家庭用品中の有害物質の規制基準に関する研究

文献情報

文献番号
202126009A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中の有害物質の規制基準に関する研究
課題番号
20KD2001
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大嶋 智子(仲村 智子)(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 衛生化学部)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 久保田 領志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
27,792,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では家庭用品規制法により、21種類の有害物質について指定家庭用品に含まれる有害物質の含有量や溶出量について基準が定められている。これらの有害物質について、現在の分析技術水準から乖離した分析機器や有害な試薬の使用が問題となっており、試験法の改正が求められている。また、対象有害物質について新たなハザード情報や曝露に関する知見を加え、現行基準値の見直しを検討したり、「検出されないこと」とされている有害物質の基準に対して、基準値を設定したりする必要がある。さらに、有害性が懸念される代替物質の使用や、生活様式の多様化に伴う新形態の家庭用品の創出、及び新たな化学物質の使用可能性もあり、健康被害の発生が懸念される。本研究では、先行研究から引き続き、現行の家庭用品規制法における有害物質の改正試験法の開発及び規制基準値改正、並びに現行規制基準では対象外の家庭用品及び有害物質に対する規制基準設定に資する情報収集を目的とする。さらに、GC-MS分析でキャリアガスとして汎用されるヘリウムは世界的に供給不足であり、代替キャリアガス試験法の開発も実施する。
研究方法
試験法の改正を行う有害物質は、塩化ビニル(VC)、防炎加工剤3種類(TDBPP、BDBPP化合物、APO)、木材防腐・防虫剤及び有機水銀化合物を対象としている。防炎加工剤及び噴射剤は現行試験法よりも高精度の分析が可能なキャピラリーカラムを用いたGC-MSによる試験法を開発する。木材防腐・防虫剤は、有害物質に指定されているベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[a]アントラセン及びジベンゾ[a,h]アントラセンの3種を含む欧州で規制されている8種類のPAHsについて、GC-MS分析条件の検討と有害試薬を用いない前処理方法による改正試験法の開発を行う。有機水銀化合物は有害試薬を使用しない試験法を開発すると共に、より高感度及び高精度なICP-MSを用いた試験についても検討する。試験法の開発を効率よく行うために、用途別に各分担研究者が測定条件や前処理方法を検討して試験法開発を行っている。代替キャリアガスの検討では、アゾ化合物の試験法を対象とし、水素及び窒素を代替キャリアガスに用いた特定芳香族アミン類24物質のGC-MS分析条件を検討した。基準設定に関する研究では、VC及びAPOについて有害性情報を収集し、その詳細を毒性項目及び曝露経路毎にまとめた。
結果と考察
VCは昨年度の結果を踏まえ3種類の噴射剤存在下で検量線を比較し、それらに差異が無いことを確認し試験法が開発できた。開発した試験法を用いてスプレー塗料等39製品の実態調査を実施し、低濃度のVCの検出とその濃度がヒト健康影響のないレベルであることを確認した。防炎加工剤はAPO分析時におけるサロゲート物質使用の有効性や、フロリジルカラム精製におけるAPOの挙動に関する知見を得た。木材防腐・防虫剤はヘキサン処理及び2種類の固相カラムによる精製効果を確認し、分析対象とした8種類の多環芳香族炭化水素類について、十分な感度及び精度のある試験法が開発できた。有機水銀化合物は、マイクロウェーブ(MW)分解条件及びICP-MSによる測定時のメモリー低減対策としてのAu及び塩酸添加条件を検討し、MW分解に塩酸及び硝酸を使用し、ICP-MS測定時には塩酸添加することが好ましいことを明らかにした。ヘリウム不足に対応した試験法では、ヘリウム代替キャリアガスに水素及び窒素ガスを用いた場合に、ガス毎にGC-MS条件を変更しなくても測定対象である特定芳香族アミン類24物質を現行基準値レベルで測定可能であることを明らかにした。基準設定に関する研究では、VCは得られた有害性情報を毒性項目及び曝露経路毎にまとめ、有害性評価値案を作成した。APOは情報不足から類似構造のTris(aziridin-1-yl)phosphane sulfideについて有害性情報を収集すると共に、その有害性情報から導出した有害性評価値を、APOに適用可能か検討した。
結論
本年度、VC及び木材防腐・防虫剤では試験法が構築できた。APOは前処理方法について検討した。アゾ化合物について、GC-MS分析における代替キャリアガスの有効性を確認した。有機水銀化合物では前処理方法などを検討した。VC及びAPOの有害性評価情報の収集と評価値案の検討を行った。本研究はおおむね当初計画通りに進んでおり、次年度は引き続き改正試験法の開発及び基準値の検討を行うとともに、TDBPP及びDBDPP化合物、VC、木材防腐・防虫剤について妥当性評価試験を実施する。

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-07-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202126009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
27,792,000円
(2)補助金確定額
27,792,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,124,667円
人件費・謝金 1,998,562円
旅費 1,100円
その他 11,669,134円
間接経費 0円
合計 27,793,463円

備考

備考
差額1463円は自己負担した

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-