遺伝子の発現増強効果を有することが明らかとなった。
結論
器質的変化を伴わない、シックハウスレベルの極低用量暴露に於いても、網羅的遺伝子発現変動解析により、昇華性化学物質の経気道暴露影響を予測することが可能であることが示唆された。加えて、ヒト気道上皮細胞株を用いるin vitroの実験系での解析が可能となったことから、より人への外挿性の向上を計ることが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2009-05-25
更新日
-