文献情報
文献番号
202127002A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質等の検出状況を踏まえた水道水質管理のための総合研究
課題番号
19LA1005
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
松井 佳彦(北海道大学 大学院工学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 秋葉 道宏(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 浅見 真理(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 泉山 信司(国立感染症研究所寄生動物部)
- 伊藤 禎彦(京都大学大学院 工学研究科 都市環境工学専攻)
- 越後 信哉(京都大学大学院 工学研究科 都市社会工学専攻)
- 片山 浩之(東京大学大学院工学系研究科)
- 小坂 浩司(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 小林 憲弘(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
- 高木 総吉(大阪府立公衆衛生研究所 衛生化学部 生活環境課)
- 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 三浦 尚之(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
- 白崎 伸隆(北海道大学 大学院工学研究院 環境創生工学部門)
- 松下 拓(北海道大学大学院工学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
35,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
水道水質基準の逐次見直しなどに資すべき化学物質や消毒副生成物,設備からの溶出物質,病原生物等を調査し,着目すべき項目に関してそれらの存在状況,監視,低減化技術,分析法,暴露評価とリスク評価に関する研究を行い,水道水質基準の逐次改正などに資するとともに,水源から給水栓に至るまでの水道システム全体のリスク管理のあり方に関して提言を行う.
研究方法
原水や水道水質の状況,浄水技術について調査研究を行うため,微生物(ウイルス),微生物(細菌),微生物(寄生虫等),化学物質・農薬,消毒副生成物,臭気物質,リスク評価管理,水質分析法の8課題群-研究分科会を構築し,研究分担者14名の他に47もの水道事業体や研究機関などから92名の研究協力者の参画を得て,各研究分担者所属の施設のみならず様々な浄水場などのフィールドにおける実態調査を行った.
結果と考察
これまでに浄水処理プロセスにおけるウイルス除去を示す遺伝子マーカーとしてトウガラシ微斑ウイルス(PMMoV)の有効性を検討してきたが,この中で水道原水においてPMMoVよりも高濃度で検出される場合が見られたロタウイルスA(RVA)ではウシやブタのRVA遺伝子型が高頻度であった.PMMoVはろ過水で4.8–43%,浄水で9.5–48%の試料から検出され,濃度の最大値はろ過水,浄水ともに3.4 log10 copies/Lだった.塩素耐性が高いコクサッキーウイルスB5型(CVB5)の9 log不活化に必要なCT値は40~100 mg-Cl2∙min/Lであり,配水池出口までで確保可能な値であった.水道事業体の水質担当者がろ過水や浄水中のPMMoVを検査することを想定し,検査方法を検討した結果,40 mLの水道水からに103 copies/Lのオーダーで含まれるPMMoVを検出できることがわかった.従属栄養細菌数は一般細菌数よりも細菌類再増殖の影響を受けやすく,目標値設定には細菌類の再増殖を考慮した上で検証する必要があることが示された.従属栄養細菌数が自由活性アメーバ再増殖の先行指標となりうる可能性が指摘された.
21種の有機フッ素化合物PFASの全国の浄水場の実態調査を行ったところ,一部の有機フッ素化合物は比較的高い割合で検出されたが,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)の合計は目標値を超える場合は無かった.粉末活性炭処理ではLog Dが大きい(疎水性が高い)PFASほど除去率が高い.ピリダフェンチオンについては原体に加えてそのオキソン体も測定対象とすることが提言された.
浄水中のハロアセトアミドは総トリハロメタンと同様に水温および塩素注入率が高い夏季に生成が増す傾向であった.塩素酸濃度上昇の原因は貯蔵期間や温度によるものが多かったが,その他として貯留槽への外気流入の影響を受けた事例を確認した.現行の基準項目がある程度未規制副生成物の目安(マーカー)となる可能性が示された.
全揮発性窒素化合物(TPN)が低い場合は臭気強度が70を超えるような高い臭気が観察されることはなく,TPNをカルキ臭の管理に用いることができる可能性が示された.実際の臭気強度の測定では残留塩素を消去後と消去せずに行っている水道事業体があることが分かった.メチルアミンなどを含む原水の場合には二段階塩素処理がトリクロラミン生成量の低減に対して有効であった.
有機フッ素化合物の水道水目標値としてPFOS:50~158 ng/L,PFOA:7~210 ng/Lが試算され,現行の暫定目標値を含む範囲であった.
液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計を用いたスクリーニング分析法のデータベースを再構築し,実試料による定量精度の評価を行った.同定された74種の農薬類の約86%が0.50以上~2.00以内の濃度比で分析可能であった.また,GC/MSターゲットスクリーニング分析についても,対象農薬としてリストアップされている172農薬を対象として,同一のGC/MS装置で作成した検量線データベースを用いると,ほとんどの農薬が5倍以内の定量誤差で測定され,その有用性が示された.また,揮発性有機化合物25成分を対象に,ヘリウム代替キャリアーガスとして窒素を用いた分析条件について検討し,水質基準項目のVOCについては水質基準の1/10の定量下限を確保し,真度・併行精度の妥当性の目標を満たした.
これらの成果は学術論文や学術集会で多数公表されるとともに,厚生労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資された.
21種の有機フッ素化合物PFASの全国の浄水場の実態調査を行ったところ,一部の有機フッ素化合物は比較的高い割合で検出されたが,ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)の合計は目標値を超える場合は無かった.粉末活性炭処理ではLog Dが大きい(疎水性が高い)PFASほど除去率が高い.ピリダフェンチオンについては原体に加えてそのオキソン体も測定対象とすることが提言された.
浄水中のハロアセトアミドは総トリハロメタンと同様に水温および塩素注入率が高い夏季に生成が増す傾向であった.塩素酸濃度上昇の原因は貯蔵期間や温度によるものが多かったが,その他として貯留槽への外気流入の影響を受けた事例を確認した.現行の基準項目がある程度未規制副生成物の目安(マーカー)となる可能性が示された.
全揮発性窒素化合物(TPN)が低い場合は臭気強度が70を超えるような高い臭気が観察されることはなく,TPNをカルキ臭の管理に用いることができる可能性が示された.実際の臭気強度の測定では残留塩素を消去後と消去せずに行っている水道事業体があることが分かった.メチルアミンなどを含む原水の場合には二段階塩素処理がトリクロラミン生成量の低減に対して有効であった.
有機フッ素化合物の水道水目標値としてPFOS:50~158 ng/L,PFOA:7~210 ng/Lが試算され,現行の暫定目標値を含む範囲であった.
液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計を用いたスクリーニング分析法のデータベースを再構築し,実試料による定量精度の評価を行った.同定された74種の農薬類の約86%が0.50以上~2.00以内の濃度比で分析可能であった.また,GC/MSターゲットスクリーニング分析についても,対象農薬としてリストアップされている172農薬を対象として,同一のGC/MS装置で作成した検量線データベースを用いると,ほとんどの農薬が5倍以内の定量誤差で測定され,その有用性が示された.また,揮発性有機化合物25成分を対象に,ヘリウム代替キャリアーガスとして窒素を用いた分析条件について検討し,水質基準項目のVOCについては水質基準の1/10の定量下限を確保し,真度・併行精度の妥当性の目標を満たした.
これらの成果は学術論文や学術集会で多数公表されるとともに,厚生労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料に資された.
結論
要検討項目の評価値や対象農薬リスト項目など水道労働省告示や厚生科学審議会生活環境水道部会,水質基準逐次改正検討会資料などに資すべき情報が収集された.
公開日・更新日
公開日
2022-10-04
更新日
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