医薬品による有害事象の発生における個人差の要因に関する研究

文献情報

文献番号
200838062A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品による有害事象の発生における個人差の要因に関する研究
課題番号
H20-医薬・一般-014
研究年度
平成20(2008)年度
研究代表者(所属機関)
頭金 正博(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 杉山 雄一(東京大学大学院薬学系研究科)
  • 山本 弘史(国立がんセンター中央病院)
  • 齋藤 充生(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
有害事象の発症に個人差が生じる機構を、有害事象の発症に影響を与える薬物動態学的観点から解析するとともに、有害事象を発症した患者の症例情報を用いて有害事象発症に寄与している患者背景因子を明らかにすることを目的とした。
研究方法
P-糖タンパク質の発現量に個人差が生じる機構に関して遺伝子の転写調節領域の一塩基置換の影響を解析するとともに、各種の薬物トランスポーターの機能変動が基質となる医薬品の体内動態にどの程度の影響を与えるのか定量的に予測するヒト体内動態予測モデルを構築した。また、新規抗がん剤であるベバシズマブについて、国立がんセンターでの診療記録およびレセプトデータを対象とした有害事象に関連するデータ集積を行い、有害事象の発症と関連する患者背景因子を探索した。
結果と考察
薬物トランスポーターに着目して、有害事象の発症における個人差が生じる要因を解析した。その結果、プラバスタチンの場合、肝取り込み過程には薬物トランスポーターのOATP1B1が関与していることを明らかになり、OATP1B1が機能低下を生じた場合は有害事象を生じるリスクを高まると考えられた。また、薬物トランスポーターの機能に影響を与える要因の一つとして、P-糖タンパク質の発現量を低下させる転写調節領域の一塩基置換を明らかにした。これらの研究から、副作用の発症には薬物トランスポーターが寄与している場合があり、副作用の発症の個人差には、薬物トランスポーターの遺伝子多型などが関与していると考えられた。また、新規薬理作用を有する抗がん剤であるベバシズマブの併用療法における副作用の発症に影響する患者背景因子の検討を、診療記録とレセプトデータを用いて行った。その結果、診療記録からはベバシズマブの併用療法群で出血、高血圧、手足症候群、好中球減少などの発症頻度が高いことがわかった。今後は、副作用の発症の個人差に関する薬物動態学的観点からの考察が疫学的研究から検証可能であるか試みる。
結論
組織への取り込み過程に薬物トランスポーターが関与している場合、遺伝子多型などによって機能低下が生じると、末梢組織への薬物暴露濃度を増加させ、副作用の発現のリスクが高くなる。これが副作用の発症における個人差の要因となっている可能性が考えられた。診療記録およびレセプトデータを用いて有害事象に関連するデータ集積を行い、有害事象の発症と関連する患者背景因子を探索する調査方法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2009-04-02
更新日
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