気候変動に伴う水道システムの生物障害等リスク評価とその適応性の強化に向けた研究

文献情報

文献番号
202127021A
報告書区分
総括
研究課題名
気候変動に伴う水道システムの生物障害等リスク評価とその適応性の強化に向けた研究
課題番号
21LA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 道宏(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 修(東北大学 大学院工学研究科 )
  • 柳橋 泰生(福岡大学 工学部)
  • 藤本 尚志(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 高梨 啓和(鹿児島大学 大学院理工学研究科)
  • 越後 信哉(京都大学 大学院地球環境学堂)
  • 小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 清水 和哉(筑波大学 生命環境系)
  • 浅田 安廣(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
10,691,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動  研究分担者 清水和哉  筑波大学 国際室 (令和3年4月1日ー令和3年11月15日) →筑波大学 生命環境系 (令和3年11月16日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では「気候変動に伴う水道システムの生物障害等リスク評価とその適応性の強化に向けた研究」 に資する成果を得ることを目指し、気候変動条件下における障害生物発生ポテンシャル評価と将来発生予測モデルの構築、障害生物発生時における分析方法の開発と効率的な浄水処理システムの提案、気候変動により生じる生物障害等リスクに対する対応策の検討に関連する研究を実施した。
研究方法
定量PCRによるカビ臭原因物質合成酵素遺伝子検出に基づくカビ臭産生藍藻類の簡易同定・定量を試みた。複数のカビ臭原因物質産生藻類株を用いてカビ臭合成酵素遺伝子による系統の違いとカビ臭産生能、増殖、カビ臭産生に及ぼす窒素制限および温度等の影響について検討を行った。藻類発生予測モデルの構築に向けて、日本国内の4つのダム湖において、再解析データ(ERA5、DSJRA55)、レーダー・アメダス解析雨量(RAP)データの活用可能性を、アメダスの気象データと比較することで検討した。生ぐさ臭の機器分析による水質管理を可能とするために、 原因物質の構造や分析条件を検討した。精密質量分析による溶存有機物(DOM)の精密質量スペクトルの差異解析から、地点間・季節間での比較が可能か、下水処理水の混入を想定した模擬汚染水を用いて検討した。粉末活性炭による2-MIBの効率的除去に向けて、前段処理による粉末活性炭処理への吸着競合影響の低減について検討した。豪雨等による水道原水の濁度上昇が発生した水道事業体における対応策等について調査した。WHO、IWAによる水安全計画の見直し、改善に関連した手引き「A Practical Guide to Auditing Water Safety Plans」を翻訳した。
結果と考察
定量PCRによるカビ臭原因物質合成酵素遺伝子検出に基づくカビ臭産生藍藻類の簡易同定・定量法を開発し、カビ臭原因物質産生藍藻類の監視に対する有用性を確認した。分子系統によってカビ臭原因物質の産生能、株間で窒素源に対する応答、温度によって増殖やカビ臭産生特性が大きく異なることから、単離株の増殖やカビ臭産生特性に関するデータの蓄積は極めて重要であり、各種特性を踏まえて、発生予測モデルの構築を行っていく必要性が示唆された。また、微生物群集がカビ臭原因物質産生藍藻類の一部の増殖に好影響を与えていることを明らかにした。藻類発生予測モデルの構築に向けて、アメダスの衛星データに比べ再解析データ及びRAPデータがより藻類の濃度に関連のある要因として特定された。水道水生ぐさ臭の原因物質について、14物質から4物質まで絞り込める可能性が示された。また、一般的な装置では生ぐさ臭原因物質の分析感度が不足する可能性が高く、特殊な装置が必要と考えられるが、原因物質を自動検出するための条件を確立した。精密質量分析によるDOMの精密質量スペクトルの差異解析により、バックグラウンドの季節変動は観測されるが、異常が起こった際にそれらの変動の影響は、特異的なシグナルに注目することで、十分に回避可能と考えられた。吸着競合影響の低減には前処理として低分子有機物を除去可能な吸着処理あるいは、低分子有機物を高分子化する処理が有効であると考えられた。水道の原水濁度と水源の水位に比較的高い相関があること、また、降雨強度と河川水位の長期的変化を解析したところ、降雨強度は増加傾向にあり気候変動との関係が考えられたが、河川水位は河川により傾向が異なり河川施設等種々の要因の関与が示唆された。「水安全計画の監査に関する実践ガイド」を出版した。
結論
カビ臭産生藍藻類の監視に対して開発した定量PCR手法が有用であることを示した。多様な藻類の増殖特性を踏まえて、発生予測モデルの構築を行っていく必要性が示唆された。藻類発生予測モデルの構築において、ERA5及びRAPデータが藻類の濃度に関連のある変数として特定された。生ぐさ臭原因物質の候補構造を14種類から4種類まで絞り込める可能性が示された。また、 GC-MSを用いて生ぐさ臭原因物質を自動検出するための条件を確立した。DOMの精密質量スペクトルの差異解析より、季節変動は精密質量分析を用いることで観測されるが、異常が起こった際にそれらの変動の影響は、特異的なシグナルに注目することで、十分に回避可能と考えられた。粉末活性炭による2-MIB除去を改善するためには、活性炭処理の併用や低分子有機物に対応する吸着剤、凝集剤の開発などの技術開発が重要となると考えられた。豪雨等による水道原水の濁度上昇が発生した水道事業体における対応策等について、豪雨時に水道において原水濁度の監視とともに、水源河川の水位を注視することが有効であることが示された。「水安全計画の監査に関する実践ガイド」を出版した。

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2022-10-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202127021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,691,000円
(2)補助金確定額
10,574,000円
差引額 [(1)-(2)]
117,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,438,564円
人件費・謝金 143,055円
旅費 337,714円
その他 655,175円
間接経費 0円
合計 10,574,508円

備考

備考
自己資金508円

公開日・更新日

公開日
2022-10-27
更新日
-