文献情報
文献番号
202126008A
報告書区分
総括
研究課題名
ナノマテリアルの短期吸入曝露等による免疫毒性に関するin vitro/in vivo評価手法開発のための研究
課題番号
20KD1004
研究年度
令和3(2021)年度
研究代表者(所属機関)
足利 太可雄(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 祐次(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部・動物管理室)
- 飯島 一智(横浜国立大学 大学院工学研究院機能の創生部門)
- 石丸 直澄(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部(歯学系))
- 大野 彰子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
- 渡辺 渡(九州保健福祉大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
21,041,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
短期吸入曝露された各種NMの免疫系に与える影響について、in vitro/in vivo試験法研究の連携体制による毒性メカニズムの解明と評価系の開発を行い、得られた知見を基にin vitro試験法の確立と将来的なOECDガイドライン化を目指すための基盤的知見の収集を目的とする。
研究方法
ナノマテリアルの抗原提示細胞活性化能のデータベース作成については、in vitro皮膚感作性試験法でありOECDテストガイドライン化されているh-CLAT (OECD TG442E)を用いた。5種のナノシリカについて、約65項目の物性およびin vitro / in vitro有害性情報を収集・整理し、物性についての特性解析やin vitro/in vivo有害性データとの関連性解析を行った。細胞レベルでの毒性発現メカニズムの解明については、銀ナノ粒子および各種二酸化チタンナノマテリアルを対象に、未分化および分化THP-1細胞のCD86, CD54, MMP-12遺伝子の発現を指標とする新たな評価手法を開発した。気管支上皮細胞と抗原提示細胞との共培養系の開発を行った。肺胞マクロファージの機能解析については、針状二酸化チタンTiDWあるいはナノシリカNM-204を C57BL/6NcrSLC雄性マウスに対し 5日間の連続の全身曝露吸入を行った。ナノマテリアルの免疫制御システムへの影響評価研究については、NM-204を吸入曝露後4週及び8週において肺胞洗浄液(BALF)中の単核球を採取し、蛍光色素標識された各種表面マーカーに対する抗体で発現を解析した。感染性免疫系への影響については、NW-204をBALB/c 雌、4週齢のマウスに6時間吸入させ、これを1日おきに3回実施した後、RSVを経鼻感染させ、BALF中のサイトカイン・ケモカインの定量を行った。
結果と考察
代表的な皮膚感作性物質DNCBとナノシリカNM-204をTHP-1細胞に混合曝露したところ、DNCBはNM-204によるTHP-1細胞の活性化を抑制した。また代表的発熱性物質であるLPSとナノシリカNM-204をTHP-1細胞に混合曝露したところ相乗効果が認められた。カーボンナノチューブ(T-MWCNT-7)は分散状態にかかわらずTHP-1細胞を活性化し、活性化能は分散型の方が強かった。銀ナノ粒子においては粒径によりTHP-1細胞の活性化能に差が見られた。未分化および分化THP-1細胞のCD86, CD54, MMP-12遺伝子の発現を指標とする新たな評価手法を確立し、その有効性を示すことができた。また、気管支上皮細胞と抗原提示細胞との共培養系を確立した。5種のナノシリカについて、毒性発現と関連する幾つかの物性項目の特徴を見出した。NM204の高分散乾燥検体を用いて、マウスに1日時6時間、5日間連続全身ばく露吸入を実施したところ、十分に肺胞に到達するエアロゾル特性を有していた。RSV感染マウスモデルにおいて、ナノシリカNW-204のTaquaan法での吸入曝露により、RSV肺炎は増悪化し、肺炎増悪化の指標にケモカインCCL3、CCL5およびsCD54が利用できる可能性が示された。TiDW吸入暴露後4週にて肺組織ならびにBALF細胞にてMMP12 mRNA発現が上昇し、暴露後8週の肺組織でMCP-1、TNF-α、IFN-γ mRNA発現が上昇することを明らかとした。 また日本化粧品工業連合会および日本化学工業協会と班員との間で意見交換会を実施し、本研究に対する産業界からの要望を伺った。
結論
ナノマテリアルによるTHP-1細胞活性化は皮膚感作性物質や発熱性物質による活性化とは異なるメカニズムによるものと考えられた。5種のナノシリカについて毒性と物性のいくつかの関係性を見出した。銀ナノ粒子においては粒径により抗原提示細胞の活性化に差が見られ、取り込みや溶出銀イオン濃度の違いによる影響が推測された。THP-1細胞のCD86, CD54, MMP-12遺伝子の発現を指標とする新たな評価手法の有効性を示すことができ、特に肺胞マクロファージのMMP12を起点とする活性化機構がナノマテリアルの毒性評価法の確立に重要な位置を占めている可能性が考えられた。また、気管支上皮細胞と抗原提示細胞との共培養系を確立した。ナノシリカNW-204の吸入曝露により、RSV肺炎は増悪化したことから、肺炎増悪化の指標にケモカインCCL3、CCL5およびsCD54が利用できる可能性が示された。日本化粧品工業連合会および日本化学工業協会からいただいた意見を本研究に活用していく。
公開日・更新日
公開日
2022-07-13
更新日
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