文献情報
研究課題名
クリーニング店に持ち込まれる衣類の微生物汚染に起因する感染事故リスクとその防止法の検討
研究代表者(所属機関)
林 俊治(北里大学 医学部 微生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究報告書(概要版)
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
文献情報
研究課題名
クリーニング店に持ち込まれる衣類の微生物汚染に起因する感染事故リスクとその防止法の検討
研究代表者(所属機関)
林 俊治(北里大学 医学部 微生物学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究報告書(概要版)
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
行政効果報告
成果
専門的・学術的観点からの成果
クリーニング引き受け店に持ち込まれる衣類を汚染している細菌の種類および量が本研究によって明らかになった。汚染菌種はヒトの皮膚に由来するブドウ球菌属やコリネバクテリウム属および生活環境中に存在するバシラス属や真菌であった。グラム陰性菌が衣類から検出されることは少ないが、パンツからはグラム陰性菌が比較的高率に検出される。ヒトの皮膚に直接接触する衣類から多量の菌が検出される傾向がある。クリーニング工場にて洗濯を行った衣類から検出される菌のほとんどはバシラス属であり、その菌量も比較的少ない。
臨床的観点からの成果
クリーニング引き受け店に持ち込まれる衣類と洗濯後の衣類では、細菌汚染の程度が大きく異なる。従って、店内で衣類を受け取る場所と返却する場所は明確に分ける必要がある。医療従事者の衣類から検出される細菌は抗菌薬に耐性の傾向が強い。このような衣類がクリーニング引き受け店に持ち込まれることによって、耐性菌が市中に拡散し、市中耐性菌感染症が起きている可能性がある。動物を扱う職場で着用されていた衣類から検出される細菌の中には獣毛由来と思われる菌種が存在していたが、ヒトに危険な菌種が検出されたわけではない。
ガイドライン等の開発
現時点で開発したガイドライン等はない。しかし、本研究の成果を基に警鐘を鳴らす必要があると考えている事項としては、以下の二つが挙げられる。①クリーニング引き受け店において、衣類を受け取る場所と返却する場所の分別を強く推奨する。残念ながら、現状としてはこの分別が十分ではない。②抗菌薬耐性菌の市中への拡散を防ぐ意味で、医療従事者の衣類がクリーニング店に持ち込まれることについてなんらかの規制が必要と思われる。
その他行政的観点からの成果
クリーニング業法によって、感染症を起こす病原体により汚染し、又は汚染のおそれのある洗濯物が定められている。これが指定洗濯物である。本研究に基づき、この指定洗濯物に新たに加えることを提案するものとして、医療従事者の衣類が挙げられる。また、新たに加えることを検討すべきものとして、ヒトの皮膚に直接接触する衣類および動物と接触をした衣類が挙げられる。指定洗濯物の消毒方法はクリーニング所における衛生管理要領によって定められている。本研究に基づき、指定洗濯物の新たな消毒方法として過酢酸を推奨したい。
その他のインパクト
本研究に関連して、特許の出願及び取得は行っていない。現時点では、一般への普及・啓発活動等も行っていない。しかし、本研究の成果をクリーニング業に従事する労働者へ向けて発信する必要があると考えている。全国のクリーニング業者を束ねる全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は、本研究の研究協力者であり、同連合会の協力を得て、情報の発信を計画している。また、本研究の成果を本年度の神奈川県感染症医学会で発表の予定である。
特許
主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)
収支報告書
支出
研究費 (内訳) |
直接研究費 |
物品費 |
4,916,697円 |
人件費・謝金 |
0円 |
旅費 |
0円 |
その他 |
9,020円 |
間接経費 |
1,615,000円 |
合計 |
6,540,717円 |