文献情報
文献番号
202127011A
報告書区分
総括
研究課題名
水道の基盤強化に資する技術の水道システムへの実装に向けた研究
課題番号
20LA1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
清塚 雅彦(公益財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 市川 学((公財)水道技術研究センター 浄水技術部)
- 島崎 大(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 鎌田 素之(関東学院大学 工学部 )
- 山村 寛(中央大学 理工学部)
- 三宅 亮(東京大学 工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国では、水道事業に携わる職員が不足する中、水道システム全体において水質の安全性を確保しつつ、適正な維持管理を行う手法の導入による経営効率化を図ることが求められている。本研究では、水質変動や異常時における早期発見を目的とするシステム導入を目指して、監視すべき水質指標を特定し、それらを効率的に監視する技術を開発するとともに、当該技術を組み込んだ水道システムの評価や改良点等をまとめることを目的としている。
研究方法
令和3年度は、(1)水質管理の強化に係る既存・将来技術の文献調査と課題抽出、(2)連続測定が可能な水質指標の特定と測定手法の開発、(3)ビッグデータに基づく水質変動の早期予測手法の検討、(4)水道システム全体を視野に入れた経済的な水質センサーおよびデータ活用手法の開発に取り組んだ。
結果と考察
(1)自動監視装置における測定データの活用方法や今後の展望を把握すべく、9事業体と自動監視装置を製造する8社に対してヒアリングを実施した。その結果、自動監視装置が浄水処理の指標等として重要な役割を果たしていることや、十分な実用性を有していることが確認できた。一方で、官と民ではデータ活用の考え方等にギャップがあり、水道事業の更なる基盤強化のためには、このギャップの解消が重要であることが確認できた。
国内外の文献調査では、水質指標項目の連続測定や、深層学習による早期の水質予測等測定データ利活用、新規水質センサー開発状況について、キーワード検索によりヒットした文献の中から、当研究の趣旨に該当すると考えられる文献を選定し最新動向を把握するとともに、課題点の抽出を行った。
(2)水道事業において連続的にモニタリング可能な水質指標として、三次元蛍光分析に着目し、文献調査、ヒアリングおよび実測調査を実施した。2018年以降、水分野において三次元蛍光分析を利用した研究が増加しており、様々な場面で広く利用される有用なツールであることが確認できた。一方、事業体へのヒアリングから、導入に際しては多くのデータや煩雑な解析が必要なこと、装置の価格や設置場所について解決すべき課題があることが確認できた。また、蛇口水に対する実測調査から、降雨やダム放流による水質変動を蛇口水でも検出可能なことや三次元蛍光スペクトルより油類の種類を判断できる可能性が示された。
(3)浄水場が保有する残留塩素濃度の時系列データに着目し、長期短期記憶ネットワーク(LSTM)アルゴリズムにより、給水末端における3時間、6時間、12時間、24時間先の残留塩素濃度予測モデルの構築を試みた他、モデルの構築に必要最小限のデータ量を検討した。モデル構築にあたって最適なブロックは24時間であり、予測誤差目標値を±0.025mg/L以下に収めるためには、予測時間を6時間以下にする必要があることが確認できた。また、6時間先の残留塩素濃度をLSTMにより目標誤差以下で予測するために必要最小限のデータは、残留塩素濃度の1時間間隔の時系列データ4ヶ月分であることがわかった。
(4)経済的な水質センサーの開発に向けて、計測の簡素化方法、およびそれを可能とする水質計を提案・検証し、データ伝送・活用法帆の提案をすることを目的に、提案に基づき試作した簡素な水質計を民間施設における給水地点に設置し原理評価を実施するとともに、課題の摘出とそれに基づく改良を実施した。
国内外の文献調査では、水質指標項目の連続測定や、深層学習による早期の水質予測等測定データ利活用、新規水質センサー開発状況について、キーワード検索によりヒットした文献の中から、当研究の趣旨に該当すると考えられる文献を選定し最新動向を把握するとともに、課題点の抽出を行った。
(2)水道事業において連続的にモニタリング可能な水質指標として、三次元蛍光分析に着目し、文献調査、ヒアリングおよび実測調査を実施した。2018年以降、水分野において三次元蛍光分析を利用した研究が増加しており、様々な場面で広く利用される有用なツールであることが確認できた。一方、事業体へのヒアリングから、導入に際しては多くのデータや煩雑な解析が必要なこと、装置の価格や設置場所について解決すべき課題があることが確認できた。また、蛇口水に対する実測調査から、降雨やダム放流による水質変動を蛇口水でも検出可能なことや三次元蛍光スペクトルより油類の種類を判断できる可能性が示された。
(3)浄水場が保有する残留塩素濃度の時系列データに着目し、長期短期記憶ネットワーク(LSTM)アルゴリズムにより、給水末端における3時間、6時間、12時間、24時間先の残留塩素濃度予測モデルの構築を試みた他、モデルの構築に必要最小限のデータ量を検討した。モデル構築にあたって最適なブロックは24時間であり、予測誤差目標値を±0.025mg/L以下に収めるためには、予測時間を6時間以下にする必要があることが確認できた。また、6時間先の残留塩素濃度をLSTMにより目標誤差以下で予測するために必要最小限のデータは、残留塩素濃度の1時間間隔の時系列データ4ヶ月分であることがわかった。
(4)経済的な水質センサーの開発に向けて、計測の簡素化方法、およびそれを可能とする水質計を提案・検証し、データ伝送・活用法帆の提案をすることを目的に、提案に基づき試作した簡素な水質計を民間施設における給水地点に設置し原理評価を実施するとともに、課題の摘出とそれに基づく改良を実施した。
結論
(1)水道事業の基盤強化のためには、水道事業体がデータの公開や産官学の共同研究への協力等を進めていくことに加え、企業側が装置のより一層の性能向上や水質予測技術の開発を進めていくことが重要となるだろう。
文献調査では、迅速に細菌を検出可能な酵素活性やフローサイトメトリーといった測定手法が実施されていることが確認できた。また、人工衛星等による画像解析技術は、水源水質の管理等に発展する可能性があり、大いに注目すべき技術と考えられた。深層学習による早期の水質予測等測定データ利活用に関しては、水道事業に係る広汎な業務を支援できると考えられた。新規センサー開発については、依然として技術的課題があることが確認できた。
(2)有機物のトレンドや配水管網における汚染イベントの検出に関する研究例もあり、三次元傾向分析は連続モニタリング可能な新たな水質指標の候補として有用であると考えられた。
(3)モデル構築にあたって最適なブロック数、予測時間及び必要最小限のデータ量について確認した。その結果、残留塩素濃度の1時間間隔の時系列データ4ヶ月分のデータがあれば、6時間先の残留塩素濃度をLSTMにより高精度で予測できることがわかった。
(4)既開発の湿式水質計の採取部と分析ユニット部を一体化した構成の簡素な水質計を試作し、民間施設における給水地点に設置、原理評価を行うとともに、課題の摘出とそれに基づく改良を実施した。
文献調査では、迅速に細菌を検出可能な酵素活性やフローサイトメトリーといった測定手法が実施されていることが確認できた。また、人工衛星等による画像解析技術は、水源水質の管理等に発展する可能性があり、大いに注目すべき技術と考えられた。深層学習による早期の水質予測等測定データ利活用に関しては、水道事業に係る広汎な業務を支援できると考えられた。新規センサー開発については、依然として技術的課題があることが確認できた。
(2)有機物のトレンドや配水管網における汚染イベントの検出に関する研究例もあり、三次元傾向分析は連続モニタリング可能な新たな水質指標の候補として有用であると考えられた。
(3)モデル構築にあたって最適なブロック数、予測時間及び必要最小限のデータ量について確認した。その結果、残留塩素濃度の1時間間隔の時系列データ4ヶ月分のデータがあれば、6時間先の残留塩素濃度をLSTMにより高精度で予測できることがわかった。
(4)既開発の湿式水質計の採取部と分析ユニット部を一体化した構成の簡素な水質計を試作し、民間施設における給水地点に設置、原理評価を行うとともに、課題の摘出とそれに基づく改良を実施した。
公開日・更新日
公開日
2022-10-04
更新日
-