災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究

文献情報

文献番号
202127007A
報告書区分
総括
研究課題名
災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究
課題番号
19LA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和功(和歌山県橋本保健所)
  • 相馬 幸恵(新潟県村上三条地域振興局健康福祉環境部)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 原岡 智子(松本看護大学 看護学部)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,994,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は一種の災害であるとも言われ、そのマネジメントは自然災害と共通する点は多い。一方で、熊本地震(2016年)の検証結果を受けて、2017年7月5日に、厚生労働省5課局部長通知「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」が発出された。そこでは、保健医療調整本部の設置等が示されているが、具体的な活動内容等は検討すべき点が多数ある。そこで、感染症パンデミックを含めた災害発生時の保健医療福祉活動の総合的なマネジメントの具体的な方策を明確化することがこの研究の目的である。
研究方法
各分担研究のこれまでの成果を集大成して、小冊子「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2022(暫定版)」を作成した。その基礎となる分担研究として、保健医療調整本部等に関するインタビュー・アンケート・文献調査、産学民官の連携に関する調査、指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集、分野横断的な情報共有・連携の課題の検討、自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策の検討を行った。
結果と考察
保健医療調整本部等に関するインタビュー・アンケート・文献調査により、近年の災害における、保健医療福祉調整本部等の設置、情報収集・共有、本部長による指示、ロジスティクスの機能など、時系列による活動の流れが整理された。一方で、文献調査を含めた実事例の調査から、福祉施設の被災状況や支援ニーズ等の把握は、これまでの災害においてEMISのように関係者に一斉に情報共有する仕組みが整備されていないなどの課題がある。産学民官の連携に関する調査では、平成30年7月豪雨被災者への災害発生当時のアセスメント調査結果と、その後の支援活動記録の分析により、被災当初のアセスメント調査の妥当性が確認された。専門士業団体への調査の結果、技術系・法律系の団体は、福祉系の団体より他の分野との連携が少なかった。指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集では、COVID-19のパンデミックの経験を通じて、バーチャルEOCの活用など新たな技術の導入も進んでいることが明らかになった。一方で、地域のリスクやリソースの評価により本部機能を確立し、標準作業手順書(SOP)として一連の手順を明確にするという基本的なプロセスを確実に実施していくことが重要であると考えられた。分野横断的な情報共有・連携の課題については、災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)養成研修基礎編において、令和2年度から2年間にわたり、NPO・ボランティアとの連携について取り上げたこともあり、保健部局の行政職員から福祉との連携が重要であるということが聞かれるようになってきた。今後の連携のポイントとして、以下の3点が挙げあれた。①災害時の住民支援は多岐にわたり保健部局だけでは対応できず、災害派遣福祉チーム(DWAT)や災害NPO・ボランティアと連携する必要がある。②災害時に効率よくDWATや災害NPOと連携するためには、社会福祉協議会や災害中間支援組織の役割が重要である。③災害時にDWATや災害NPO、中間支援組織と効率的に連携するには、平時から地元の関係団体との連携が不可欠である。自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策については、「業務マネジメント」と「メンタルヘルスケア」の2つの柱について、両輪で進めることが重要である。各職場では所属長等をリーダーとし、組織としての具体的な取組を進めていくことが必要である。
保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方の総論として、まず災害時の組織対応の原則(CSCA)に沿って、指揮・調整(保健医療福祉調整本部の設置、本部の構成員、本部長、リーダーシップ、本部事務局、本部会議、本部室)、安全の確保(活動者や被災者の二次災害等の防止、職員等の過重労働・メンタルヘルス対策)、情報交換・共有、評価が、また災害対応全体の流れとして、目的・戦略・目標・戦術、情報収集・状況認識・意思決定・実施、そして保健医療福祉活動チームの派遣調整、平常時の備え(計画・マニュアル、人材育成、物資)、事後レビューなどが重要である。また、各論として、避難所及び在宅避難者の支援、医療活動、福祉活動・福祉との連携、NPO/ボランティアなどとの連携、民間企業などとの連携などが重要である。
結論
分担研究により種々の情報収集及び検討を行い、保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方の要点をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2022-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202127007B
報告書区分
総合
研究課題名
災害発生時の分野横断的かつ長期的なマネジメント体制構築に資する研究
課題番号
19LA2003
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 和功(和歌山県橋本保健所)
  • 相馬 幸恵(新潟県村上三条地域振興局健康福祉環境部)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 原岡 智子(松本看護大学 看護学部)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
熊本地震(2016年)の検証結果を受けて、2017年7月5日に、厚生労働省5課局部長通知「大規模災害時の保健医療活動に係る体制の整備について」が発出された。そこでは、保健医療調整本部の設置等が示されているが、具体的な活動内容等は検討すべき点が多数ある。一方で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は一種の災害であるとも言われ、そのマネジメントは自然災害と共通する点は多い。そこで、保健医療福祉活動の総合的なマネジメントの具体的な方策を明確化することがこの研究の目的である。
研究方法
保健医療福祉活動等に関するインタビュー調査等、保健医療調整本部等に関するアンケート調査、風水害被災自治体等のアンケート調査、新型コロナウイルス感染症対応における保健医療調整に関する情報収集、産学民官の連携に関する調査、指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集、分野横断的な情報共有・連携の課題の検討、避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討、自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策の検討を行った。そして、各分担研究のこれまでの成果を集大成して、小冊子「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2022(暫定版)」を作成した。
結果と考察
保健医療福祉活動等に関するインタビュー調査等により、保健医療福祉調整本部等の設置、情報収集・共有、本部長による指示、ロジスティクスの機能など、時系列による活動の流れが整理された。また、福祉施設の被災状況や支援ニーズ等の情報把握の課題がある。保健医療調整本部等に関するアンケート調査により、都道府県8割、政令市6割が、大規模災害発生時の保健医療調整本部の設置を計画等に明記していて、福祉分野との情報共有・調整は、都道府県5割、政令市1割であった。風水害被災自治体等のアンケート調査により、保健医療調整本部またはそれに代わる組織が設置されたのは、都道府県が6(75%)、県型保健所が15(28.3%)、保健所設置市が2(15.4%)、一般市町村が15(11.7%)であった。新型コロナウイルス感染症対応における保健医療調整に関する情報収集により、調査を行った自治体の多くで、大会議室等を活用して臨時の調整本部室が設置されているが、平時の執務室を調整本部としている自治体もある。産学民官の連携に関する調査により、災害ケースマネジメントのための災害発生当時のアセスメント調査の妥当性が確認された。地域全体の状況や必要となる支援の総量を予測することで、より速やかな生活再建支援の開始につなげられる可能性がある。指揮・統制・調整・コミュニケーション(C4)に関する海外の情報収集により、大規模災害時の対策本部(EOC)の調整・支援機能を重視した構造モデルの構築が行われている例や、またCOVID-19対応の状況等が明らかとなった。分野横断的な情報共有・連携の課題の検討により、災害派遣福祉チーム(DWAT)や災害NPO・ボランティアと連携することが有用で、社会福祉協議会や災害中間支援組織との連携の仕組みを構築すること、平時から地元の関係団体との連携が重要である。避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討により、保健師等の保健医療福祉活動チームが、必要な情報を把握できるよう避難所日報の様式及び記載要領を作成した。在宅者等の災害時避難行動要支援者について、安否確認や避難支援、健康ニーズ等で、必要な支援につなぐための情報を明確にする必要がある。自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策については、「業務マネジメント」と「メンタルヘルスケア」の2つの柱について、両輪で進めることが重要である。各職場では所属長等をリーダーとし、組織としての具体的な取組を進めていくことが必要である。
保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方の総論として、まず災害時の組織対応の原則(CSCA)に沿って、指揮・調整(保健医療福祉調整本部の設置、本部の構成員、本部長、リーダーシップ、本部事務局、本部会議、本部室)、安全の確保(活動者や被災者の二次災害等の防止、職員等の過重労働・メンタルヘルス対策)、情報交換・共有、評価が、また災害対応全体の流れとして、目的・戦略・目標・戦術、情報収集・状況認識・意思決定・実施、そして保健医療福祉活動チームの派遣調整、平常時の備え(計画・マニュアル、人材育成、物資)、事後レビューなどが重要である。また、各論として、避難所及び在宅避難者の支援、医療活動、福祉活動・福祉との連携、NPO/ボランティアなどとの連携、民間企業などとの連携などが重要である。
結論
分担研究により種々の情報収集及び検討を行い、保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方の要点をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2022-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202127007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
保健医療福祉活動の総合的なマネジメントの具体的な方策の明確化に向けた知見を得た。特に、保健医療調整本部等に関するアンケート調査により全国の都道府県および政令指定都市での現状を明らかにした。また、令和元年度の一連の風水害被災自治体等のアンケート調査により、保健医療福祉調整本部等の設置やその他の対応の状況を明らかにした。さらに、災害ケースマネジメントのためのアセスメント調査の妥当性を明らかにした。
臨床的観点からの成果
保健医療福祉調整本部の設置について、本部の構成員、本部長、本部事務局、本部会議、本部室という構成要素を明らかにした。また、災害時の組織対応の原則(CSCA)、災害対応全体の流れとして、目的・戦略・目標・戦術、情報収集・状況認識・意思決定・実施という流れを整理した。さらに、自治体職員等の過重労働・メンタルヘルス対策として、業務マネジメントとメンタルヘルスケアの2つの柱に整理した。
ガイドライン等の開発
研究成果を集大成して、小冊子「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2022(暫定版)」を作成した。総論として、指揮・調整や災害対応の流れの他、保健医療福祉活動チームの派遣調整、平常時の備え(計画・マニュアル、人材育成、物資)、事後レビューなどが整理された。また各論として、避難所及び在宅避難者の支援、医療活動、福祉活動・福祉との連携、NPO/ボランティアなどとの連携、民間企業などとの連携などが整理された。
その他行政的観点からの成果
「新型コロナウイルス感染症等対応における自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策に関する取組事例の共有について」(令和4年3月22日厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡)において、研究班で検討を行った「新型コロナウイルス感染症対応を含めた健康危機管理における職員等の過重労働・メンタルヘルス対策」の概要及び事例についての情報提供が行われ、さらに、令和4年3月24日に過重労働・メンタルヘルス対策に関する取組事例についての厚生労働省によるWeb説明会が行われた。
その他のインパクト
「新コロナ対応における自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策~大阪市・埼玉県・群馬県の事例に学ぶ~」が、厚生労働省の広報誌である「厚生労働」2022年5月号で取り上げられた。また、研究班での検討内容等について、研修会等による普及啓発を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演5件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakahara S, Inada H, Ichikawa M, Tomio J.
Japan’s slow response to improve access to inpatient care for COVID-19 patients.
Front. Public Health , 9 , 791182-791182  (2022)
https://doi.org/10.1620/tjem.255.9
原著論文2
Ito Y, Hara K, Sato H, Tomio J.
Knowledge, Experience, and Perceptions of Generic Drugs among Middle-Aged Adults and their Willingness-to-Pay: A Nationwide Online Survey in Japan.
Tohoku J Exp Med , 255 , 9-17  (2021)
https://doi.org/10.1620/tjem.255.9

公開日・更新日

公開日
2022-11-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202127007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,691,000円
(2)補助金確定額
11,691,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 696,251円
人件費・謝金 220,220円
旅費 1,138,660円
その他 6,939,437円
間接経費 2,697,000円
合計 11,691,568円

備考

備考
自己充当のため

公開日・更新日

公開日
2022-11-21
更新日
-